第3話 宴
王都に持ち帰った竜には良い買い取り手が付いた。あらかじめ大賢者様に通達してあったのがよかった。なんと大賢者様の伝手で一匹丸々を破格の値で買い取ってくれたお貴族様が居たのだ。正直なところ、解体してどうこうするにも手間が必要だし、売り払うにも伝手が少なかったので願ってもなかった。
竜を売り払った金額と竜の巣で見つけた財宝を合わせると孤児院の維持はもちろん、屋敷も問題なく手に入る額だった。
一応、アリアを狙っていたれいの貴族との関係を聞いておいたが、無関係だとのことだった。ただちょっと迷惑だったのが、《陽光の泉》を宴に招きたいという話を貰ったのだ。
アリアからは貴族との繋がりは利益もあるがリスクも大きいからと注意されていたが、王族の血筋に連なる家系だったため断りづらく、大賢者様からも頼まれてしまったのだ。アリアも古い王族の血筋ではあったため、本当のところは断りたかった。
結局のところ、頼み込んできた大賢者様に後ろ盾になってもらうことにして参加することにした。大賢者様はどこの貴族からもある程度は独立しているので、取り込まれ辛い。
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衣装については今から仕立てるのは無理なので、女性陣は大賢者様に貸していただいた。今までが今までだったので、ドレスのひとつも買ってあげないとなと思った。問題は俺だ。『持ってるじゃない』とかキリカに言われたが、お前絶対シーアさんが置いて行ったドレスのこと言ってるだろ……。
仕方が無いので古着屋で買うが、貴族の宴に使えそうな衣装は型落ちのものしか手に入らなかった。
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俺は両手にアリアとルシャをエスコートして宴に赴いた。リーメはキリカにエスコートされていてキリカはノリノリだが、リーメは面倒くさそうだ。そしてリーメは髪の色をピンクにしてて怖い。え、こわくない? 真っピンクだよ?
大賢者様のご紹介により、竜を買い取っていただいた貴族との繋がりができた。パーティのリーダーは登録上はアリアとなっていたが、アリアの提案で今日のところは俺が《陽光の泉》のリーダーということになった。
竜殺しの英雄と持てはやされた俺たちは、宴に赴いていた貴族たちの挨拶に次々と曝され、もともと興味が無くて人の名前を覚えるのが苦手な俺は、賢者の能力があることもあり、ますます苦手になっていた。
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宴の中、アリアはと言うと、たいそう機嫌が悪かった。アリアの血筋を知る者が多い上に、話しかけてくる者が皆、俺ではなくアリアに対して礼儀を払ったからである。さらには俺に対して『ひだまりとはお似合いですね』などと言い放った男が居たからだ。既に愛想笑いさえ浮かべていなかった。
また、ダンスの誘いには婚約者が居りますからと明言し、取り付く島もなかったが、俺を無理矢理踊らせて婚約者アピールしていた。
ルシャについては俺がアリアの機嫌を取るのにかかりきりになってしまったため、途中からキリカに任せた。ルシャが聖女ということは既に知れ渡っており、皆が皆、親しくなるために近寄ってきていたが、ルシャ本人は蒼い顔をしてしどろもどろになっていた。キリカは『聖女様のご気分がすぐれません故』と、ルシャを守って剣聖として客の相手をしていた。
ルシャについても『婚約者が居りますよ』とキリカより明言されていたが、聖女である彼女は、貞淑さを示すため神様との婚約と捉えられている可能性が高かったそうだ。ちなみにキリカについては、――ぜひ私より強い殿方となら考えてみてもいい――などと言っていたが無理だろそれ……。
キリカからは放置されていたリーメだが、整った顔立ちにもかかわらず、ドレスの上からいつもの三角帽子を深く被ってる上に、今日はピンク頭なことで人を寄せ付けない雰囲気でただひとり料理に舌鼓を打っていた。
俺たちは聖女様の体調が悪いことを理由に、ホストに退出の挨拶をして早々に会場を去った。大賢者様もさっさと引き上げたかったらしく、着いて帰ってきた。ただ、機嫌の悪いアリアにさんざん文句を言われていた。
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大賢者様宅で衣装を着替えた俺たちは下宿へと戻ってきたが、アリアは体調を崩したルシャを抱きしめて眠りについた。俺もアリアの横で添い寝した。
翌朝、共有のリビングのテーブルにはたくさんの料理とお菓子が山ほど並んでいた。リーメによると、皿をたくさん持ち込んで料理を持って帰ったらしい。《巨人の保有の鞄》に入れて。皆、聖騎士様や聖女様、剣聖様に夢中だったので楽に持ち帰れたそうだ。昨日は料理にほとんど手を付けていなかったのでありがたい。
みんなで笑いあい、アリアやルシャも機嫌が直ったようで安心した。
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