第15話 大賢者様からの手紙
デイラとマシュから情報を得た俺はギルドへと向かった。受付嬢は手紙が届いていることを伝えてくれる。大賢者様、遅いよ! お忙しいのだろうけれど遅いよ! 手紙は結構な厚みで手紙というより包みだった。
「これ、ここでは無理だな」
包みを開けるために宿に帰ろうとしたところ、冒険者の一団に呼び止められる。
「あーキミ、ジューキとか言ったっけ。ちょっとキミに用があるんだが」
「人違いっすね」
「おいおいおい、お前で間違いないんだよ」
逃げようとすると急にすごんでくる男。背は俺よりも少し高く、派手な飾りのついた鎧下を着て胸当てや手甲を身に着けている。そして顔! めっちゃイケメン! なんか腹立つので無視しようとすると服を掴んでくる。えぇ……メンドクサイ。周りを見ると冒険者連中は無視、受付嬢さんを振り返ると向こうを向いていそいそと作業してる。いつもは暇そうにしてるじゃん!
「随分と仲がいいそうだな。だがアリアはオレの婚約者だ。手を出した落とし前はつけてもらわんとな」
「えええ、嘘っぽ~い。だってあんた平民でしょ? 彼女と対等に婚約できるようには思えないなあ」
名前の短い男は顔を真っ赤にして俺の服を捩じり上げる。
「そっちのあんたならまだわかりますけどね。でも、道理にかなってるようには思えないなあ」
名前の長い男に振ると、その男はため息をつく。
「どこの回し者かなあ。ちょっと聞いてないんだけど」
俺に言ってる感じではない。奴らの仲間の二人が頭を下げている。
「ノエルグ、まったくお前がさっさとアリアを落としてくれてたらこんなことにはならなかったのに。女の扱いなら右に出るものは無いというから拾ってやってるのにさ」
俺より少し背の低い、薄い金髪の男が仰々しくのたまう。
「まあいいや。いろいろ詳しいみたいだし、こいつ連れて行こう」
やべえわ。お貴族様に連れていかれたら生きて帰れる気がしないわ。だが、タイミングがいいことにおれにはこれがあった。
「わあぁ! たいへんだー、郵便泥棒だ! しかも大賢者様の封蝋入りだぞ!」
俺はれいの包みを掲げて騒ぎ立てた。国の機関を通した手紙の強奪は縛り首だ。ノエルグと呼ばれた男は所詮は平民だった。手を放してたじろぐ。まあ厳密には縛り首にはならないかもしれない。既にギルドの手を離れているわけだし。だが、封を解いていないことと、まだギルド内であることは大きいだろう。
受付嬢さんのところまで逃げてくると、短く悲鳴を上げ、持ってこないでオーラを放っているが、とにかく偉い人を呼んでもらう。連中は引き上げていったが、ギルドの偉い人には事細かに説明しておく。連中が大賢者様の手紙を狙ってギルド内で襲ってきたことを(てへぺろ
あと大賢者様ゴメンね。
◇◇◇◇◇
宿に帰った俺は大賢者様の手紙をあらためる。中には手紙の他に便箋の束と金貨が入っていた。お金送れるんだ信用あるね! どうやら――門で兵士にさっそく騙された――と愚痴ったら、補填で送ってくれたらしい。また、れいの鍵についての報告をたいそう気に入ってくれたらしく、小遣いやるからまた報告送れと大賢者様は言ってきた。
デル・アイリア。つまりアリアの家名についてはシーアさんが報告書を送ってくれた。なお、デルは本来美しいという意味だが、貴族の家名の頭によくついているものらしい。なので単にアイリア家となるとのこと。
アイリアは西に大領地を構えるミリニール公の先代の家名だそうだ。現在は家が絶えてしまったため直轄地となっているようだが、詳細は書いてくれていない。
アリアについては廃嫡となっていて行方が分からないとのこと。行方を把握する必要があるほど重要ではない立場……という認識になっているようだが、領地ではかなり人気があったらしく、なんらかの伝手があってもおかしくないはずだが地元には帰っていないらしい。
アリアの母、アイーダについては権力から離れ、以前から支援をしていた大聖女様の孤児院の院長に収まっているとの話で、こちらの情報と一致する。
その他、他愛もないことがたくさん手紙に書かれていた。あの人たち、城でストレス溜まりまくってるんじゃないだろうか。
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