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かみさまなんてことを  作者: あんぜ
第一部
10/92

第10話 悔しいけどおいしい

「おはよう、今日は昨日のユーキ?」


「プッ、なにそれ。おはよう」


 昨日の夜のことがやはり大きかった。笑顔で朝の挨拶を交わせる。アリアも機嫌がいいしかわいい。本当に美人だよなって思う。アリアも朝食を持ってきて食べ始める。


「あなたの作った昼食、あれおいしかったなあ」


「作ったって程じゃないよ。それに鑑定がすごいだけで俺がすごいわけじゃない」


「へぇ、そんな風に思ってるんだ。祝福をそんな風に考えてる人って初めて」


「そうなの?」


 赤髪の少女は物憂げな顔をするが自嘲気味に笑いながら語る。


「祝福次第で急に偉くなったり、――偉そうになったり、――落ち込んだり悲しんだり。自分がすごいわけでも悪いわけでもないだなんて考えたこともなかった」


「魔女だとエッチだったり?」


「もう! ……ごめんね。わるかった」


「怒ってないよ。というよりおっかしくて楽しかったし。――なあ、小さい鍋かフライパンがあれば料理っぽいことできると思うんだけど。調理道具持って行かない?」


「できるんだ?」


 アリアは目を輝かせる。


「鑑定様がね」


 二人で笑いあった。



 ◇◇◇◇◇



 孤児院でフライパンとポットを借り、採取ルートも川沿いを選ぶ。川の流れはあまり早くなく、湿地も混じるので水辺では足元に気を付けながらアリアとキリカが先行しつつ探索する。薬草も少し毛色の違ったものが手に入る。


 水辺で採取していると、突然、短い悲鳴と水際から飛び出す影。ほぼ同時に煌めく刃。全て終わってから状況を確認すると、尻もちをついたルシャと飛び出したのは大型のカエル。すでに側頭部を切り裂かれて死にかけている。腕は確かだと彼女は言った。その通り、なんという反射神経だろう。


 ルシャはクロークとキュロットを干し、パーティは小休止する。カエルについてはリーパーってやつの幼生らしい。大きくなると人も丸呑みするとか。えろコワいね。鑑定しながら捌いてると皆からの目線を感じる。


「それ、まさか……食べないよね?」


 食べられるっぽいよ――そう言うも、カエルどころか魚もこの辺りで獲れるものは泥臭くてあまり好かれてないらしい。もともと魚を調理する予定だったが、まあカエルでもいいだろう。


 先日のちょっと高めの薬草――干しておいた――と、手持ちの調味料で作れる食べやすいレシピがあるようなので、火を起こしてもらってフライパンの準備をする。薬などに売れそうな部位は残し、干した塩漬けの豚の脂身を炒めてから香草と多めの岩塩をもみ込んだ肉を置き、火からすこし遠ざけて放置する。


 四人は採取用のマップをまとめていた。俺がやってくると、できたのか聞いてくる。


「鑑定様によると、しばらく放置して焦げ目をつけるらしいよ」

「おいしそうな匂い~」

「……ルシャ、よだれ」

「んっ!!!」


 リメメルンに指摘されたルシャは膝にかけてるキリカのクロークで慌てて顔を隠す。


「薬草もさ、全部売っちゃわないで料理に使えるものは残してみるのもいいんじゃない? 貴重な薬草は料理に使うとおいしいものが多いみたいだから」


 あ、丸まったルシャが小さく頷いてる。ルシャは今まで食が細く、虚弱なところもあってアリアにも心配されていたが、この間の干し肉のパンがおいしかったらしく、密かに楽しみにしていると朝の会話でアリアに教えてもらっていた。()()()()()については確かに思うところがあった。


 タイマーのバーが下がったので、フライパンの肉をひっくり返して少し焼き、火から降ろしてバターと塩を加え、肉をほぐして皆の前に差し出す。


「味見して」


 ナイフですくい上げ、リメメルンに分け与えて自分も早速口に放り込むアリア。ルシャはいつの間にか口にしてた。


「「「んん~~~!」」」


 食べながら感嘆の声をあげる三人と対照的に、ナイフに刺さった肉の前で固まってるキリカデール。唇を噛んで声にならないうめき声をあげ、意を決して口に放り込む。彼女は目を見張りながら他の三人と同じような声をあげていた。


「……悔しいけどおいしいわね……」


 悔しいんだ……。くっうま、みたいなその顔、また見てみたいから次も頑張るわ。みんな、パンに挟んだりしながら自由に食べてた。


 食べながらアリアは、ギルドで見かけたゴブリンの巣穴の掃討について相談を持ち掛ける。規模としては10から20程度の若い巣穴だそうだから1パーティで十分らしい。巣穴を見つけた冒険者は斥候や見張りの数をギルドに報告し、ギルドは巣穴の規模を判断して報酬を提示する。


 相談の結果、明日にでも試しに行ってみようという話になった。無理なら引き上げて報告だけすればいい。命あっての物種だ。



 ◇◇◇◇◇



 結局、今日もアリアは昨日と似たような立ち位置をキープしてた。かといって恋人のように見つめあってるわけではなく、アリア自身はよくパーティのことを見ている。いいお姉さんだ。


 宿に帰り、夕食を終えた後もまた遅くまで話に付き合ってくれる。遅いと言ってもせいぜい日が完全に暮れてから2,3時間の感覚だったので、前の世界でなら深夜まで起きていたことを考えると十分早かった。




アリアのイメージは赤髪と眉目りりしい以外ありませんのでご自由にご想像ください。

髪の長さはシーツに隠れるよう長すぎず、ある程度隠しづらいよう短すぎずです。


【ご注意】作者が自分で読みたいので書いてます。なので、感想欄に設定予想・展開予想を書く場合は必ず作者が読み飛ばせるよう、閲覧注意の文字を書くように何卒お願いいたしします。

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