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12 全員


 現在、この大きな研究所で暮らしている人たちは、わずか6名。


 いえ、ひとり減って5名、ですね。



 研究所所長の、ホルムセジオ。


 戦争当時からここに勤めており、知識・経験はもちろん、責任者の風格充分な御老人。


 ですが、後釜を狙った若造からロートル呼ばわりされた際に、


 魔法勝負で完膚なきまでに叩きのめして放り出したという、激情家で武闘派な面も。


 事件当時は自室にこもって、複合魔法について徹夜での研究、だったそうです。




 研究員の、ムーレアビス。


 火属性魔法の研究の大家で、年齢不詳お色気過剰な女性。


 戦争当時は、あのネージュメシエのライバルとして、第一線で活躍していたとか。


 当時は本当に怖いお姉さんだったそうです。


 今は研究一筋で、新しい複合魔法の研究に夢中。


 事件当時は、同僚のケシュネスと朝までずっといっしょだったそうです。




 研究員の、ケシュネス。


 最近研究が盛んになってきた複合魔法の研究者。


 若さに見合わぬ知識と鋭い知見で、


 素晴らしい業績を上げている新進気鋭のキレ者。


 うん、いかにもキレ者っていう感じの若者ですね。


 事件当時は、ムーレアビスと朝まで議論三昧、と語っております。




 警備員の、クレストベリ。


 ソロ冒険者として名を馳せた彼は、とある事件で冒険者を引退。


 腕っぷしと誠実さを見込まれて、ホルムセジオ所長から直接スカウトされ、ここの住み込み警備員に。


 ソロで活躍は伊達では無く、物理・魔法共に相当の使い手。


 そして何より、渋カッコいい系のイケおじ。


 事件当時は、規則通りに一晩中の巡回見回り。


 研究所内も敷地にも、特に不審な点は無かったそうです。




 住み込み家政婦さんの、チルミッセラ。


 メイドギルド出身という経歴に偽り無しの有能さだそうですが、


 なぜか本人はメイド呼ばわりを頑なに拒絶。


 それゆえ家政婦さん。


 お若いのに、お仕事にも生き様にもこだわりを持ったお嬢さん。


 事件当時は、普段通りに早寝でぐっすり。




 最後に、亡くなったスクラハン。


 古参研究員ではあるものの、他者と交流するヒマがあったら自身の研究を進める、という、


 いわゆる一匹オオカミ的な仕事バカ、だったそうです。


 研究分野は主に地属性系統ですが、本人は全属性の使い手。


 流行りの複合魔法には懐疑的で、他の研究員と衝突することも多かったとか。


 事件前日に、何やら革新的な発見をしたとひとりで興奮していたそうですが、


 内容を聞き出そうとしたみんなに突然怒り出して自室にこもってしまい、


 翌日、室内からの応答が無いことを不審に思ったホルムセジオが、


 全員立ち会いの元、合鍵でドアを開けたらあの惨状。



 ベッドの上には、身元の判別もできないほど焼け焦げたスクラハンが。



 そう、つまりは、


 絵に描いたような密室殺人事件なのです。



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