10 見守り
『エゾリス』は、乙女たちに大人気なのです。
魔石アメをほお袋に入れて『ハラショー』に運んであげている姿は特に好評なのですが、
『エゾリス』自身が舐めているわけでは無いそうです。
体格的に魔素過剰になっちゃうらしいので。
ちなみに、本来の"エゾリス"には、ほお袋は無いのだとか。
アリシエラさん、可愛さ方面に振りすぎたんじゃないかな。
『本当に愛らしいですよね』
チュースさんも、そう思いますか。
『ええ、とても素敵な女性です』
……せっかくですから、我が家にいる時の『エゾリス』の滞在場所は、
チュースさんのお宅でよろしいでしょうか。
なにせサイズ感がドンピシャですので。
『妙齢の女性が私なんかの家に……』
……お似合いですよ。
『……』
むう、ここにもらぶらぶ予備軍が。
応援せねば……
……
とりあえず、家族友人一同、温かく見守る方向で意見が一致。
がんばれ、チュースさん。
そしてこの件は、さすがのアリシエラさんも想定外だったようで。
「まさかこんな展開になろうとは、このアリシエラ、一生の不覚っ」
無理もありませんよ、
こんなのモルガナさんにだって予測不能ですって。
「いいえ、もしこうなると分かっていたならば」
「もっともっと可愛らしいお名前を……」
天才魔導具技師であるだけでなく、
優しい乙女なのですよ、アリシエラさん。




