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プロローグ
ガレベーラがまだ公女だった頃、人々は言った。
あらゆる神の祝福を受けるガレベーラの人生において、最大の不幸は最愛の母と死別したことだと。
しかし、こうも言った。
ガレベーラの人生における悲しみは、たったそれだけだったとも。
やがて、没落したガレベーラの身を憐れんで、人々は言った。
ガレベーラの身に起こった不幸に勝る不幸はそうあるものではないと。
そして、晩年のガレベーラの語ったところには、こうある。
何を不幸で何を幸せと思うか、そのものさしは自分自身のなかにしかない。
私の人生には悲しみよりも幸せの方がうんとたくさんあった────と。