勧酒
・勧酒
勧君金屈卮:君に勧める金屈卮
満酌不須辞:満酌辞するを須いざれ
花発多風雨:花発けば風雨多し
人生足別離:人生に別離足る
・訳
この杯を持っておくれ
そしてなみなみ一杯まで注がせてほしい
せっかく花が咲いても、風雨が多くあるように
人生に別れは付き物だ
・解釈
一目瞭然、別れの詩である。
思い通りにはならない人生を諦観しつつ、名残惜しむ感がある。
訳を纏めると
【まぁ一杯飲めや、仕方が無いよ、人生ってそんなもんだ】
う~む、飲み屋でクダを巻くおっさんになってしまう。
他に井伏鱒二の訳が妙訳として著名である。
コノサカズキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
特に最後の『さよならだけが人生だ』
この一節のみで見たこと、聞いたこともあろうかと思う。
さよなら【だけ】とはまた寂しすぎようとも思うが、何とも侘しさを感じさせる。
避けようも無い別れの機会にどうぞ一言
『さよならだけが人生だ』
・用語説明
金屈卮:黄金製(金)の曲がった持ち手(屈)が付いた大きい杯(卮)である
花発多風雨:花と風雨は詩表現の定番組み合わせ、良い事(花が咲く)があっても悪い事(風雨)が起こり、思い通りにはいかない