10.新たな出会い
新しい学年になって2週間。少しずつ、クラスの雰囲気も分かってきた。
神谷さんやなっちゃんの他にもにぎやかな人が多いこのクラスでは、休み時間に話し声が途絶えることがない。そんなクラスメイト達にとって、受験勉強の合間の体育はこの上ない息抜きになるようだ。グラウンドへと向かう面々の顔はいつも活き活きとしている。
同じ色のジャージに身を包み、ゾロゾロと流れるように校舎から吐き出されるクラスメイト達。その波の外に制服のまま立ち尽くす、1人の少年がいた。
神妙な顔で、校内の案内図と睨みあっている。この時期にはよくある光景だ。
「?どうした、叶」
体育は2クラス合同で行われる。僕の隣でスニーカーの紐を結んでいた忠は、僕の見ている方向へと目を細めた。
「いや、あの子。1年かな」
「あぁ、教室が分からないやつか」
特別教室は、渡り廊下を渡った別棟に集められている。その上この並びがまた不親切で、迷う1年生は後を絶たない。かくいう僕も入学したばかりの頃はなかなか苦労したものだ。
経験者として先輩風を吹かせてみたかったのだろうか。自然と、足が動いていた。
「ねぇ、君。もしかして教室探してる?」
ゆっくりと歩み寄り精一杯にこやかに声をかけた、つもりだった。自分では人畜無害な見てくれだと思っているのだけれど、相手は茶色がかった目で警戒するように僕を見上げた。
「なんだよ、あんた」
たった七文字なのに、不機嫌なのがこれでもかと伝わってくる。僕はすでに気まぐれを起こしたことを後悔していた。怪しい者じゃありません、と両手を広げる。
「あ―……化学室ならあの廊下渡って1つ上の階だよ。廊下の突き当たり。分かるかな」
持っていた教科書から先読みして案内をすると、相手は少し赤くなって、目を吊り上げた。隣の忠はというと、一歩退いてあーぁ、とでも言いたげに傍観を決め込んでいる。
「どーもッ!」
叫ぶような声を残して、少年はあっという間に渡り廊下へと消えていった。




