なーんか、変な噂が立ってんぞ?
待ちに待った夕食。
食いっぱぐれたおやつの分、いつもよりデザートを増やそうと思っていると、
「席をご一緒して宜しいでしょうか?」
心配そうな顔をしたライアンさんに声を掛けられた。
「ええ。どうぞ」
と、デザートを決めて、ライアンさんと相席。
「よう、ハウウェル。なんか変な噂出てっけど、大丈夫かー?」
「……悪意のある噂だったが……」
「って、ハウウェル。そちらの方は?」
「ああ、ライアン先輩ではありませんか」
「お、レザンも知り合い? そして先輩ですか?」
騒がしいいつもの面子が現れた。
「そう、こちらライアン・フィッセルさん。三年の上位クラスで貴族の先輩だから。失礼のないようにね、二人共。特にテッド」
「ぅお、なんか名指しされたっ!? ハウウェルの中の俺ってどんな評価よ? ってのは、後で聞くとして。テッド・メルン、普通クラスの平民です。よろしくお願いします、ライアン先輩」
「リール・グレイ。上位クラス。平民です。よろしくお願いします」
ぺこりと会釈する二人。
まぁ、名指ししたのはテッドだけど、リールの方もなにげにぼそぼそ言いながらぐいぐい来るからなぁ。一応、ライアンさんを貴族だと紹介はしたけど、ちょっと心配だよね。
「はい、ライアン・フィッセルです。子爵の次男なので、僕も来年から平民ですよ。なので、そう堅くならなくてもいいですよ」
にこりと微笑むライアンさん。そんなこと言うと、コイツら調子こきそうなんだけど・・・
「お、子爵次男ってハウウェルと一緒じゃん。それで気にしてもらってんの?」
「まぁ、当たらずとも遠からず」
セディーの秘書予定というのもあるけど、子爵次男という身分も、シンパシーを感じてもらえている一因の一つではあると思う。
単純に、ライアンさんが義理堅くて面倒見のいい人だということもあるかもしれないけど。
「……こちらに同席しても宜しいでしょうか? ライアン先輩」
「あ、どうぞ」
リールに、快く頷くライアンさん。
「それで、お二人の馴れ初めは?」
「は? 馴れ、初め?」
テッドのアホな質問に、ライアンさんがぱちぱちと瞬く。
「テッド、早速失礼をかますな」
「ん? あれ? 出逢いの方だっけ?」
「ああ……出逢い、ですか? セディック先輩の卒業式で、先輩にハウウェル君を紹介されたんですよ。これから弟が入学するからよろしく、と」
「成る程。あのおにーさんの紹介でしたか」
「セディック先輩をご存知なんですか?」
「うむ。つい先日、ハウウェルを迎えに来たセディック様と、顔を合わせましたからね」
「おにーさんってば、ハウウェルのことめっちゃ可愛がってましたよー」
「……かなりのブラコンな兄弟でした」
ぼそりと失礼なことを呟くリール。一応間違ってないけどね!
「そう、ですよね。やはり、お二人がいらっしゃるところを直に見れば、ちゃんと仲睦まじい兄弟だというのは一目瞭然ですよね」
「あ、そうそう。それそれ。なーんか、変な噂が立ってんぞ? ハウウェル」
噂、か・・・
変な、そして悪意のある噂というなら、あんまりよくない噂なんだろうな。
「うむ。まぁ、あれだ。ハウウェルの家族仲が悪いだとか、疎まれているなどという、そんな噂が出ていたぞ」
「レザン君っ!?」
レザンの言葉に、なぜか慌てるライアンさん。
「ふぅん……まぁ、その程度ならどうってことないかな」
「え?」
「いや、どうってことあるだろ!」
「……そこは、もう少し気にするべきだ」
三者三様の応え。
「そう、かな? だって、セディーは兎も角、両親と不仲……というか、わたしがあの人達に疎まれているのは事実だからね」
「ぅえ? ちょっ、ハウウェル? それ、こんなとこでしていい話じゃなくねっ? 人目あるし、俺ら部外者よ? そんな軽々しく……」
「軽々しいもなにも、我が家の不仲は今に始まったことじゃないからね。ある程度うちとお付き合いのある人達の間じゃ、結構有名だし。むしろ、噂が回るのが遅いと思っていたくらいだよ」
「マジかよ……?」
「マジな話だねぇ。だって、わたしが最初にあの人達に家を追い出されたのって、乳児の頃だよ?」
十五年程前からの出来事だから、知っている人は知っている話だ。今更過ぎる。
「やだっ、なんか想像以上にハードな話だったっ!?」
読んでくださり、ありがとうございました。




