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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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今度はおやつを食いっぱぐれたっ!?


✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐


 午後の授業が終了。


 いつもならこの後は、乗馬をしに行くか走ったりするか、出された宿題を片付けるかと言ったところ。


 けど、今日は体調……というか、まだ筋肉痛が残っているので、あんまり動きたくない。


 そしてなにより、お昼が素のバゲット一本だけなんて、悲し過ぎるっ!?


 というワケで、カフェにでも行こうと思う。


 カフェは食堂と違って、お菓子類や軽食が中心なので、まだ足を向けたことがなかった。


 と、やって来たカフェ。約、七対三程の割合で女子生徒が多いですね。女子生徒に人気のようです。

 残りの二割強も大体が女子生徒同伴で、男子生徒の一人客は片手で数えられるくらいには少ない。


 空いている席に着き、サンドウィッチ、キッシュ、パンケーキ、クレープ、パイ、タルト、マフィン、パフェなどなど……スナック系が少なく、スイーツ系が豊富なメニューをじっくりと眺める。


 あんまり食べ過ぎると、夕食が入らなくなるからなぁ。どれを食べるかを、(しっか)りと吟味して決めなくては!


 確か、セディーが前に言っていた気がする。「カフェのスイーツ類は、どれもそこそこ美味しいから、外れはあんまり無いよ」と。そこそこの美味しさという感想なのは、やっぱりあれだろう。うちで出されるお菓子類は、使用人に頼んで自分好みに作ってもらえるからだと思う。既製品だと、個人の好みには合わせてもらえないもんね。


 とりあえず、サンドウィッチと――――


「ネイサン様~」


 うん? ぁ~……なんか、やたら馴れ馴れしい変な声が聞こえた気がする。気のせいだと思いたい。気のせい、だと……


「相席、宜しいでしょうか?」


 チッ、やっぱり聞き覚えのありやがるこの声は幻聴じゃなかったかっ!?


 そして、幻聴の方がよかった声の主は、一応は見知った()だった! 残念だ。まぁ、知っているのは顔だけ(・・)で、知り合いでもなんでもない……というか、むしろ関わりたくない手合なんだけど。

 つか、今日はなんかの厄日だろうか? なんなんだろう? 全くもう・・・


「いえ、お断り致します」


 返事も待たず、にこにこと勝手に席に着いた女子生徒が、わたしの拒否にぱちぱちと驚いたような顔で瞬く。


 だから、なぜに驚くのだろうかこの人は?


「え?」

「ですから、お断り致します。ああ、いえ。この席は譲りますので、存分にごゆっくりどうぞ。では、わたしは失礼します」


 と、立ち上がろうとしたら、


「ね、ネイサン様は侯爵様のお孫さんで、この前は侯爵家の馬車がネイサン様をお迎えに来ていましたよねっ? すごいですよね~」


 慌てたような声が紡いだ。


 すると、カフェ内の空気が若干変わる。


 おそらくは、彼女の言葉が届いた範囲の貴族子女達の関心を引いたようで、ひっそりと注目……というよりは、聞き耳を立てられているような気配がする。


「お兄様とも仲良しそうで、うらやましいですね!」

「・・・ええ。ありがとうございます」


 思わず、微笑んでしまった。


 うん。わたしとセディーは仲が良い。


 セディーは昔からわたしを可愛がってくれるし、わたしもそんなセディーが大好きだ。


 でも、世の兄弟には、骨肉の争いをしたり憎み合うということもあるようで・・・


 セディーとわたし。両親のあれこれなど、ハウウェル子爵家(・・・)の内情を知っている人達には、わたしがセディーを嫌っているんじゃないか? とか、セディーに嫌われているんじゃないか? などと言って心配(・・)して来る人達がいる。


 両親がアレなのは、セディーのせいじゃない。


 だからわたしは、セディーを嫌ってなんかいない。むしろ、セディーがいなかったら、どうなっていたかもわからない。

 そしてセディーだって、わたしをとても可愛がってくれている。


 だというのに、幾ら違うと言っても、わたし達兄弟が仲が良いのは嘘だと決め付け、わたし達が対立しているというように、嫌い合っている前提の人達がそこそこいるんだよねぇ。


 兄弟仲が不仲と言われるのを否定しても、「無理しなくていいんだよ?」だとか……なんていうかこう、「わかっているから大丈夫だよ?」的な感じで向けられる眼差しが微妙に苛立つというか。


 むしろ、そういう連中程、絶対ぇわかってねぇんだよな。


 ・・・なんというか、あれだ。今まで話が通じないと思っていた人と、思わぬことで意思疎通ができてしまったようで、びっくりしたのは勿論。若干の戸惑いも感じる。


 セディーとわたしが仲良しだと言ってくれたのが、あんまりお近付きになりたいと思うような相手じゃないというのが複雑というか・・・


 でもまあ、それとこれとは別だ。


「では、失礼します」


 と、わたしはカフェを出ることにした。


「あ、ネイサン様!」


 なんか、また馴れ馴れしく呼ばれているような気がするけど、きっと気のせいに違いない。


 わたしはなにも聞こえていない。カフェを出るとダッシュで即行男子寮に戻った。


 さすがに、彼女も男子寮までは追って来ないだろう。というか、女子生徒は立ち入り禁止だし。ちなみに、女子寮は男子の立ち入りが禁止されている。


 けど、そんなことは()(かく)・・・今度はおやつを食いっぱぐれたっ!?


 仕方ないので、夕食までは部屋で大人しく、常備しているビスケットを(かじ)ることにした。


 あ~あ、パフェ食べたかったなぁ・・・


 残念だっ!!


 ホントもう、今日はなんなんだろう・・・

 読んでくださり、ありがとうございました。

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