ぁ、本当にどうでもいいんですね……
「今度からはわたしに絡まなくても、セディーの方からまた、相手をしてくれますよ?」
と、言い切る前にアホ先輩共はわたしに背を向け去って行った。
「・・・おお、なかなかに足が速い」
さて、これからあの先輩共はどうなることやら?
ハウウェルの次期侯爵を継ぐセディーに睨まれるとなると、大変でしょうねぇ。
セディーも、母のことは苦々しく思っているし。下手したら今日のことで、母と交流を持っている彼らの家ごと睨まれることになるかもしれないな。
更には、母が関わっているのなら、セディーの判断によっては・・・彼らの言動がお祖父様とおばあ様に知られる可能性もありそうなんですよねぇ・・・
無表情で怒気を撒き散らすお祖父様と、微笑みながら氷点下の眼差しを向けるおばあ様と、一見にこやかに冷たく怒るセディーの顔が浮かぶ気がする。
それに、彼らは気付いてなさそうだけど、学園内にいると思われる、家族と折り合いの悪い人達の反感を買ったと思うんだよねぇ。
まぁ、絡まれなければ……いや、また絡まれたとしても、連中に特段興味は無いし、わたしの知ったことではないけど。
とりあえず、これから色々と大変だろうけど、強く生きろ。と思いながら走り去る彼らの背中を見送っていると、
「・・・その、ネイサン様」
控えめな声が気遣わしげにわたしを呼んだ。
「はい、なんでしょうか? ライアンさん」
「大丈夫、ですか?」
「ええ、特に気にしてませんので」
「あの、おつらいのでしたら、無理はしなくてもいいんですよ?」
悲しそうな顔がわたしを見下ろしていた。
「? いえ、別につらくもなんともないですよ? ただ……」
そう。あんな、アホらしい連中の寝言なんざ心底どうでもいい。
騎士学校でもああいう手合はいた。あそこはあそこで、わたしよりも家庭環境の悪い人なんて、ごろごろいた。ガチで親族一同から見捨てられたような悲惨な人もいたし・・・
「ただ、なんでしょうか?」
「連中のせいで、そろそろ昼休みが半分になろうとしています! このままでは昼食を食いっぱぐれてしまうっ……」
時間を取られ過ぎた。
「へ?」
「今から行くと食堂は混んでて席の確保は難しいし、購買にはいいものが残っているかどうか・・・」
混んでる食堂で空いてる席を巡って椅子取りをするには、体調的に遠慮したい。
「チッ……昼時の忙しいときに絡んで来るとは、迷惑な連中だ。全く……あ、ライアンさんも、お昼どうするか早く決めた方がいいですよ? 一応わたしは、購買の方へ向かおうと思っていますが」
「え? ネイサン様?」
「大していいのが残っていなくても、食いっぱぐれるよりは幾分マシですからね」
「ぁ、本当にどうでもいいんですね……」
「はい? いえ、お昼を抜くと、午後の授業が大変になりますよ?」
「……そう、ですね……」
どこか拍子抜けしたような、少しほっとしたような顔のライアンさん。
「? まぁ、早く行きましょう」
「あ、はい」
と、購買に向かい、残っていたパンを購入をしてライアンさんと別れた。
今日のお昼は、バゲット一本をひたすらもしゃもしゃと食べた。
具も無くて、味も付いてない素のバゲット一本だけというお昼ごはんは、ちょっとつらい・・・
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読んでくださり、ありがとうございました。
ネイサン的には、お昼ごはん>>筋肉痛つらい>>>めんどくさいおかん>>先輩共という感じですね。(笑)




