認識の違い、だったりするかもしれない。
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日曜夕方。
学園に戻って来て、男子寮食堂にて。
「よ、ハウウェル。あの後どうだった……って、なんか疲れた顔してんな? なんだ? あのブラコンでちょっと怖そうなおにーさんとなんかあったのか?」
午前中から馬車に乗り、のろのろと進まない渋滞に掛かりながら学園の校門前に横付けされた侯爵家の馬車から降りられたのが日暮れ。
なんで渋滞って、あんなに疲れるんだろう?
いや、まぁ・・・渋滞というか、実は昨日からの疲れが抜けてないんだけど。
ラウンジで剣を預けて、ごはんだー! と、食堂に飛び込んだところで、テッドに声を掛けられた。
「・・・ごはんが、先」
「お、おう」
気圧されたように頷くテッドを余所に、夕食を大盛りで注文。
空いてる席に着いてごはんを食べ、半分程食べて少し落ち着いたところで、口を開く。
「で、なに?」
「なに……っていうか、こないだはあんな感じで別れたから、ハウウェルは大丈夫だったのかな? って思って」
「・・・端的に言うと、昨日と今日は家を出るまで、めっちゃ勉強させられた」
「へ?」
「なんかわたし、セディ……兄上にアホの子だと思われたらしくて。学園の高等部に通っている子息がいる貴族家を、暗記させられた。とりあえずは、同学年の男子生徒分の家」
昨日の朝から、ひたすら暗記。そして合間に、お茶会のマナーの復習。セディーに、「せめてこれだけは覚えておこうね?」と。今日、家を出るまでずっと。
「ぅわ……」
テッドが、なんとも言えないという顔でわたしを見やる。
「・・・え~と、ハウウェルのおにーさんて、過保護そうでハウウェルには優しそうに見えたのに、実はスパルタだったり?」
「スパルタというか、兄上はわたしよりもかなり頭が良くてね・・・兄上には余裕で覚えられることでも、わたしには結構キツい」
「ぁ~、なんつーか、その、ご愁傷様」
「ホントにね・・・」
「けどさ、さすがにあれだぜ? あの絡んで来た先輩達の顔、本当に覚えてないのか?」
「覚えてないっていうか・・・ああいう有象無象ってやたら湧いて出て来るし。口だけの奴らって、覚える価値も無くない?」
「いや、むしろああいう真っ正面から絡んで来るような連中ってなかなか珍しいんじゃね? あんまり見ねぇと思うんだけど?」
「え?」
「だから、割と印象に残ると思うんだが……違ったか?」
テッドのその言葉を聞いて、意味がわかった。
「ぁ~・・・いや、うん。なんか、認識の違い、だったりするかもしれない」
セディーとわたしでは、認識が違う。この学園は、わたしの認識からすると、かなり平穏だ。
「?」
「わたしとレザンがいた騎士学校ってのが、かなり殺伐としていたところでね。喧嘩、暴力沙汰は日常茶飯事。わたしはなにかと絡まれることが多くて・・・絡んで来て返り討ちにした連中を、一々覚えるなんてするだけ無駄だったから・・・」
「うお・・・なんか、ハウウェルの知られざるバイオレンスな一面が・・・いや、まぁ、やたら喧嘩慣れしてんなぁとは思ったが、予想以上だった!」
「ぁ~、うん。なんか、セディーがわたしをアホの子だと思う筈だわ」
そりゃあ、真正面から絡まれる……というか、喧嘩を売られること自体が稀なのだとしたら、そんな稀な相手のことを覚えられないというのは、記憶力大丈夫か? と心配されても仕方ないかも。
残念な子を見る目を向けられる筈だ。
「わたしはそんなアホの子じゃないという誤解を解けば・・・いや、でも、喧嘩売って来る相手の顔を覚えられないくらいに喧嘩を買っていたことがバレるのも、それはそれで・・・かなりまずい気がする!」
駄目だ。その方が余計に、セディーやおばあ様達を心配させてしまうだろう。言えない・・・
「え? なにハウウェル、そんな喧嘩売られてたん? つーか、買ってた、の方?」
「・・・多いときは、一日五回とか。酷いときには、どっか移動する度に絡まれてた」
移動教室やらなにやらのとき、一人になったときなんかを狙い打ちにされて、めっちゃ絡まれてた。
「は? 騎士学校バイオレンス過ぎねっ!?」
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