麗しき兄弟愛というやつだな!
「まぁ、セディーはわたしに甘いから」
「甘いとかそんな感じじゃなくねっ!?」
「ふむ。ハウウェル達兄弟は仲がいいのだな」
「え? この兄弟を見てその感想なのかレザンっ!?」
「うん? 兄弟仲がいいのはいいことだろう? 麗しき兄弟愛というやつだな!」
「ネイトネイト、僕達仲良しだって」
にこにこと嬉しそうに微笑むセディーを、少し引き気味の表情で見やるテッド。
「……ハウウェルのおにーさんは、なにげにハウウェルと同類な感じだったっ……」
なにやら若干失礼な呟きに応えてあげる。
「う~ん……でも実は、セディーの方がわたしよりも容赦なかったりするよ? チェスやカードゲームなんか、結構攻撃的だし」
「マジで? あんな穏和そうな顔しといてっ?」
「まぁ、ほら? 穏和さと苛烈さって、両立しないこともなかったりするから」
「なあ、ハウウェル。俺らってば、要らんことした感じだったりする?」
後悔してそうな顔での質問。
「そうだねぇ。君らが絡んで来なければ、わたしはさっさと帰る予定だったんだけどね」
「引き留めてすんませんでしたっ!? どうぞ今すぐお帰りくださいっ!!」
「さ、帰るよ。セディー」
ということで、早く帰ろう。セディーの背中を押して、馬車へと促す。
「え? ネイト? お友達に挨拶は?」
「俺らは単なる通行人なんでお気になさらず!」
「?」
さっきまでの揶揄ってやろうという態度とは違い、いきなり通行人を自称し出したテッドをきょとんと見やるセディー。
「どうした、テッド?」
そして、不思議そうな顔をするレザン。ちなみに、リールはまだ固まったままだ。
「兄上に挨拶するのに、ちょっと気おくれしたみたい。だから、挨拶はまたの機会にしてあげて」
「そっか。うん、わかった。それじゃあ、挨拶はまた今度にしようか」
うんと頷いたセディーが、
「ネイトと仲良くしてくれてありがとう。それじゃあ、帰ろうか」
兄の顔で微笑んで、わたしの手を引いて馬車の方へと向かう。
「道中お気を付けて」
と、レザンの声に見送られ、馬車へ乗った。
セディーと並んで座って……
これで漸く帰れる。と、思ったのも束の間。
「・・・それで、ネイトは誰に虐められたの? 僕に話してご覧」
にっこりとはしつつも、どことなくひんやりした空気を纏うセディーに、優しく問い掛けられた。
「・・・そのことなら大丈夫だよ。むしろ、わたしの方が彼らに恥を掻かせてやったくらいだし。だから、セディーは気にしなくて」
「ネイト? 僕には話してくれないの?」
気にしなくていい、と言おうとした言葉が、にっこりとした笑顔で遮られる。
「・・・」
どうしよう……喧嘩売って来たあのアホ先輩共より、セディーのこのひんやりした笑顔の方がなんかちょっと怖い気がするっ!?
「・・・ぇ~と、その・・・覚えて、なかったり?」
とりあえず、正直に話してみることにした。
「ネイト? ネイトが優しいのは知ってるけど、ネイトが庇う価値があるの? それとも、そいつらは厄介な家の出身だったりする? 侯爵家よりも上なの? それならそれで、やりようは幾らでもあるから心配しなくても大丈夫だよ?」
覚えていない、というわたしの言葉に、なにを勘違いしたのか、ぽんぽんと飛躍して行くセディーの思考。それにしても、侯爵家より上の家が相手でもどうにかするつもりって、危険な匂いが・・・
「ぁ~、いや、ちょっと待って? 多分、セディーは勘違いしてるから」
「? 勘違いって?」
探るようなブラウンの瞳がわたしを覗き込む。
「庇うも庇わないも……そもそもわたし、連中のことを全く知らないんだよ。あんなどうでもいい連中に興味なんて無いし。むしろ、もう連中の顔さえも朧げだから」
「え?」
「本当に、覚えてないんだよ。もしもう一度同じ連中に絡まれたとしても、どなたです? って、イヤミとかじゃなくて本気で聞くくらいには、連中に欠片の興味も無い」
絡んで来るにしても、あの程度の口だけじゃあ、記憶にも残らない。
「・・・ぇ~と、ネイト? それ本気で言ってる、の? 冗談じゃなくて?」
読んでくださり、ありがとうございました。
ブラコン度はセディーの方が重め。(笑)




