ふむ……気にすべき点が全くわからん!
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午前中の授業が終わり、ランチタイム。
「よう、ハウウェル。こっち空いてるぞー」
「ああ、君か」
ひらりと手を振るのはテッド。
「それじゃあ、お隣失礼する」
「おー、座れ座れ」
席に着いて食べ始めると、
「昨日はレザンの野郎が悪かったよなー。あと、俺も茶化して悪かった」
テッドが謝った。
「昨日? ああ、別にもう怒ってないよ」
「え? マジ? 昨日は結構怒ってなかった? ハウウェル」
「昨日は、って言うか……まぁ、レザンの無神経さは別に今に始まったことじゃないし。今更だよ、ホントさ。アレはああいう無神経な生き物なんだ。気に障る度、一々引き摺ってたら身が保たない。他にも、人の話を全く聞かないような人っているし……」
うん。あの無神経さには若干イラッとさせられるけど、レザンは全然マシな方。誰かみたいに、相手するだけでメンタルが削られて行くような、疲労感や徒労感だけがどんどん募る感じはしないし。悪い奴でもない。無神経な脳筋だけど。
むしろ、こっちも奴を雑に扱おうと思えるから、ある意味気を使わないでいい相手だとも言える。
「ほら見ろ、ハウウェルはあんなことを一々気にするような器の小さい男じゃないと言っただろう?」
なぜか得意げに胸を張る無神経な生き物が現れた。しかも、勝手に席に着くし。
「いや、お前はなんかもっとこう、いろんなこと気にしろよレザンっ!」
無神経且つ残念な生き物にツッコミを入れるテッド。言うだけ無駄なのに。
「ふむ……気にすべき点が全くわからん! だが、不快にさせたのなら悪かったな。ハウウェル」
「まぁ、こういう奴だし」
やれやれ、と溜め息。
なんだかんだ、コイツとの付き合いも三年以上になるし。諦念と妥協も覚える。
「うん? なんだ、またケーキを強奪するか?」
「そうだね。なんか寄越せ? まぁ、今日もそれで手打ちにしてやる」
なんだかんだ、食べ物で手打ちにしとく方があまり気まずくならなくて済むし。
「だ、そうだぞ?」
と、レザンが言ったら、横合いからすっとチョコケーキの皿がわたしのトレイへと寄って来た。
「?」
「き、昨日は、そのっ……女子と勘違いして、すまなかった……」
ぼそぼそとした謝罪の声。
「詫びる……」
わたしから目を逸らしながらチョコケーキの乗った皿を差し出すのは・・・
「・・・ああ、昨日の」
わたしを女子だと勘違いしていた、なにやら女子が苦手そうな男子生徒。
「別に大して気にしてないけど、くれるって言うなら貰っとく。ありがとう」
「っ!?」
お礼を言うと、なぜか慌ててさがる彼。
「そうびくつくことはない。ハウウェルはそんなに怖い奴じゃないぞ? 偶に凶暴さが出るだけで、普段は猫を被って大人しい振りをしている奴だからな」
「いや、お前それどんな評価だよおい」
「うん? 事実だろう?」
「ふん」
おおよそ間違ってはいない。多分……わたしは、特に猫を被っているつもりはないけど、目立つのは嫌いだし。舐められない程度に、やられたらやり返すだけだ。隠しているつもりもない。
それを、他人がどう思うかは別、と言ったところ。
「なんか、ハウウェルの苦労が偲ばれる気がするぜ」
「うむ。ハウウェルは、色々と大変だと思うぞ」
テッドの言葉に深く頷くレザン。それを、お前が言うなという呆れ気味の視線を向けつつ、
「ぁ~、そう言や、紹介がまだだったな。そこの勘違い君は上位クラスに通う平民で」
露骨に話を逸らすテッド。
「リール・グレイだ。リールでいい」
昨日の勘違い君、もといリールが応える。
「上位クラスか。道理で見覚えが無いワケだね。わたしはネイサン・ハウウェル。普通クラスの男子だよ。ネイサンでもハウウェルでもお好きに」
「その節は、悪かった」
苦虫を嚙み潰したような表情で逸らされる顔。
「ま、さっきも言った通り、あんまり気にしてないから。君もそんなに気にしなくていいよ」
「うむ。故意に間違わない限り、ハウウェルが噛み付くことはないらしいから、そう警戒することはない。もしハウウェルが噛み付くとしても、人目のある場所ではそう無体な真似もしない筈だ」
キリっとした表情でなんか言っている無神経な脳筋。ホント、コイツは・・・
「・・・」
「いやもうお前少し黙ってろレザンっ!?」
「うん? さっきから元気だな、テッドは」
元気というか、ツッコミだ。あと、多分だけどテッドは緩衝材になろうとしているんだと思う。昨日みたいにならないように。まぁ、レザンのせいで台無しだけど。
「ハウウェル……は、そんなに信用が無いのか?」
そして、レザンのせいでわたしは、リールに胡乱げな眼差しを向けられている気がする。
「信用どうこうではないぞ? ハウウェルの習性のようなものだ。誰だって、嫌なことをされたら気分を害するだろうに」
「だから、現在進行形でお前がわたしの気分を害しているんだけどな。そして、わたしの評判がどんどん落とされている」
「なんだと? 一体誰だ? ハウウェルの評判を落としている奴は」
「お前だよっ、いい加減気付けっ!?」
「なにっ!?」
テッドのツッコミに驚く無神経な生物。
そうやってわちゃわちゃしていたら――――
「……ハウウェルって、去年上位クラスにいた先輩の弟か? 確か、やたらお勉強会を開いていた」
「ハッ、さすがハウウェル。兄弟揃って平民なんかの相手をしてやるとは、お優しいことで」
「まぁ、弟の方は、あの先輩の方とは違ってできが悪そうだけど」
「幾ら普通クラスだからって、上位クラスの平民に媚びるか?」
「前に先輩の方にも忠告はしたけど、付き合う奴は選んだ方がいい」
「評判が大事ならな」
なにやら、貴族らしき上級生二人に絡まれました。思い切り、見下されていますねぇ……
「……どうする? ハウウェル……」
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