聞けやこの無神経野郎が。
この野郎っ、わたしの言葉を信じてやがらねぇ!
そして、いきなり無神経な強面野郎に逃げろと話し掛けられた彼が、目を白黒させて驚いている。その間に、このテーブル近辺から人がいなくなっていたりするし。
「わたしは誰彼噛み付く猛獣か」
低く返すと、
「ハウウェルの条件反射じゃなかったのか? 急いで食べて、彼が出て来るのを待ち伏せして、裏へ引き摺って行って話し合う気だろう?」
きょとんとした表情でとんでもねぇ誤解を与えることを言いやがったよっ!? 彼がぎょっとした顔でわたしを見ているよ!
「とんだ濡れ衣だな。一般人相手にそんなこと、誰がするか・・・とりあえず、そのチョコタルトも寄越せ?」
「ハウウェルは俺のケーキを幾つ強奪すれば気が済むんだ? 全く……」
やれやれ、とでも言いたげな表情でチョコタルトの皿をわたしのトレイに置くのがまたムカつく!
「いや、今、明らかにお前が、わたしの気分を現在進行形で害してるからな。ケーキ二個くらいじゃあ割に合わないくらいには、気分が害されてんだよ」
「ふむ……さすがに、これ以上はやらんぞ?」
目付きを鋭くして宣言するレザン。
「これ以上ケーキが入りそうじゃないのが残念だよ、全くもう……」
コイツに対する、他のいい嫌がらせを思い付かないのが、至極残念だ。
「おー、やっぱりな。目付きの悪いデカい奴からケーキを強奪した強者がいるって聞こえたけど、思った通りハウウェルだったか」
と、今度は面白がる響きの声がした。
「テッド」
「ふっ、確かに今、ケーキを二個も強奪されたところだな」
「おーおー、相変わらずレザンはよく食うもんだ。で、真相は?」
ちらりとレザンの持つ大盛ばかりのトレイを見やり、わたしの斜め向かいに座るテッド。
「レザンが無神経だから、ケーキ二個で手を打ってやっているところ」
「なにを言う。俺はハウウェルに目を付けられた彼を逃がそうと思っただけだ」
と、許可無くわたしの隣に座るレザン。
「だから、単なる勘違いには手ぇ出さねぇっつってんだろうが。聞けやこの無神経野郎が」
低く言うと、
「ハっ、ハウウェルが汚い言葉を使ってるっ!?」
やたら驚くテッドに、
「やるかハウウェルっ!?」
なにかを期待するように目を輝かせるレザン。
「チッ……誰がやるかこのアホが」
わたしだって、怒れば汚い言葉くらい使う。
ぶすりとチーズケーキにフォークを突き刺し、口に運ぶ。どっしりしたベイクドを数回噛んで飲み込み、トレイを持って立ち上がる。
「そこの人、この無神経野郎に絡まれたくなかったらさっさと逃げた方がいいよ。それと、次からは気を付けた方がいい」
目を白黒させている彼へと忠告。
「わたしみたいに、単なる忠告だけで済ませる人ばかりとは限らない。根に持つ人は根に持つから」
「ハウウェル?」
レザンなんか無視だ。
そして行儀は悪いが、チョコタルトを歩きながら食べて食事終了。
トレイを返して食堂を出る。
部屋に戻って、明日の準備でもするか。
明日は、お祖父様の手配で放課後には馬車が校門で待っている筈だから・・・
寮には戻らないでそのまま馬車に乗った方がちょっとは早く帰れる、かな?
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翌朝。金曜日。
いつもより十分早く食堂に来てみた。
そこそこな混み具合。
そして眠い。早く食べよう。
がやがやとした喧騒に、ゆるゆると落ちそうになる瞼と欠伸を堪えながら朝食。
ある程度の喧騒って、なぜか眠気が誘われる気がする。なんでだろ?
食べているうちに、段々と目が覚めて来た。
顔を上げて食堂を見渡すと――――
楽しそう、嬉しそうな顔が大半。戸惑うような顔があり、はっきりと顰められている顔もあり、不機嫌そうな顔、苛立っている顔もところどころ見られる。
不快そうな顔が……単なる機嫌の良し悪しや体調、わたしみたいに朝が苦手、そうじゃなければ、仏頂面がデフォルト。という人ばかりだといいんですけどねぇ。
とりあえず、今日なにもなければ、明日明後日が土日だから、月曜日には寮全体の雰囲気が少しは変わっている……ことを期待したいところではある。
そう、思っていた。
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読んでくださり、ありがとうございました。




