悪いのは、咎められるような行いをした者の方だ。
誤字直しました。ありがとうございました。
それから、個室となっている談話室へお祖父様と一緒に移動して――――
「お祖父様、あんなに圧を掛けなくてもよかったんじゃないですか?」
口を開きます。
お祖父様はずっと怒った顔をして、学園職員達を終始威圧していましたが……
「実は、あんまり怒っていませんでしたよね?」
わたしには判ります。だって・・・お祖父様が本気で怒ったときの圧は、もっと凄いからっ!?
お祖父様が両親のいずれかと顔を合わせると、表情では怒っていなくても、緊張感が漂い、空気が冷やっとするし・・・気配というか、怒気を発するという意味が、よく判る。まだ、彼らを許していないのだと。
だから、学園職員に対するお祖父様の態度は、怒っているというポーズなのだとすぐに判った。まぁ、だから今聞いているんですけどね。
「・・・そうはいかん。今日は、ネイトになにかあれば、ハウウェル侯爵家を敵に回すということを周知させに来たのだからな」
ああ、今日は学園側というよりは、生徒達……の後ろにいる貴族家の方への圧力でしたか。
「ただでさえ、あの愚息共のせいでうちの評判は下がっているからな」
苦虫を嚙み潰したような顔をするお祖父様。まぁ、愚息共、とは両親のことですね。
わたし、両親には軽んじられていますし。下位貴族の、それも身内に軽んじられている、嫡男ではない子だと認識されると、厄介なことが起きる可能性がある、と。
「ご迷惑をお掛けします」
「ネイトがそんな顔をすることはない。むしろ、よくやったぞ。今回のことでは学園にも、そしてあちこちにも色々と貸しができたからな」
わしゃわしゃと頭が撫でられて、髪がぐしゃぐしゃにされました。
「お、お祖父様っ」
「おお、すまんすまん」
相変わらず、悪いなんて思っていませんね。口だけで、顔が楽しそうですよ。全くもう……別に、嫌いじゃないんですけどね。
「貸し、ですか」
乱れた髪を解いて手櫛で整え、結び直す。
「ああ。貸しだ。今回の件では、助かった家も多い筈だ。まぁ、代わりに、逆恨みなんかには十分注意せねばならんがな」
成る程、それでわざわざお祖父様が睨みを利かせに来た、ということですか。
子爵令息としてのネイサン・ハウウェルは次男で、更には両親に軽んじられている。が、そのわたしになにかあれば、侯爵家当主であるお祖父様が直接動く、と知らしめてくれたということですね。
ぶっちゃけ、貴族の中には高位貴族の親類は、掃いて捨てる程にいる。本人は下位貴族の家出身だとしても、祖父母が公爵や侯爵家の人間。王族に親類がいる、などなど。
けれど、その人脈が実際に使えるか、実際に高位貴族や王族を動かせるだけの器量や人徳があるのか、可愛がられているか、というのは別ですからね。
だから、自分は誰々の親類、親族に誰々がいる、誰々の友人なんだ、などと軽々しく公言してはいけない。
実際に動いてくれなければ大恥を掻くだけだし、名前を勝手に使用された方も迷惑になるから。
各家の出方次第では、学園内での話では収まらない可能性もある、と。あくまでも、現時点では可能性でしかないけど・・・どこでどんな逆恨みされるかは、わからない。
だからこそ、お祖父様が動いた。
「・・・すみません、短慮でした」
「なにも謝ることはない。よくやったと言っているだろう?」
下位貴族と裕福な平民が多数助かっていても、もしかすると高位貴族の家の幾つかに、多少の恨みを持たれるかもしれない。言い換えれば、他家の弱みを握った、とも取れますが……それでも、貸しだと言い切りますか。よくやった、と。
「悪いのは、咎められるような行いをした者の方だ。そこは間違うんじゃない」
敵いませんね、お祖父様には。
「だが、ネイトも学園内ではよくよく注意するように。よいな?」
「はい。今日は、来てくれてありがとうございました」
「構わん。ふっ、セディーの悔しがる顔が目に浮かぶようだ」
読んでくださり、ありがとうございました。




