次はいつ帰って来る?
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・・・・・・
・・・
コンコン、とノックする音がする。
「……ネ……ン様。ネイサン様、起きていらっしゃいますか? ネイサン様」
次いで、呼ぶ声。
「セディック様がそちらにいらっしゃいますよね? 起こして頂けますでしょうか?」
更に続く、ノックの音と使用人の声。
「ぁ~、えっと?」
目を擦りながら身体を起こす。と、隣にはすやすやと眠るセディーがいた。
「わかった!」
と返事をして、
「確か、昨日は……寝落ちしちゃったんだっけ? ……今、何時?」
時計を見ると、八時を回っていた。
「セディー、起きて。朝だよ」
ゆさゆさと揺さぶる。
「ん……あと……五、分……」
ぼそぼそと小さい声が呟く。
「うん。眠いのはわかる。でも、ここセディーの部屋じゃないから。ここでゆっくりしてると、準備でばたばたするのはセディーだから。起きよう? ね、セディー」
「ぅ、ん? ・・・ね、いと?」
眩しそうにぼんやりと開くブラウンの瞳。
「うん。ここ、わたしの部屋」
「ん~?」
「覚えてない? 昨日、話してるときに寝落ちしちゃったの」
「・・・きのう。ねおち?」
ぼんやりと焦点の合っていない、如何にもな寝惚けまなこがわたしを見て、
「ぁ~……うん」
うんうん頷いて、とろりとまた閉じそうになる。
「やっぱり、わたしよりも朝が苦手なんだねぇ。でも、セディー? 早く起きてくれないと、わたしお昼過ぎには学園に戻っちゃうよ?」
「がくえん・・・? っ! って、今何時っ!?」
ぱっと見開くブラウン。
「八時過ぎたところかな?」
「うわっ!? ごめっ、ど、どうしよっ!? ネイトもう行っちゃうのっ!?」
がばっと身を起こして慌て出すセディー。
「いや、わたしも今起きたとこだから。まだ行かないよ。落ち着いて、ね? おはよう、セディー」
「ぁ・・・ぉはよう、ネイト」
さっと白い頬が赤くなる。恥ずかしそうな表情で返される挨拶。
「うん、おはよう。とりあえず、身支度を済ませようか?」
「うん・・・ごめん、後で」
慌てて部屋を出て行ったセディーを見送り、わたしも身繕いをする。
それから食堂へ行って――――
「昨日は、ごめんね? その、ネイトの部屋で……寝ちゃって」
朝食の席で、沈んだ様子で謝るセディー。
「いや、わたしの方こそ。起こさなくてごめんね?」
セディーに毛布を掛けて、これで大丈夫と思ったら、わたしまで寝落ちしてしまった。
「ううん。その、僕・・・寝起き悪いし。全然起きなかった、でしょ? ごめん」
「ふふっ、相変わらずみたいだね」
小さい頃と、あんまり変わってない。
「……ぅ」
「そんなことより、体調の方は大丈夫? 熱っぽいだとか、怠かったりはしない?」
「うん。僕は大丈夫なんだけど、ネイトは? 僕がベッド占領しちゃってた……よね? ネイトの方こそ、風邪ひいたりはしてない?」
「ああ、わたしも全然平気。ベッドは……占領というか、仲良く並んで寝てたって感じかな? だから、そんなに気にしなくていいよ。狭いテントで野郎共数人と雑魚寝するより、セディーと並んで寝る方が断然いいから。ちなみに、寝相も悪くなかったよ?」
ぱちんとウインクをすると、恥ずかしそうに片手が顔を覆った。
「ぁ~、も~、カッコ悪い・・・」
「あらあら、セディーの寝起きが悪いのは今始まったことじゃないと思うのだけれど?」
クスクスと笑う声。
「・・・おばあ様」
「そんな顔をするくらいなら、もう少し寝起きを自分でどうにかなさいな」
「はい」
しょんぼりと頷くセディー。
「セディーはココアよね。ネイトは?」
「紅茶をお願いします」
と、漂って来る甘い匂い。
「どうぞ。それで、ネイトは何時頃に家を出るの?」
おばあ様から紅茶を受け取る。
「ありがとうございます。そうですねぇ・・・お昼過ぎには、出ようかと」
そうすれば、夕方になる前には着くだろう。無論、渋滞を避ける為、途中で馬車を降りてから歩いて学園に向かうつもりだ。
「ふふっ、それはおじい様が喜ぶわ。さっきも、ネイトを起こして一緒に朝食をとりたいって言っていたのを止めたの」
「さっきって、何時です?」
「七時前だったかしら?」
「それは、少し早過ぎでは?」
セディーが渋い顔をして言う。自分がその時間に起こされたら嫌だな、と思ったのかもしれない。
「だから止めたのよ。まだ寝かせてあげて、その代わりに、お昼を一緒したらどうですか? って、ね。きっと、飛んで帰って来るわよ」
その様子を想像したのか、うふふと笑うおばあ様。
「次はいつ帰って来る?」
「そうだねぇ・・・」
さすがに、毎週末帰って来るのは大変そうだ。
わたしの都合だけでなく、お祖父様おばあ様、セディーの都合との兼ね合いもあるだろうし。
馬車は数台の所有があるにしても、御者や馬の調整、それに各々の体調にもよる。
遠距離を走ったら、馬をちゃんと休ませることも重要だ。馬やそれを御する人自体が元気じゃないと、走ってくれないから。馬は大事な足であり、資産でもある。大切にしなきゃ。
あとは、天候なんかも凄く大事。嵐や大雨、大雪があった場合には、帰るのは中止にしてもやめた方がいい。
この辺りは、どちらかというと貴族というよりも、騎士目線になってしまう。無理をしたって、よくないことが起こるのは判り切っている。事故は、そういうときにこそ起こるものだから。
事故危険! 安全第一! なるべくリスクの回避、めっちゃ大事!
「とりあえず、最低でも月一回は帰って来たいかな?」
「もっと帰って来ればいいのに」
「そうも行かないでしょ。お祖父様もおばあ様も、セディーだって出掛ける用事ができるかもしれない。そのときに馬車が無かったら困るでしょ」
「それは・・・」
なんてったって、セディーはハウウェル侯爵家の次期当主(一応、まだ内定)だ。
偶々、昨日と今日は用事が無かっただけ(用事を入れなかったのかも?)で、幾ら予定を調整しようと、毎週末用事が入らないということはないだろう。
「ネイトの言う通りね」
「まぁ、長期休暇には必ず帰って来るから」
「ホントに?」
「うん。約束する」
とはいえ、長期休暇の前には無論のこと。テストという難関があるワケだけど。勿論、赤点を取ると、問答無用で補習があるけどねっ!?
そして、赤点教科の補習が終わるまで帰省はできない。補習で長期休暇を潰した人が~というのは、一年生の間でもよく聞く話だ。
赤点を取るつもりは全くないんだけど、気を引き締めないとね。
セディーはきっと、赤点の心配なんかしたことないんだろうなぁ。なんせ、常に手抜きでも十番以内をキープしていたという話だし。
羨ましい限りだ。
「とりあえず、赤点回避を頑張るかなぁ」
「わかった。僕も協力する!」
と、朝食が終わった後に、お勉強タイムに突入。セディーがやたら張り切っていました。
お昼にはお祖父様が慌ただしく帰って来て、一緒にお昼を食べて、そのまま四人でお茶をしながら談笑して、二時過ぎには家を出た。
寂しそうな顔で、
「行ってらっしゃい、ネイト」
と送り出してくれた。
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読んでくださり、ありがとうございました。




