学校は学ぶ場所!
「ちなみに、セディーの塩対応って?」
「ああ、僕が後輩に勉強を教えているのをどこぞで聞いたらしく、勉強を教えてほしいって言って来たからね。わざと難解な上、無駄に分厚い参考書を十冊以上積み上げて、『最低限、これ全部読み込んだら教えてね? そうじゃないと、勉強を教えるとか以前の問題だから』って言い置いて、何度か放置したら絡んで来なくなったかな?」
それ、勉強教える気が皆無な態度っ!?
「それはまた・・・他の人は?」
「勿論、付き合って参考書を読み始めたよ? 彼女がいたら煩くて敵わないからね。真面目な子達は、進んで協力してくれた」
「そうなんだ」
真面目じゃない人達は・・・そもそも勉強を教わりに来ても長続きしない、ということかな。
「うん。面倒なのが勉強を教えてほしいって近付いて来たときなんかに、よくやる手だね。本当に読んで来たら、口頭で質問をして、ちゃんと答えられたら相手をしてあげるって決めてるんだ」
にっこりと、なかなかの腹黒発言をしたよ。しかも多分、セディーはその難解な参考書とやらを読んで理解してるっぽい。
「ちなみにだけど、適当に答えたら?」
「勿論、『話にならないな。ちゃんと全部読んでねって言ったでしょ? 聞いてなかったの?』って、言って追い返すよ」
うん。なかなかの仕打ちだ。
・・・というか、セディーにそんな対応されて、よくそれでわたしに絡もうと思ったもんだな? 彼女の図太さも大概だよ。ホント。
「まぁ、あの学園、保護者達には大絶賛だけど、男女交際やら恋愛したい派の生徒達には不評な校則があるからね」
「ああ、確か……通称キス停学、だっけ?」
「そうそう。学園内では、過度な身体的接触を推奨しない。婚約者同士の関係であっても、身体的接触の度合によっては即座に退学、解雇に処す。ってのと、学園内に於いて、故意に唇同士の接吻をした者は停学、または停職に処す。また、手や頬への接吻及び、救助活動、救命行為、不測の事態はその限りではない。唇同士の接吻に拠る停学、停職処分を繰り返した場合、放校、または解雇に処す。ってやつね」
要は、婚約者同士の男女でも、学園内でことに及ぼうとするのを見付かれば一発で退学や解雇。
また、故意に唇へキスをすると生徒は停学、職員は停職処分を受けるという校則。
そして、通称キス停学を何度も繰り返すと退学処分も辞さないという話だ。
勿論、親愛のキスや救命行為、突発的な事故なんかは除いて、だけど。
「よく覚えてるね、セディー」
校則は理解はしても、本文をそのまま記憶はなかなかできないと思うんだけど。
「面白い校則だと思って、なんか頭に残ったんだ。実際に、キス停学で退学処分を受けた王族の話は有名だし?」
今から数十年前のその昔――――
王族だという地位や権力を笠に着て、のべつまくなしに女子生徒達と浮き名を流し捲ったり、嫌がる女子生徒に強引に迫ったりと、あちこちで修羅場を繰り広げ、公序良俗を乱しに乱したクソ野郎な王族がいたそうな。当時の学園関係者達は、それはそれは頭を悩ませ・・・
会議に会議を重ね、通称『キス停学』と称される、あのお堅い校則を作ったのだとか。
で、見事件の馬鹿なクソ王族、及び喜んで彼に口説かれて公序良俗を乱していたお嬢さん方共々、放校退学に処したと。
学園側は、退学にされた当人にいちゃもんを付けられたそうだが、要約すると『学舎は恋愛をする場ではないので、節度を守れず、勉強する気が無い上、学ぶ意欲のある生徒の足を引っ張り、邪魔をするような輩は迷惑極まりないので、そんな奴は二度と来るな!』という内容の手紙を当時の王室に叩き付け、学園の公序良俗と風紀を守る為の放校処分として広く公表。
馬鹿王族に戦々恐々していた令嬢を持つ貴族保護者達からは安堵の声と大絶賛の嵐。
それ以来、お堅い校風になったらしい。
ちなみに、当時の学園長(女性)が強気だったのは、学園長も王族だったからなのだとか。「恥を知れ!」と、馬鹿王族にガチギレしていたそうです。馬鹿王族の末路は確か……辺境の修道院行き、だったかな?
そういうワケで、学園はオープンな恋愛がしたい派な人達には肩身が狭いらしいです。
でも、学園外に於いては関知せず、外に出てからは生徒個人とその家の責任とのことなので、学園外では大いに恋愛を楽しむカップル(偶に婚約者同士じゃないという、なんとも言えないカップル達もいますが)もいるようです。
特に女性は、妊娠してしまうと学園側に自主退学を勧められるそうなので、清いお付き合いに留めるべきですが。
更には、学園内ではお堅いお付き合いしかできないので、卒業して結婚した後、ラブラブになる夫婦もいるのだとか。
そんな経緯と理念を持っている学園なので、ハニートラップを仕掛ける場所としては、すこぶる向いてないんですよねぇ。
一応、数年ごとに通称『キス停学』の校則の見直しを求める声が学生間で上がるらしいけど・・・学園側の理念と主張の方が正しいですし、「なら、もっと校則の緩い学校へ転校を勧めます」と言われて終わるのだとか。
学校は学ぶ場所! というド正論を返されますからね。反論のしようもありませんよ。
校則も覆ることはなさそうだし、お堅い校風もそうそう変わることもないだろう。やっぱり、逃げ腰気味な塩対応で凌ぐしかないかな?
既成事実とやらを作ろうにも、それで退学させられるのは『彼女』も本意ではないだろうし。
それに、なんというかこう・・・ある意味では、外交問題に発展する可能性を孕んでいる『彼女』のことは、お祖父様やおばあ様には話せないよねぇ。
一応、自慢じゃないけど・・・騎士学校時代に脳筋共から追い掛けられて鍛えられた。それで、逃げるのも隠れるのもそこそこ得意になったからきっと大丈夫だろう。
脳筋共とは、また違う感じに常識がちょっとアレっぽいけど、『彼女』は女子生徒だし。
きっとそんな何時間も追い掛けて来るような体力も気力もないだろうから。そもそも『彼女』は三年生だ。気を付けていれば、普通に接触する機会自体が少ないだろう。
「うん。なんか、大丈夫な気がして来た」
読んでくださり、ありがとうございました。
かなりお堅い校風です。




