二人共、アホよねぇ?
「そうだ、ネイト。久々にチェスでもしないか?」
夕食を食べ終えた頃、お祖父様が言いました。
「それなら、僕としませんか? お祖父様」
にっこりとセディーが微笑む。
「わたしは今日は、セディーとではなくネイトとやりたいのだ」
ムッと顔を顰めるお祖父様。
「僕に譲ってください、お祖父様。そうじゃなければ、勝った方がネイトと、ということでどうでしょうか?」
セディーは気にせず、笑顔で続ける。
「フッ、断る!」
「大人げないですね、お祖父様は」
「大体だな、セディーは強過ぎると思うぞ。すぐに負けてはネイトが楽しくないだろうに?」
「それ、ネイトを弱いと言っていますよね。お祖父様の方が酷いと思うのですが?」
やれやれと溜め息を吐くセディー。
「・・・二人がわたしを弱いと思っていることは、今のやり取りでよ~くわかりましたよ」
じっとりと低い声で言うと、
「あ」
「いやっ、これはその、違うんだネイト!」
ぎくりとした表情をする二人。
「そ、そうだよ。ネイトが弱いとは……あんまり、思ってないよ?」
「へぇ・・・」
あんまり、ということは、少しはチェスが弱いと思っている、と。
まぁ、わたしがゲーム系でセディーより弱いのは事実なんだけどね。それは認めよう。でもさ・・・
お祖父様の口振りだと、セディーはお祖父様にも負けないのだろう。そしてなんだか、お祖父様はチェスに勝ちたくてわたしを誘っているようにも聞こえるんですがねぇ?
まぁ、手加減されて勝っても嬉しくないし? 一応、負けたからと言って不機嫌になる程子供でもないとは自分で思っているけど? でもさ、だからと言って、「コイツは弱いから勝てる」と思われているというのも、それはそれで面白くない。
「チェスはしません」
ぷい、とそっぽを向いて言う。
「その、ごめん」
「全く、セディーときたら」
やれやれと、今度はお祖父様が溜め息。
最初に、わたしがセディーにすぐ負けると言ったのは誰だったか・・・
「お祖父様ともしませんから」
「なんだと!」
いや、なんだとって、なんで驚くんですかね? お祖父様は。全く。
そこへ、
「二人共、アホよねぇ? 折角こうしてみんなで集まっているんだから、全員ができる遊びに誘えばいいのに。どう? ネイト、おばあ様とカードゲームでもしない?」
ひらりとトランプを振って、にっこりとわたしを誘うおばあ様。
おばあ様からトランプを受け取り、
「いいですね、なにをしますか?」
ケースを開けてカードを混ぜながら聞く。
「ね、ネヴィラ? その……」
「あの、おばあ様?」
「あらぁ? なにかしら?」
にっこりと、わざとらしく二人に笑顔を向けるおばあ様。ちょっと声がイジワルです。
「ネイトを独り占めしようとしたお二人さん? どうしてもと言うなら、交ぜてあげても宜しくってよ? なにか仰ることは?」
「ぅ、すまん。入れてくれ」
「すみません、おばあ様。僕も入れてください」
おばあ様は、やっぱりお強いですねぇ。
「ふふっ……では、なにをしましょうか?」
「まぁ、最初はババ抜きでいいんじゃないかしら?」
「わかりました」
と、トランプを四人分配った。
ババ抜きは、カード次第で勝敗が決まる。
ときには、一度もカードが引かれることなく上がってしまうこともあった。
ラッキーでしたね、お祖父様。
人数が減ってからの一騎打ちでは、おばあ様とセディーが強いかな? おばあ様のポーカーフェイスと圧力、にこにこと笑みを崩さないセディーの勝負は見ていて面白い。
一騎打ちだとお祖父様は・・・まぁ、なかなか判り易い、とだけ。
七並べも、勝敗はカード次第かな。
端っこのカードしか持ってないとキツいよね。
カードをよく止めて微笑んでいるのはおばあ様。
悔しげな顔をよく見せているのはお祖父様。
七並べは、なにげに性格が出るゲームだと言われていますよねぇ?
神経衰弱はセディーが断トツ。
カードを捲る度にセディーが取って行って、他はあんまりカードが取れなくて、すぐに他のゲームに移った。
すっごく記憶力良いんだよね、セディーってば。羨ましいなぁ。
スピードは、わたしが断トツ。
次いで、お祖父様が強いかな?
セディーは・・・うん。なんか、残念な感じ。
これもすぐに他のゲームになった。
別に特に罰ゲームやご褒美があるワケでもないけど、なかなかに盛り上がって――――
数時間後。
「そろそろ終わりにしましょうか」
呟いたおばあ様に、
「なに? まだいいではないか」
お祖父様が不満そうに返します。
「あなた、明日も早いんじゃありませんこと?」
「そうですよ、お祖父様。それなら早く寝た方がいいですよ」
「お祖父様、遊んでくれてありがとうございました。あんまり無理はしないでくださいね」
「むぅ・・・仕方ないな。では、これが最後の勝負だ」
と、カードゲームを終わらせた。
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はぁ……楽しかった。
みんなでカードゲームをしたのはかなり久々だ。
入学前は、ずっと学園の予習。勉強勉強で全く遊ぶことはしなかったし。
そもそもそれ以前は、セディーもわたしも別々の学校で・・・みんなで揃うこと自体が難しくて、珍しかったからなぁ。
部屋に向かう廊下の途中で、
「ネイサン様、お帰りなさいませ」
にこりと微笑んでわたしに頭を下げるのは、わたしの乳母だった女性。
「ただいま」
「ふふっ、お部屋は整えておきましたが、あまり夜更かしはいけませんよ」
と、イタズラっぽく注意されてしまった。
「はい、気を付けます」
「セディック様も、朝に弱いんですよ。ネイサン様よりも寝起きが宜しくないんですよ」
「うん」
「ご兄弟ですね」
微笑ましいというような優しい眼差し。
「そうだねぇ」
「ネイサン様が楽しそうで、なによりです」
昔は、わたしの方が彼女を見上げていたのに。いつの間にか、下になってしまった彼女の目線がわたしを見上げている。温かいなと感じる柔らかい視線。
「ありがとう」
「では、失礼しますね」
「うん」
彼女と別れて部屋に入ると、少ししてからセディーがやって来た。
読んでくださり、ありがとうございました。




