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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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朝っぱらから、無駄に疲れたわ。

 さあ、行こう!


 と、馬車の停まる道を駆ける。


 学園から数キロ離れた場所……ほぼ街を抜けたところで、うちの馬車と待ち合わせをしている。

 渋滞を避けて早く帰ろうと思ったら、学園で待ってないで街を出ちゃった方が早いんだよね。


 無論、普通のそれなりの家を持つ貴族子女達は、呉々も真似しちゃいけません。財政難の貴族家なら仕方ない……かもしれないけど。


 これはわたしが次男で、尚且(なおか)つ、そこそこ剣を扱えるからできることだ。そうじゃなければ、軍属だとか、レザンみたいにやたら強くて腕に覚えのある人だけだな。


 わたしは……数人で囲まれても、負けない自信はある。乱戦は割と得意だし、自分以外全員敵という状況にも慣れている。

 騎士学校では、馬鹿共に何度も囲まれたことがあるから。むしろ、下手に味方がいるよりも、やり易いかもしれない。複数で囲まれた場合、敵に同士討ちをさせるのも得意だし。


 ・・・まぁ、賊に遭遇しても勝てる筈だ! なんて、自分を過信することもないけど。わたし、自分の実力はちゃんと(わきま)えているし、逃げるのも得意だから。


 伊達に騎士学校時代、勝負を挑んで追い掛けて来る脳筋共から逃げ捲っていたワケじゃない。ぶっちゃけ、奴らから逃げるだけでも、なかなか鍛えられると思う。

 待ち伏せとか尾行とか、集団で包囲だとか、マジ勘弁しろだよ。ある意味、わたしをボコろうと複数人で囲んで来たような馬鹿共よりも、質が悪いと思う。

 笑いながら、「勝負しろ!」と追い掛けて来る脳筋共、マジコワい・・・

 しかも、勝負の順番を決める為、その場でバトルとかし始めるし。もう、脳筋共だけで延々とバトってればいいのに、他人を巻き込むしさ?


 それは置いといて。


 学園生徒の帰省時には、街道沿いのパトロールもされている筈だから、男なら徒歩で帰る奴も珍しくないらしい。

 まぁ、家が本当に遠くても徒歩で帰るのは、平民の生徒が多いと聞いたけど。


 わたしみたいに……というか、渋滞を嫌って、少し離れた位置で馬車と待ち合わせをしている貴族の男子生徒もいないこともないという。少数派だそうだけど。


 まだ薄暗い、しんとした街の中――――


 舗装された石畳を、タッタカ走って街を突っ切る。ひんやりした空気が気持ちいい。


 どこからともなく漂って来るのは、パンの焼ける香ばしい匂い。パン屋さんは早朝からパンを焼いているみたいだ。


 いい匂いに、少し食欲を刺激される。朝食はまだ食べてない。とはいえ、営業時間にはまだ早いから、開いてなさそうだけど……


 なんて思いながら、お腹の空いて来そうな香ばしい匂いを振り切るように走る。


 走り続けて――――


「はぁ、はぁ・・・」


 少し息が切れて来たので、速度を緩める。


 やっぱり、騎士学校に通っていた頃より体力が落ちているのが判る。まぁ、一応は時間があるときには木剣振ったり、ランニングしたり、乗馬をしてるけど・・・座学が多くて身体を動かす時間が少ないから仕方ないな。


 あと、剣を振ってるところをレザンに見付かると「さあ、やろうじゃないかハウウェル!」とか言って来て厄介だから、こそこそしているのも・・・


 まぁ、レザンと打ち合いをすればかなりいい訓練になることは確実なんだけど、毎度毎度奴に付き合っていたら、わたしの身が()たないから嫌だ!


 我儘かもしれないが、わたしは打撲や捻挫、擦り傷なんかの痛い思いは、なるべくならしたくない! あと、筋肉痛で数日間は全身ギシギシ状態とかつらいし!


 うん。わたし別に軍人目指してないもん。程よく身体が鈍らないくらいの適度な運動で丁度いい。「限界を越えようぜ!」なんて汗臭いのは、脳筋共だけでガンバッテいればいいんじゃないかな?


 まぁ・・・偶にでいい、かな? 偶になら、レザンに付き合ってやってもいい。相手がいないと、剣の勘も鈍るから。奴と打ち合うのは二週間に一度くらいでいい。


 だから・・・毎日誘うのはマジ勘弁しろ!


 いつもいつも、へばって大変な思いするのはわたしの方なんだよ! 体力おばけめ・・・


 ペースダウンで上がっていた息が整った頃、うちの馬車を発見。待ち合わせ場所に着いたようだ。


 御者に手を振り、馬車に乗り込む。


 本当は、馬車に繋いでいる馬を一頭借りて、乗馬で先に祖父母の家に帰ろうかと思っていた。その為に、馬を一頭余分に連れて来てもらった。


 けど、なんかもう疲れた。


 そして、(ようや)く祖父母の家に向けて出発した。


「ぁ~・・・朝っぱらから、無駄に疲れたわ」


 汗を拭いながら思う。


 元々、早起きが苦手な質だというのもある。けど、なんていうかこう・・・自分が優先されて当然だと思っている、人の話を聞かない、話の通じない女の人って、昔っから苦手なんだよねぇ。


 誰かさん(・・・・)を思い出させるような女性とは、できればあんまり関わり合いになりたくない。


 数キロの早朝ランニングなんかより、あの彼女の相手の方が精神的に疲れた感じがする。


「ふゎ・・・ぁ~、ねむ」


 ガタガタ揺れる振動と音が眠気を誘い、思わず欠伸が出た。


 この馬車は祖父の馬車だし・・・


 着くまで少し、寝ていようかな?

 読んでくださり、ありがとうございました。

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