いえ、迷惑なので。
「成る程、わかりました」
「ありがとうございます! それで、ネイサン様の馬車はどこに」
「女子寮に戻っては如何ですか?」
なんか言ってるのを途中で遮ります。
「へ?」
なんなんでしょうね? わかったとは言いましたが、うちの馬車に乗せるとは、一言も言っていないというのに。
「迎えが来ていないのでしたら、無理をしてこんな時間に帰る必要はないのでは? 身の安全には代えられませんからね」
「っ……わたくしがこんなに困っているというのに、助けてはくれないのかしら?」
「いやですね。そもそも、わたしはあなたのことを全く知りませんので。幾ら先輩だとはいえ、馴れ馴れしくされる謂われはないと思うのですが?」
「っ、それは失礼を。わたくしは」
「あ、女子生徒が出て来ましたよ。あちらの彼女に頼ってみては如何でしょうか? 同級生か後輩かはわかりませんが、わたしを頼るよりも女性同士の方がいいと思いますが?」
彼女が名乗ろうとしたときでした。校門から女子生徒が出て来ました。
なんかもう、この人に絡まれるのも面倒なのであの女子生徒に丸投げしちゃっていいですかね?
今し方出て来た女子生徒には、少々悪いような気もしますが・・・
ぶっちゃけ、眠くなって来たし。
苦手なんだよね、早起きってさ。
それに、ぐずぐずしていたらレザンの野郎が出て来るかもしれないし。
アイツ、深夜だろうが早朝だろうが常にあのテンションだし。眠いときに絡まれると、なんか腹が立って仕方ないんだよね。
「では、そういうことですので失礼します」
「っ、困っているレディを放って行くのですかっ!?」
淑女って、どの口が言いますかね?
「・・・やはり、はっきり言わないとわからないようですね。お忘れですか? あなたは言いましたよね? ご迷惑でなければ、と。ご自分で。迷惑なので、あなたを送ることはできません」
折角、態度で示してあげていたというのに。かなり露骨で、判り易かったと思うんですけどねぇ?
「ぅ、嘘でしょっ!!」
「いえ、迷惑なので」
きっぱり言ってやると、
「ほ、本気で言っているのっ!? こんっなに可愛くてか弱い女の子が、助けてって言っているのを見捨てるだなんてっ、マジ信じらんないわっ!!!!」
詰られました。
可愛くてか弱いって、自分で言いますか?
まぁ、彼女は十中八九、こちらの方が地なんでしょうね。さっきまでの媚びたあざとい態度より、こっちの方がましですが・・・
「ふふっ、これはまた面白い冗談ですね」
「はあっ!? なにが冗談なのよっ!?」
「いえ、本当にか弱い女性はもっと引っ込み思案なのでは? 間違っても、自分から助けなさいよと言って騒いだりしないのでは? と、思っただけですので。お気になさらず」
「・・・」
ムっとした顔がわたしを睨む。
この分だと、アレは言わなくて済むようです。アレは・・・女性にかなりのダメージを食らわすことができますが、わたしの方もダメージを負いますからね。
「さて、ではこれでわたしは失礼します」
「あっ待ちなさいよっ!」
「わたしは今から、ランニングがてら走って帰りますが? 少なくとも、キロ単位で」
馬車と待ち合わせ場所まで、眠気覚ましにランニングは丁度いいだろう。
「え?」
ぽかんとした表情の彼女を捨て置き、剣の包みを解いて腰に剣を佩く。慣れた剣の重さに、少し落ち着く。
やっぱり、外出時に剣は必須ですよね。
いつ何時、どんなことに巻き込まれるかわからないし。仮令どこぞに置き去りにされたとしても、武器と金銭と足があれば、ちゃんと家に辿り着けるだろう。
さて、走りますか。
「ちょっ、ネイサン様っ!?」
なんか呼ぶ声が聞こえたような気がするけど、きっと気のせいだ。わたしはなにも聞こえなかった。
さあ、行こう!
読んでくださり、ありがとうございました。
きっぱり言ってやりました。(笑)




