知られたくなかったことを暴露されたけどっ!?
誤字直しました。ありがとうございました。
ハウウェルの家の仕事をしながら、クロシェン家と行き来をして――――
偶に、レイラ嬢がクロシェン家に訪問しているときにかち合ったりもした。
ロイとレイラ嬢も順調に交流を重ねて、仲良くなっている様子。
ロイとレイラ嬢、わたしとスピカでダブルデートのようにして出掛けたり……まぁ、偶に約一名程オマケが付いて来るときもあるけど。
稀に、ルリア嬢がいるときがあって、そういうときにはルリア嬢が嬉しそうにオマケにエスコートされていたりする。
レイラ嬢に可愛がられながら、ルリア嬢にお姉さん振るスピカは可愛い。まぁ、レイラ嬢とスピカより、一番年下の筈のルリア嬢の方がかなり確りしているんだけど。
そんな風にして過ごして、偶々レイラ嬢の訪問ともかち合ったある日のこと。
「ぁ……その、いらっしゃいませ。ねえ様……」
なんだか、とても沈んだ様子のスピカ。
「あら、スピカ様。どうされました? お元気がないようですけど」
「れ、レイラ様も、いらっしゃいませ……」
レイラ嬢とわたしの顔とで視線を彷徨わせ、ぐっと唇を噛み締めたスピカは、泣きそうな顔で俯いた。
「スピカ? どうしたの? どこか痛い?」
「お医者さんを呼んだ方がいいですかっ?」
「い、いえっ、だ、大丈夫ですから!」
慌てた顔のエリオットに、スピカはふるふると首を振って断る。
「・・・おい、ネイサン。お前に、聞きたいことがある」
ムスッとした顔でロイが言う。
「なに? ロイ」
「お前は……」
「兄様!」
なにか言い掛けた言葉が、高い声に制された。
「スピカ?」
「あのな、スピカ。これは、お前だけの問題じゃねーんだよ」
「で、でも、兄様……」
「聞きたくねーなら、お前は向こう行ってろ」
「ぅ~……わ、わたしが聞きます!」
なんだか、深刻な話のようだ。
「? えっと、スピカは、わたしになにか聞きたいことがあるの?」
コクンと頷き、キッ! とコバルトブルーが挑むようにわたしを見上げた。
「ね、ねえ様が……」
「わたしが? なぁに?」
「ねえ様が、レイラ様に押し倒されたって本当ですかっ!?」
「はあっ!?」
「え?」
「ええっ!? れ、レイラちゃんいつの間にハウウェル先輩にそんなことしたのっ!? お嫁入りする前の女の子がそんなことしちゃ駄目でしょっ!!」
「いや、待って。落ち着け、エリオット。わたし、レイラ嬢にそんなことされた覚えは無いから」
「ええ、わたくしも、ネイサン様にそのようなことをした覚えはありませんわよ?」
「ふぇ?」
「え?」
「は?」
スピカの言葉に驚き、否定すると、ぽかんとした顔で見られた。
「そのお話、どこから聞きまして?」
「えっと、学校のお友達が……親戚がねえ様達の通っていた学校に通っていたそうで。わたしがねえ様と婚約したって聞いて、『大丈夫なの?』って聞かれて……『ハウウェル様は、フィールズ様に押し倒されたことがあるそうですけど』って。他にも、『ハウウェル様とフィールズ様は、ダンスコンテストでベストカップル賞を取るくらいに息がピッタリで、とても仲が良い』って。『そんな風に、国で他に仲良くしている女性のいる方と婚約して大丈夫なの?』って」
しょんぼりと、泣きそうな顔で言い募るスピカ。
「んで、もしかしたらレイラ嬢はネイサンのことが好きで、だから追い掛けるために俺と婚約したんじゃないか? だとよ」
続いたロイの言葉に、頭を抱えたくなる。
「そのお話のフィールズは、わたくしじゃありませんわよ」
「え?」
「あ、えっと、その、そのお話のフィールズは、多分僕のことですね!」
「は?」
「まぁ、多分って言うか、その話のフィールズはエリオットのことだから。わたしがレイラ嬢に押し倒されたって言う事実も……その、レイラ嬢とベストカップル賞を取ったって言う事実も一切無い。事実無根だから」
「はい! 学園で、ハウウェル先輩と一緒にベストカップル賞を取ったのは僕ですからね!」
ふふんと胸を張って宣言するエリオット。
「は?」
「え? あ、れ? ええ、と……? レイラ様じゃなくて、エリオット様、が……? ねえ様、と??」
「いや、待て。じゃなにか? お前、エリオットとダンスコンテスト出たのかっ!?」
「いや、出てないし」
「ええ。正確に言うと、ネイサン様が学園を卒業するときのダンスパーティーで、エリオットとカップルを組んで踊ったのが、ベストカップル賞として表彰されたのですわ。又聞きで、情報が正確に伝わっていないようですわね」
「え? マジ?」
「はい! マジです! あ、ちなみに、僕がハウウェル先輩のパートナーを務めたんですよっ? ハウウェル先輩、とってもかっこよかったんですからねっ♪」
「ぷっはっ!? あははははははははっ!?!? なにしてんのお前らっ!!」
「ええっ!! な、なんでまた、男の方同士でっ!?」
「ふっ、それはですね、ハウウェル先輩が、スピカ様以外の女の子とはあんまりダンスを踊りたくなかったからです!」
「え?」
ぱちぱちと瞬くコバルトブルー。
「ええ。ですから、その前の交流会……わたくし達の通っていた学園内のダンスパーティーで、ハウウェル様は、フロアクイーン賞を取りましてよ!」
「レイラ嬢! 余計なこと言わないでくださいっ!!」
「ブハっ!? ハハハハハハハハハっ!! マジかっ!? なにお前っ、バカなのっ!?」
くっ……どこぞのアホみたいに、指を差されて爆笑されたっ!
「あら、とっても合理的だと思いますわ。だって、自分よりも上手く女性パートを踊ってしまう方に、ダンスを申し込む度胸のある女性はなかなかいませんもの。現に、エリオットにダンスを申し込む女子生徒も現れませんでしたし」
「はいっ♪女の子のパートを踊ってるのを見せるだけで、女の子は寄って来なくなるからとっても楽でしたよ♪」
にこにこと笑うエリオットに、またしても響くロイの爆笑。
「そういうワケで、わたくしがネイサン様のことを恋愛的な意味で好きだという、妙な誤解は解けたでしょうか?」
にこりと聞いたレイラ嬢に、ぽかんとした顔でコクコクと頷くスピカ。
「伝聞とは言え、エリオットが誤解させるようなことをしてごめんなさいね? でも、ふふっ……ロイ様のように、お友達に爆笑されてでも、ネイサン様は他の女子生徒とはダンスを踊りたくなかったようでしたから。スピカ様は、ネイサン様に愛されていますわ。自信を持ってくださいな」
「ね、ねえ様に、愛されっ……」
ぼん、っと音がしそうな程、スピカの顔が一瞬で真っ赤になった。
「まぁ、あんまりって言うか、できれば知られたくなかったけど・・・でも、わたしが好きなのはスピカだけだから、安心して? ね? スピカ」
熱いほっぺたに手を添え、コバルトブルーを覗き込んで見詰めると、
「っ!?」
スピカはコクコクと頷いてくれた。
はぁ・・・
アホな誤解が解けてよかった・・・
知られたくなかったことを暴露されたけどっ!?
読んでくださり、ありがとうございました。
黒歴史が暴露された!(((*≧艸≦)ププッ




