みんなでなかよしさんです!
「なにやってんですか?」
呆れたような声がしたと思ったら、
「あ、お帰りなさい」
ロイ達が帰って来たようだ。
「スピカ姉さまをぎゅ~してますっ♪」
「スピカをって、セディックさんとケイト様まで……?」
「姉さまもセディー兄さまも、みんなでなかよしさんです!」
「あらあら、皆さんスピカととっても仲良くなってくれたんですね」
ロイからは呆れた視線。ミモザさんからは、微笑ましいものを見るような視線。そして、
「リヒャルト君、ネイサンとセディック君に少しお話があるんだけど、いいかな?」
ヒクリと引き攣った顔でトルナードさんが言った。
「おはなしですか? はい」
リヒャルト君が頷いた途端、
「ネイサンっ! セディック君もさっさとスピカから離れなさいっ!」
小声で怒鳴り付けるという器用なトルナードさんに、スピカ達から引き離された。
わたしとセディーだけ・・・
「もう、そんなに目くじら立てることはないのに」
やれやれという顔のミモザさん。
「年頃の男女だぞ! もっと節度をだな……」
「折角、皆さんがスピカと仲良くしてくださっているのに。あなたは、スピカがセディック君とケイト様に嫌われてもいいの?」
「い、いや、そうではないが……」
「なら、そんなに怒らないでください。いいですね?」
「ぅ……はい」
と、ミモザさんに諭され、しょんぼりするトルナードさん。
そんな風にわちゃわちゃしている横では、
「姉さまもスピカ姉さまも、もっともっとぎゅ~してください!」
「わわっ! え、えっと、ぎゅ~?」
「ああもうっ、リヒャルトもスピカ様も可愛過ぎますわっ!」
「はゎ~……ケイトお姉様の笑顔が神々し過ぎる……」
なんか、ハグし続けている三人は幸せそうだ。
・・・いいな、リヒャルト君とケイトさん。
「それで、お見合いはどうなったんですか?」
にっこりと、団子状態のハグから引き離された後の、ちょっと残念そうな表情を押し隠したセディーが聞いた。
「ロイとフィールズ公爵令嬢とのお見合いは……」
「ま、とりあえずは仮婚約ってことで落ち着きましたね」
勿体ぶったミモザさんの言葉を、あっさりと引き継いで顛末を話すロイ。
「そうですか。それはおめでとう、でいいのかな?」
「いいんじゃないですか? とりあえず、一年間は仮婚約をして交流を持つ。で、その間に相手を気に入らなかったり、合わないと思ったり、どちらかに他に結婚したいという相手が現れた場合は、破談。という感じになりました」
「ええっ!? 兄様レイラ様としっかり婚約しなかったんですかっ!?」
驚きの声を上げたのはスピカ。
「なんでですかっ!?」
「あ? 色々とあるんだよ。フィールズ公爵令嬢はかなり気さくな人だが、隣国の、それも公爵家の令嬢なんだぞ? 婚約するにしても、書類やらなにやらを城に提出して、審査して、色々と面倒な手続きがあんだよ。で、そこまで手続きしちまったら、簡単には破談にできねぇだろうが? だから、仮婚約にしたんだよ」
そりゃ国が違うから、手続きが結構面倒で繁雑になるのは当然か。
わたしとスピカの婚約は十年前、二人共子供だったときに結ばれている。おじい様とトルナードさんが、その面倒な手続きをしてくれたんだと思います。
ロイはもう成人しているから、多分その面倒な手続きを自分でしないといけないんだろうなぁ。
「まぁ、レイラさんの為を思うなら、それが一番いい手ではあるよねぇ。レイラさんも、ロイ君の他にまるっきり縁談が無いワケじゃないし」
「え?」
「なにを驚いているの? レイラさんは公爵令嬢だよ? ターシャおば様……前公爵夫人がロイ君を推して、レイラさん本人に他の縁談を知らせないでいるだけで、公爵家と繋がりたいっていう家との縁談なんか幾らでもあるに決まってるじゃない」
まぁ、まともかどうかで言うと、アレな部類に入るどこぞの『見守る会』の人とかからは、レイラ嬢はある意味崇められているからなぁ。一応、崇められているだけあって、レイラ嬢を大切? にはするだろう。下には置かない待遇とか? レイラ嬢が、そういう扱いを望むかどうかは兎も角として、だけど。
「幾らレイラさんの希望を優先するとは言っても、他国からの縁談が来る可能性も否定はできないからね。フリーな高位貴族令嬢ということで、王命での縁談があった場合、断れないという事態だってあり得るし」
にこにこと言い募るセディーに、
「そうですね……それじゃあ、着替えて来ます」
ロイは言葉少なに盛装を着替えに行った。
う~ん……セディーもなかなか焚き付けるなぁ。
「そういうワケで、これからちょくちょくフィールズ公爵令嬢がこっちに遊びに来てくださるそうですよ。スピカ、フィールズ公爵令嬢と仲良くね?」
「えっと、母様? なんで兄様じゃなくてわたしに言うんですか?」
「ふふっ、なんでかしらね~」
と、ロイとレイラ嬢との婚約は、暫くの間は仮婚約に決まったようだ。
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読んでくださり、ありがとうございました。
ネイサン「・・・いいな、ケイトさんとリヒャルト君」σ(´・-・`*)
セディー「まぁ、うん……年頃の男女だもんね。仕方ないよ……うん」(Ⅲ-ω-)




