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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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多分、普通に子供扱いなんじゃない?


 なぜか喜んでいるセディーと、それを不気味そうに見やるロイ、わたしの男組と、女性陣とリヒャルト君の乗る馬車とに分かれて移動。


 馬車の中では、昨日よりはピリピリしていない……というか、セディーがロイをあんまり威圧はしてなかったと思う。多分。チラチラと、『お前の兄貴どうにかしろ』というような視線が寄越されていたような気がしないでもないけど。まあ、そんなに悪くない空気だった。


 程なくして動物園に到着。


 わたし達の方が先に着いたので、馬車から降りてスピカ達が来るのを待つ。


 後ろからやって来た馬車から最初に降りたのはケイトさんで、セディーが手を貸す。次いで、ケイトさんが手を貸してぴょんとリヒャルト君がジャンプして降りた。そして、


「おら、お前が行け」


 顎をしゃくってわたしを促すロイ。


「うん。おいで、スピカ」


 と、最後に降りるスピカに手を差し出す。


「は、はい、ありがとうございます……」


 恥ずかしそうに手を重ねたスピカは、亜麻色の髪を編み込み、わたしの贈ったリボンで髪をハーフアップにして……


「スピカ、すっごく可愛いよ♪」

「っ!?」

「がんばりましたわ!」


 恥ずかしそうなスピカを見て、晴れやかな笑顔でサムズアップするケイトさん。


「なんてったって、今日はお二人の初デートですものね!」

「ひゃわっ! ケイトお姉様!」

「ぁ、そっか……ネイトとスピカさんの、初デート……に、なるんだ……」

「え? なんでいきなりどんよりしてんです? セディックさん」

「僕達とネイト……分かれた方がいいのかな?」

「ああ、それじゃあ、ケイト様さえ宜しければ弟さんをお預かりしましょうか?」


 気を利かせたつもりであろうロイの言葉は、


「いえ、ロイ様。お気遣いは結構です。今日はわたくし、リヒャルトと回る為に来たのですから!」


 案の定キッパリと断られる。そして、


「ロイ君、ケイトさんとリヒャルト君の邪魔はしない方がいいですよ? 幾らリヒャルト君が可愛いからって、独り占めはどうかと思います」


 やれやれという風なセディーに眉を(ひそ)められた。


「あ、そうですか。すみません、余計なことを言いました……って言うか、なんでそこに行くんですかっ!?」

「え? だってリヒャルト君、可愛いでしょ? とっても」


 (「なんだあれっ! ) (ブラコンで、) (お互いの弟を) (可愛がってる) (ってこういう) (ことなのかっ?」)


「まぁ、セディーとケイトさんはいつもこんな感じだねぇ」

「マジかっ!?」

「それで、今日はどこを回りますか? リヒャルトの行きたいところから回りましょう!」

「はいっ。ぼく、ぞうさんが見たいです!」

「えっと……ネイトとスピカさんは、ふ、二人で回ってもいいんだよ?」

「ええ、わたくし達のことはお気になさらず」


 明らかに寂しそうなセディーと、にこにこと優しい笑顔のケイトさん。


「ぁ……えっと、その、わたしも皆さんと一緒に回りたいです」

「え? いいんですか? スピカさん」

「はい、皆さんと一緒に回った方が楽しいですからね!」

「まぁ、リヒャルトはケイト様が(しっか)り見るだろうからあまり心配はしていませんが……コイツ、アホなんで。迷子になったりしないよう、皆さんで気を付けてやってください」

「ちょっ、なに言ってんですか兄様っ!?」

「あ? 落ち着きのないアホ妹の心配?」

「迷子になんかなりません!」

「ふふっ、ロイが心配みたいだから手を繋いでおこうか?」

「おう、繋いどけ繋いどけ。途中で手ぇ放して迷子にすんなよー」


 ニヤニヤと笑うロイに、


「なっ、なんで兄様が勝手に決めるんですかっ!?」


 顔を赤くして怒るスピカ。


「えっと、わたしとは……嫌だった? ごめん、ケイトさんと手を繋ぐ?」

「っ!? ぜ、全然嫌じゃないです!」


 ふるふると首を振って否定。


 よかった。スピカに嫌がられてなくて……


「つ、繋いで、ください」

「うん」


 差し出された小さな手をぎゅっと握る。


「ふふっ……リヒャルトは、姉様と手を繋ぎましょうね?」

「それじゃあ、反対の手は僕とね?」

「はい!」


 と、仲良く親子のように手を繋ぐセディー、リヒャルト君、ケイトさん。


「あ、ロイ君も繋ぐ? 迷子防止で」


 誰とも手を繋いでいないのを見たセディーが、気遣うように空いた方の手を差し出すと、


「・・・は? い、いえ、俺はいいですから。どうぞ三人で繋いでください」


 ロイは引き攣った顔で断る。


「そう? それじゃあみんなとはぐれて迷子になったら、下手に動かないで迷子センターに向かってくださいね? 後で迎えに行くので」

「・・・はい」


 渋々というか、非常に嫌そうに頷くロイ。


「に、兄様をあんな簡単にやり込めるなんて、セディックお兄様すごい!」

「ん~、セディー的にはロイをやり込めたつもりは全くないと思うよ?」

「そうなんですか?」

「うん。多分、普通に子供扱いなんじゃない?」


 まぁ、セディーはよくわたしと手を繋ぎたがるし、その延長なのかも。


「す、すごいっ! いっつもわたしを子供扱いする兄様を子供扱いっ……」

「まぁ、実際にセディーは、わたし達よりも三つ年上だからね」

「あ、そっか。セディックお兄様は、兄様よりも年上……」

「うん。このメンバーでは一番年上だし、今日は引率だね」


 クスクスと笑っていたら、


「それじゃあ、象さんを見に行きましょう!」


 と、ケイトさんの掛け声で移動開始。


「……いいの? みんなでって、セディーに気を遣ってない?」

「えっと、ねえ様がお兄様のこと大好きなの、わたしもわかってますから」

「ふふっ、ありがとう、スピカ」


 (「っ……ね、) (ねえ様の笑顔が) (眩し過ぎる!」)


「? なにか言った?」

「い、いえっ、なんでもないです。行きましょう!」



 読んでくださり、ありがとうございました。


 ロイ「まだ未成年のスピカはともかく、俺は十九の男なんだが……?」(Ⅲ-ω-)


 スピカ「いっつもわたしを子供扱いする兄様が、セディックお兄様に子供扱いされてる! セディックお兄様すごい!」゜+.ヽ(*^▽^*)ノ.+゜

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