かってくださいねっ? セディー兄さま!
あれこれと準備を進めながら、子爵分領の経営もこなして――――
「・・・五本勝負でどうだ? 三本先取で勝ちとし、恨みっこ無しと行こうではないか」
「いいでしょう。受けて立ちます。では、始めましょうか。お祖父様」
と、いきなりお祖父様とセディーが、やたら真剣な顔でチェスの勝負を始めた。
「頑張ってください、セディック様!」
「かってくださいねっ? セディー兄さま!」
そして、なぜかセディーを応援するケイトさんとリヒャルト君。二人が一生懸命セディーを応援するので、お祖父様はちょっとやり難そうにしている。
「なんの勝負なんですか? あれ」
真剣なみんなの様子を余所に、一人優雅にお茶を飲んでいるおばあ様に質問。
「ああ、あれ? あれは……そうね、どっちがスピカちゃんの誕生日パーティーに参加するかを決める為の勝負、らしいわよ?」
「へ? えっと……?」
「ほら、スピカちゃんの誕生日と一緒に、向こうで婚約のお披露目もするって言うから。誰がネイトの付き添いをするかって話で、ヒューイとセディーの二人共、自分が行くんだって絶対に譲らなくて。でも、現侯爵と次期侯爵の二人が揃ってうちを空けるワケにはいかないでしょ? どっちか一人はお留守番してなきゃ」
「そうですね。ちなみにおばあ様は?」
「あら、わたしの実家に行くのに、わたしが留守番するワケないじゃない」
にっこりと微笑むおばあ様。
「そうですか」
おばあ様の参加は決定事項のようです。
「ええ。それで、セディーが勝ったら、ケイトさんも一緒に行けるじゃない? 婚約者として。そのついでに、リヒャルト君も」
「ああ、それで二人共セディーを応援してるんですか」
というか、隣国までの旅行って、セルビア伯爵の許可を求めるべきでは? ある意味、婚前旅行になると思うのですが・・・まぁ、おばあ様とリヒャルト君が同行する上、セディーのことだから、そういった心配はなさそうではありますが。
「ふふっ、ヒューイが押されてるわね」
そして、ケイトさんとリヒャルト君の応援もあってか、お祖父様がストレート負け。悔しそうな顔で、
「いいか、セディー。今回はわたしが留守番してやる。ありがたく思うんだな!」
と、言っていた。
「負け惜しみはかっこ悪いわよ、ヒューイ」
おばあ様にそう言われ、お祖父様は更にへこんでいた。
「ネイト~、僕がネイトの付き添いするからね♪」
「ぁ~……うん、よろしく」
「それじゃあ、セディーが行くことに決まったなら、ケイトさんのドレスを用意しなきゃ!」
と、おばあ様がまた張り切り出した。
「さあ、セディーもこっちいらっしゃい」
「ぁ、はい……」
長くなりそうだなぁ、という顔のセディー。まぁ、ケイトさんはセディーの婚約者だし。意匠合わせとかがね・・・ケイトさんの好きなように選べばいいと思います。
「リヒャルト君、わたしとなにかしましょうか?」
「はいっ!」
「よし、二人共わたしと遊ぼうではないか」
ケイトさんのドレスの相談をする間、お祖父様が遊んでくれるみたいです。
チラッとこっちを見たセディーに、ふふんという顔で笑って見せるのは大人げないと思いますが。
数時間後。
ケイトさんのドレスの相談が終わって、
「ふふっ、リヒャルトと旅行です♪」
「姉さまとりょこうです!」
ウキウキと笑い合うラブラブな姉弟。
「ドレスまで決めてから言うのもなんだけど、ケイトさん。隣国までは数日掛かるのだけど、セルビア伯爵からその許可は頂いているのかしら?」
二人を見て、ふと思い出したように問い掛けるおばあ様。
「ああ、そうでしたね。言われてみれば……世間的には、結婚前の男女が旅行をすると、婚前旅行だと取られると思うのですが。ケイトさんはいいんですか?」
と、こっちも今更ハッとしたようなセディー。
「うむ。二人はまだ嫁入り前の女性と未成年の子供だからな。泊まり掛けの旅行にはお父上の許可が必須となる。セルビア伯爵からの許可が得られなくば、同行はさせられないぞ?」
頷いたお祖父様が確認すると、
「大丈夫です! 父に反対されようとも、絶対に言い包めて、なにがなんでもリヒャルトと一緒にネイサン様の婚約お披露目に参加しますから、安心してください!」
と、ケイトさんは頼もしいような少し心配なようなことを言って・・・
翌日。
「父から許可を捥ぎ取って来ました!」
「お父さまからとってきました!」
本当に、クロシェン家でのパーティーに同行する許可をセルビア伯爵から捥ぎ取って来たようです。言い包められちゃいましたか、セルビア伯爵は。
さすがというか・・・なんかこう、若干ケイトさんに振り回されている感じのセルビア伯爵が目に浮かぶような気がしますねぇ。でもまぁ、ケイトさんとリヒャルト君が幸せそうなのが、一番ですよね!
「そう。それじゃあ宿は、ケイトさんとリヒャルト君が嫌じゃなければわたしも同じ部屋にお邪魔しようかしら?」
「そんな、お邪魔だなんて滅相もありません。ネヴィラ様がご一緒してくださるなら心強いですわ」
「ネヴィラおばあさまといっしょですか?」
「ええ、いいかしら?」
「はい!」
と、部屋割りが決まって行く。
「それじゃあ、ネイトは僕と一緒の部屋ね♪」
「わかった」
どきどきわくわくしながら、準備をして楽しみに過ごして――――
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読んでくださり、ありがとうございました。
スピカのところに行っていいとは言ったけど、実は誕生日兼婚約披露パーティーに行かないとは一言も言っていないセディー。(*`艸´)
そして、ケイトさんとリヒャルト君も、一緒に付いて行く気満々。ꉂ(ˊᗜˋ*)




