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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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ちょっと、子供っぽいとは思いませんか?

 ロイ視点。9


 ある日のこと。


 スタンが、ミリアリア嬢に婚約者が決まったと言ってへこんでいた。なんでも、相手は彫金や貴金属加工の職人の多い領地の子息らしい。


 宝石の鉱床の見付かった家としては、いい婚約だと思う。


「ああ、ミリィ……」


 めでたい話だというのに、溜め息を吐くスタン。


「なんだよ、婚約決まってよかったじゃねーか。なにが不満なんだ?」


 俺なんか、まだ婚約の話すら出ないってのに。


「それはそうなんだけどっ……ミリィが他の男と仲良くするなんてっ!」

「ふーん、相手がミリアリア嬢と仲良いなら、尚更よかったじゃねーか」

「……ロイの、馬鹿野郎~っ!?」


 なんて、理不尽に罵られた週末。


 うちに帰るなり、スピカはバタバタと自分の部屋へ向かった。


 笑顔で迎えた父上は、無視されて涙目だ。うん、スルーしといてやろう。


 そして、また部屋から荷物を抱えてバタバタと出て来たスピカがぐぬぬと唸っていた。


「す、スピカ? そんな不機嫌そうな顔をしてどうしたんだ? 父様にただいまは言ってくれないのかな?」


 スピカのこのぐぬぬな顔は、不機嫌なのとはまたちょっと違う顔だと思うんだがな?


「・・・これ、どう思います?」


 難しい顔で抱えた荷物をローテーブルに一つずつ並べ、低く言った。


「あ? なにが?」


 ぬいぐるみ、ハンカチ、リボン、髪飾り……などなど。って、もしかしてこれ、ネイサンからの贈り物か?


「これ、わたしへのプレゼントなんですけど」

「おう、よかったじゃねーか」


 ピンクやらオレンジ、パステルカラーでカラフル。如何にも女の子が好みそうな、可愛いって感じのぬいぐるみやらなにやら。


「ちょっと、子供っぽいとは思いませんか?」

「は?」

「スピカ? いきなりどうしたんだい?」

「・・・ミリア様が、婚約者様にネックレスを頂いたって。可愛いのに、大人っぽいデザインで・・・その、ちょっとうらやましいなぁって。それで、わたしのプレゼントは、子供っぽいのばっかりだなって思って」


 と、またぐぬぬな顔をするスピカ。


「・・・あのな、スピカ」

「? なんです? 兄様」

「お前さ。俺が、こういうの売ってる店行って、ぬいぐるみ選んでたらどう思う?」

「・・・ええっ!? 兄様、可愛いぬいぐるみが好きだったんですかっ!? これはわたしのだからあげないですよっ!?」

「アホ、んなワケあるか。例えだ例え。んで、お前がそう思うってことは、こういうの売ってる店に男が入るのは、ちっと勇気が要るワケだ」


 アイツの顔でこういうの売ってる店入ると、女だって思われそう。アイツ、スピカとお揃いのリボンを着けるのに抵抗がないってだけで、別に女の子が好むような可愛いものが好きってワケでもなかったし。


「? 勇気?」

「そ。んで、さっきお前が言ったように、男なのに可愛いもの好きだって誤解されっかもしれない。それでも、お前が喜ぶだろうとか、似合うかもっつって、アイツはお前にそれを選んだワケだ。で、だ。お前は、そのプレゼントが気に食わないのか?」


 むぅっと唸りながら、スピカはふるふると首を振る。


「もし、アイツから贈られて来るプレゼントが嫌ってんなら、趣味が合わねぇって言って、貰ったの全部、向こうに送り返してやるよ」

「だ、だめっ!? うさちゃんもにゃんこも、クマさんも抱っこして寝てるもん!」

「そうか、スピカは可愛いなぁ」


 うんうんと頷いてしみじみと呟き、優しい目で見下ろす父上に、


「っ!?!? 父様のばか~っ!?」


 スピカは顔を真っ赤にして、いそいそとプレゼントを抱えると部屋へ走って行った。


「す、スピカ~っ!?」

「あらあら、反抗期かしら」

「やー、反抗期っつーか……単に、友達が婚約者から大人っぽいアクセサリー? 贈られて、それが羨ましくなっただけだろ」


 ミリアリア嬢の婚約者は、貴金属加工産業の有名な領地の子息。で、スタンとこの領地は、何年か前に宝石の鉱脈が見付かった。と、なりゃ、プレゼントが宝石を使った貴金属になるのは当然のこと。


「成る程。そういうことだったの」

「でもさ、あのアホが子供っぽいのは間違ってねーし。大人っぽいものが羨ましいって時点で、ガキっぽい証拠っつーか」

「もう、ロイったら」

「それに、アイツから贈られて来てんのは、スピカにお似合いの物ばっかじゃん」


 プレゼントはスピカが好きそう、なもんばっかで。実際、アイツもお気に入りらしいし?


「ふふっ、ネイサン君は相変わらずスピカの好みを押さえているのね」


 にこにこと楽しげに笑う母上。そして、


「クッ……わたしだって、スピカの好きな物をわかってるぞ! ネイサンには負けん!」


 なぜか張り合う父上。


 ま、いいけど。アイツ、元気にしてっかな?


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 読んでくださり、ありがとうございました。


 実はケイトさんにアドバイスをもらうようになってからのネイサンの贈り物は、ちょっとケイトさんの趣味が入っていたりします。( *´艸`)

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