アイツら、俺に喧嘩売ってんのか?
ロイ視点。7
無事に中等部の騎士科を卒業して、高等部の経営科に入学した。
騎士科から経営科に上がる生徒は少々珍しい。まぁ、全くいないってワケでもないけど。数年に一人くらいの割合だという。
そんな風に少し目立ちながら・・・
「なんで騎士科の奴が……」「騎士科の脳筋が経営科の授業付いて来れんのかよ?」「無理無理、どうせまたすぐ騎士科に戻るって」
なんてひそひそクスクスしている連中がいた。
聴こえてんだよ、確りと。それともあれか? わざと聞かせてんのか? アイツら、俺に喧嘩売ってんのか?
けど、生憎、経営科中等部の修了課程は入学前に既に履修済み。んで、騎士科通いながら三年間、経営科高等部の勉強も予習してたっての。別に、悪い成績取って留年しなきゃそれでいいんだから、手前ぇらに笑われる謂われは無ぇし。
まぁ、騎士科の連中が大体脳筋なのは否定できねぇけどさ。
俺はそんな脳筋ってタイプでもねぇし・・・
「あれがあのクロシェン」「ああ、シスコンで有名な」「アイツ、妹守るために騎士科通ったんだって」「マジかよ」「紛うことなきシスコンだな」「いや、筋金入りだろ」「クロシェンのシスコン」「でも、アイツの妹そんな可愛い顔でもなかった気がするぞ?」「ほら、身内の贔屓目だろ」「ああ、シスコンだからな」
・・・よし、アイツら殴りに行こう。
「待て待て待て! 落ち着けってロイ!」
「あ? 止めんな、スタン」
軽~く拳での話し合いに行こうとしたら、ぐっと肩を掴まれて止められた。
「いやいやいや、転科直後から即行で問題起こしてどうするよ!」
「ちっ……命拾いしたな、あの野郎共」
「お前さ、普段あんま怒らないけど、なんでシスコンって言われたら怒るんだよ?」
「あ? そりゃ、俺がシスコンじゃねぇからだ」
なんでこうも、俺がシスコン呼ばわりされるのかマジでわからん!
「いや、シスコンと言われて怒ると、図星で怒ってると思われるから、あんまり怒らない方がいいと思うぞ?」
「・・・なら、俺にどうしろと?」
「我慢しとけ。で、根に持って、後で連中が悔しがるようなことで意趣返しでもしろ。うちのミリィなら、そう言う」
「わー……お前の妹、案外おっかねーのな」
普段はにこやかな顔してんのに。
「あれはあれで可愛いけどな」
「……俺じゃなくて、お前みたいなのがシスコンって言われるべきじゃねーの?」
「ふっ、現実はお前がシスコン呼ばわりされているけどな? ロイ」
「・・・よし、面貸せや」
「え? 嫌だけど」
この、俺を止めたスタンは、アホスピカと仲良くしてくれているミリアリア嬢の兄でスタン。スピカ経由で知り合って、同い年ということもあって意気投合した。
スタンは中等部から経営科で、今年は俺と同じクラス。なんでも、数年前に領地で宝石の鉱床が見付かったとかで、それ以来擦り寄って来る連中が多くて結構苦労しているらしい。
そのお陰か、実は兄妹で腹黒なのだろうか? ミリアリア嬢は、いつも穏やかな顔でスピカとにこにこ話しているイメージだったんだが。
「ほら、あんな連中なんか無視だ無視。な? 行こう、ロイ」
と、スタンに宥められて教室に向かうことにした。
経営科では、脳筋やシスコンと馬鹿にされること以外は特に問題無く過ごした。
で、俺を脳筋呼ばわりした連中よりもテストでいい点取って悔しがらせてやった。あと、シスコン呼ばわりする連中への意趣返しは検討中。どんな意趣返しをすればいいんだ?
いい方法が思い浮かばん。
「・・・連中も、シスコンやブラコン呼ばわりしてやりゃいいのか?」
「いや、連中をシスコン呼ばわりしたところで、お前には負けるって言われるのがオチだな」
「は?」
「だってほら、お前、小さい頃に身を呈して妹を助けただろ」
「・・・あのな、目の前で妹が、見るからに不審人物に連れてかれそうんなったら、普通は止めるだろ。お前はどうなんだよ、スタン」
「まぁ、僕も止めるだろうけど。でも、みんながみんな、お前みたいに動けるワケじゃないだろう? そういう意味では、お前は凄く讃えられているんだと思うよ」
「・・・」
シスコン呼ばわりは、かなり不本意ではあるけど、スピカを助けなければよかったとは、一度も思っていない。
仮令、お嬢さん達に、シスコン野郎とは結婚したくないと思われていても・・・
あんなアホでも、俺の妹だし。自分よりちっこい奴を守ってやるのが、アイツより先に生まれた兄貴の仕事だからな。
でも……微妙にムカついて来たから、今度スピカのおやつを勝手に食ってやろう。
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