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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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あーもうっ、泣くとブスんなるから泣くなってばっ!

 ロイ視点。4


 誤字直しました。ありがとうございました。


 ネイサンが隣国の家に帰ってから、翌日。


 ネイサンの姿が見えないと泣きまくったスピカは・・・めっちゃ大変なことになったっ!?


 一日中泣き続け、泣き過ぎて、泣きながら眠ったせいで・・・目がパンっパンに腫れて開かなくなり、声はがっさがさ。顔は真っ赤で、どうやら熱を出してしまったようだった。


 朝からバタバタとお医者さんを呼ぶと、泣き過ぎて体調を崩したとのこと。


 開かなくなった目や真っ赤になった顔を冷やして、喉が痛いのかごはんを食べたがらないスピカを宥めてどうにかごはんを食べさせて・・・と、母様が忙しなく動いて、父上はスピカを心配しておろおろ。


 そして、そんな状態なのにスピカは・・・ネイサンを探して泣く。まぁ、わんわん力一杯泣くと喉が痛むと気付いたのか、泣き方はしくしくめそめそに変わって。けれど、泣き続けた。


 熱出して、真っ赤に腫れた顔のスピカは・・・なんというか、ブスだ。我ながら酷い感想だとは思うけど、パンパンになった顔は、いつもより大分かわいくない。


「お前なー、もういい加減泣きやめっての」


 目元に濡れタオルを当てながらスピカに言うが、全く聞いてくれない。


「ぅうっ……ね゛ぇざば……」

「あんま泣き過ぎっとブスんなるからな!」


 と、スピカがめそめそしくしく泣く日々が続いて――――


 熱が下がると、スピカは家の中をうろつくようになった。毎日ネイサンの部屋を中心に、家のあちこちの部屋へ入り、クローゼットを開け、ベッドのシーツを引き剥がし、ベッドの中や下を覗き、ネイサンを呼ぶ。


「あのなー、そんな探してもアイツはうちにいないんだってば」


 呆れながらそう言っても、スピカはいやいやと首を振って全く聞かない。


 一人で庭に出て、


「ねえさまー! どこー?」


 と、繁みやら木の上を探す。


 庭でもネイサンが見付からなくて、しょんぼりしてめそめそする。


「あーもうっ、泣くとブスんなるから泣くなってばっ!」


 俺がそう言うからか、スピカが泣くのは段々と減って行った。


 そして、スピカがネイサンを探してあんまり泣かなくなった頃――――


 スピカも気晴らしに友達を作った方がいいんじゃないか? となって、子供が多く参加するお茶会に参加することになった。


 ぶっちゃけ、スピカと年齢の近いちびっこの多いお茶会に気乗りはしなかった。


 でも、スピカはいきなり泣き出すから、お茶会に参加する他の子の迷惑にならないようにスピカを見てほしいと頼まれて、俺もちびっこの多いお茶会に参加することになった。


 このお茶会でスピカは――――やらかしやがったっ!?


 スピカが同い年くらいの女の子と仲良く話してると思って安心していたら、


「あの、スピカちゃんのお兄さまですか?」


 さっきまでスピカと話していた子が、俺に声を掛けて来た。


「ああ、そうだけど、どうしたんだ? スピカが迷惑を掛けたか?」

「いえ、スピカちゃんが、ねえさまをさがすっておにわにでていっちゃいました。でも、きょうのさんかはスピカちゃんとお兄さまのお二人でしたよね?」

「っ!! あのバカがっ……教えてくれてありがとな! スピカ探して来る!」


 と、俺も庭に向かった。


 庭に出てすぐスピカは見付かった。見知らぬ男に手を引かれて。


「お姉様を探しているの? じゃあ、あっちに行こうか」


 ニヤニヤした顔でスピカの手を引いて外に向かおうとする男に、


「そこの手前ぇっ、俺の妹どこ連れてくつもりだこの野郎っ!!」


 ダッシュで近付き、その背中に飛び蹴りをかました。


「ぶげぇっ!?」


 ドン! と俯せに倒れた男の手をスピカから引き剥がし、


「おらっ、帰るぞ!」


 さっと抱っこしてうちに帰ることにした。


「ねえさまはっ? にいさまっ、あのひと、ねえさまさがしてくれるって!」


 ネイサンを探してくれると言われたらしく、腕の中でじたばたと暴れて男の方へ向かおうとするスピカにムカついた。


「このバカがっ!? あの野郎がネイサンのこと知ってるワケないだろっ!? ネイサンはもうここにはいないんだってのっ!? いい加減わかれよバカっ!」

「ううっ……にいさまのばか~っ!?」


 と、馬車の中で泣き出すスピカに、俺の方が泣きたくなった。


 お茶会は、スピカが誘拐され掛けて散々。


 スピカがいなくなったことを教えてくれた令嬢の家にお礼をして。主催の家には、お茶会をなにも言わずに途中で抜けて帰ったことへのお詫びをして・・・


 更に、後日。


 クロシェン伯爵家の長男にいきなり後ろから飛び蹴りを食らって怪我をした、慰謝料を払え……的な手紙が届いたらしい。


 手紙の主は、評判の良くない男爵家の嫡男。父上は怒って、『法廷で争いましょう』という返事を出したそうだ。


 すると、相手の親から丁寧なお詫びの手紙と贈り物が届いた……らしい。父上が怒って全部返したって話だから、なにかは知らんけど。


 『佳人薄命』や『薄幸の美人』なうちの事情を知る人達や、うちに負い目のある貴族家が『クロシェン家なら仕方ない』という風に納得してくれたようで、うちはなにも悪くないという風に思われているようだ。


 父上はめちゃくちゃ心配して、それならいっそのことスピカを婚約させるか……と言って、ネイサンにスピカとの婚約を打診したらしい。


 ネイサンがOKして、ネイサンはスピカと婚約することになった。でも、ネイサンと婚約したスピカは、なぜか喜んでいない。


 ネイサン本人がいないから、すねているのかもしれない。


 最近はちょっぴり父上に塩対応だ。まぁ、ネイサンを隣国に帰したから仕方ないと思って父上は泣く泣くあきらめているようだが。


 そんなことがあって、俺は――――


 『妹を守った兄』、『妹を大事にする兄』なんて言われるようになった。


 まぁ、そのくらいならまだいい。


 だが、それがいつの間にか・・・『クロシェンの長男はシスコンだ』という評判に変わっているのはどういうことなんだっ!!


 納得いかんわっ!! 


 あれか? スピカがアホやらかしたせいで、出掛けるときにスピカを見張っていたせいか? 「あんなに妹さんをじっと見て……よっぽど心配なのね」とか、なまあたたかい目で見られてるけどっ!! だって、またやらかしたら困るじゃねぇかっ!?


 それともあれかっ? 父上の命令でスピカに変な虫が付かないようにって、アイツをエスコートさせられているからかっ!?


 シスコンっつーのは、スピカに引っ付かれても嫌な顔一つしなかった……ネイサンみたいな奴のことを言うんだ。


 だからっ……俺はシスコンじゃねぇ! と、声を大にして言いたい!


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 読んでくださり、ありがとうございました。


 ロイは口はちょっと悪いけど、ちゃんと良いお兄ちゃんしてます。ꉂ(ˊᗜˋ*)

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