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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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ああもう、エリオットは可愛い奴だなっ……


「「もちろんです!」」


 わたしは了承していないというのに、勝手に話が進んでいる!


「では、早速踊って頂きましょう!」

「行きましょうハウウェル先輩!」

「や、行かないから。わたしは今、ケイトさんの代わりにリヒャルト君の保護者なんだよ」

「ハッ! そっ、そうでした!」

「そういうワケなので、お断りします」

「ぼくならだいじょうぶです! テッドにーちゃんと手をつないでますから、ネイト兄さまはエル兄さまといってきてください!」


 キリっとした顔でテッドの手を握りながら、わたしを見上げるリヒャルト君。


 リヒャルト君までわたしに踊って来いとっ!?


「え? あ、俺ってば、責任重大?」

「リール兄さまもいるのであんしんです」


 にこりとリールを見上げるリヒャルト君。


「……いや、俺は不安しかないぞ」

「大丈夫です。ハウウェル様とフィールズ様が不在の間、わたくしもリヒャルト様に付いておりますから!」

「そこまでしてわたしを踊らせたいんですか……」

「当然です! 今回を逃せば、これから先ハウウェル様が踊られるところを拝見する機会など、そうそう無いではありませんか!」

「・・・」


 ああ、うちやフィールズ公爵邸ではちょこちょこ踊る機会があって忘れてたけど、わたしが公の場で踊る予定は(しばら)く無い。スピカは隣国にいるし。ケイトさんはセディーの婚約者。セディーの弟であるわたしと公の場で何度も踊るのは、あまり宜しくない。


 確かに。今日を逃せば……公の場で踊るのは、短くても数年後とか? に、なるかもしれない。それを考えれば、彼女が必死になるのもわかる気がした。


 まぁ、エリオットと踊りたいかは別だけど。


「わかりました。では、一回だけ。それを見たら、満足してください。二度目はありませんから。というか、君は君で、保護者達の前で男と踊るの気にしないワケ?」

「ふぇ? なにがですか? 折角(せっかく)ハウウェル先輩と全力で踊れるんですよ? 楽しみです!」

「エル兄さまはネイト兄さまがだいすきですもんね!」

「はい!」

「ああもう、エリオットは可愛い奴だなっ……と、ハウウェルがそう思ってる!」

「そんなっ、照れますよっ……」


 テッドのアホな発言に、テレテレと頬を赤くしてわたしを見上げるエリオット。


「……なに勝手なこと言ってんの?」

「……そんなことは思っていなさそうだな」

「ええっ!?」

「お兄さまたちはなかよしさんですね♪」

「はぁ……もう、アホ言ってないで行くよ」

「はい!」


 と、異様にウキウキしているエリオットと踊ることになった。


 後でまた、おばあ様に笑われそうだなぁ。


 ざわざわと保護者達から注目を浴びながらフロアへ移動し、エリオットとホールドを組む。生徒達からは、また面白いことをやってる、という期待と好奇の視線。黄色い悲鳴がした。


 なんかこう、異様に熱い視線が送られているような・・・? 気のせいかな?


「思いっ切り楽しみましょう!」

「まぁ、ヤケクソでいいなら」


 と、開き直ってステップを踏み出す。


「ふふっ、なにげに、僕が女の子のパートでハウウェル先輩と踊るのは初めてですね♪」

「ああ、そう言えば……そうだね」


 エリオットとは何度か踊っているけど、考えてみればセディーのダンスレッスンに付き合うときにわたしが女性パートで踊ってリードされた。そして、後はお互いにセディー、テッド、レザンのパートナーとして女性パートを踊っていたから、わたしがエリオットをリードするのはこれが初めてとなる。


 まぁ、なんだ。ぶっちゃけ、レイラ嬢と踊るよりも踊り易いかも。


 男同士だからか、女性に気を遣いながら踊るよりもぞんざいな扱いをしても気が咎めないし。組手のときにはいつもぶん投げているということもあり、ターンのときに思いっ切り振り回しても、エリオットは楽しげに付いて来る。


 おばあ様やケイトさん、偶に踊る他の女性を相手にするときよりも大股で大胆なステップ。ターンで遅れて翻る髪の毛。にこにこと笑顔のエリオット。体力配分も考えないで、全力を出す。


 そうやって、一曲を踊り切ると――――


 カツン、とヒールが鳴り、パチパチと拍手をしながらこちらへ向かって来るフロアクイーンの彼女。


「ブラボーっ!! 大胆で思い切った力強いステップ! されど荒々しさは感じられず、鋭くも気品を忘れない優雅さを兼ね備えた素晴らしいワルツでしたわ!」


 その一言の後、盛大な拍手の音が響いた。


「さすが、ハウウェル様とフィールズ様! やはり、そのように麗しい容姿をされていてもハウウェル様は殿方なのですね! 女性パート(パートナー)として踊っているよりも、男性パート(リード)をしているときの方が輝いていましてよ!」


 いや、わたしは元から男なんですけどね?


「まぁ、前回のあれがイレギュラーなだけで、基本的にわたしは普段は男性パートを踊るのが当たり前ですからね」


 嬉々として女性パートに名乗り出るエリオットは、どうか知らないけど。


「ふっ、今回でそう言った固定概念も覆ることでしょう! お二人のワルツはそのくらいに素晴らしいダンスでしたもの! けれど、わたくしも負けませんことよ!」


 読んでくださり、ありがとうございました。


 サブタイはテッドのセリフ。ꉂ(ˊᗜˋ*)

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