おにーさんとフィールズの交友関係でお腹いっぱい……
誤字直しました。ありがとうございました。
「……珍しく、テッドがまともなことを言っているな」
「そこっ、ウルサいぞっ」
「ああ、その辺りは大丈夫だよ。僕、劇団とかのスポンサーやってるから」
「え? スポンサー? セディーが?」
「ふふっ、驚いた? ネイト」
「うん。なんで劇団?」
「同級生や後輩に、俳優志望の子が複数いてね。で、僕の他にも、演劇や歌劇好きな人に出資者を募って、劇団を立ち上げちゃった。その劇団が少し前から、漸く公演できるまで漕ぎ着けてね」
「ええっ!? おにーさんってば、案外アグレッシブっ?」
「ん~……僕がって言うよりは、僕達にお金を出させた先輩がアグレッシブかな? 貴族の二男二女以下の、才能のある子達が平民の劇団に入って潰されて行く姿や、逆に才能はあっても貴族の不興を買って潰される平民の劇団を見てられないって。だったら、自分達で作った方が早いって言って、本当に作っちゃったんだよねぇ。元貴族として育った人や貴族に近しい人を集めた劇団を。先輩がね。僕は、そのスポンサーのうちの一人」
「セディーの先輩って?」
セディーが自分の交友関係の話をしてくれるのは珍しい。かなり興味あるかも。
「今度、新しい伯爵位を貰う人」
「へっ? それって・・・第三、王子殿下」
「うん。あの人、僕の二つ上の先輩なんだけど、結構強引な人なんだよねぇ。高等部一年のとき生徒会に誘われて、嫌ですって断ったら、無茶振りされるようになっちゃってね。それから、偶に使われてるんだ」
「おにーさんってば、リアル王子様とお知り合いだったっ!?」
「ふふっ、びっくりした?」
驚愕するテッドに、コクコクと無言で頷くリールとレザン。
「ふぇ~、第三王子殿下ですか~。確かに、あの方は芸事がお好きな方ですけど。セディック様、側近になるのお断りしちゃったんですね~。良かったんですか?」
「ええっ!?」
「まぁ、殿下が在学中はうちも結構ごた付いていたからね。王族の側近なんてそんなめんどくさ……じゃなくて、そういう重要な役目は、僕には荷が重いからね。王族には特に興味も無かったし」
ぁ~……五年以上前のことか。そりゃ、騎士学校に入れられたわたしが知るワケない。そして、実際に面倒だったのだろう。母とか、セディーが王子殿下の側近に選ばれたと知ったら……なんかもう、うん。マジ面倒なことになっていただろう。セディーは断っていて正解かも。
でも、まさか面倒で断ったと言っていた生徒会入りが、王族直々のお誘いだなんて思ってもみなかったよ……しかも、興味無くて面倒だから、なんて理由で。
セディー、本当にイイ性格してるなぁ。
・・・まさか、『面倒なんで嫌です』と直で言って断ったりしてない、よね?
なんか心配になって……あ、でも、生徒会入りを断ったから逆に第三王子殿下に使われているのかな?
「や、おにーさん今絶対めんどくさいからって言い掛けましたよねっ!? あと王子様に興味無いって!」
「ふふっ、気のせいじゃないかな? それに、エリオット君だって第三王子殿下とは面識があるみたいだよ?」
「あ、はいっ。次期公爵としての教育の一環で、お祖父様と一緒に王室主催のお茶会に参加したことがありますから。そのときに、第三王子殿下と少しお話をさせて頂きました!」
「ヤだ! 忘れてたけどフィールズもかなりって言うか、めっちゃ良いとこの子だったっ!!」
「あの人、芸事が好きで政には関わりたくないって言って、今度王族を抜けて新しい伯爵家を興すことになったんだよねぇ。権力中枢から出た人なら、付き合ってもいいかなぁ、って」
「なんかもう、おにーさんとフィールズの交友関係でお腹いっぱい……」
「えっと、僕は第三王子殿下とは年が離れているので、交友という程は親しくないですよ?」
「やー、実際に王子様と話したことあるってのがもう、庶民からすりゃすっげーことだから」
と、なんかすごいセディーの交友関係に驚きながら昼食を済ませた。
お昼、なに食べたかちょっと思い出せない。
午後にはケイトさんとリヒャルト君が来て、ケイトさんはおばあ様と。リヒャルト君はわたし達と過ごした。
そして観劇にお誘いすると、
「いきたいです!」
というリヒャルト君の返事で、ケイトさんも参加決定。
アクション多めの、戦記ものの劇を見ることに決まった。
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数日後。
今日は、観劇の日だ。
「姉さま、セディー兄さまもネイト兄さまもはやくはやく!」
そわそわと落ち着きなく馬車へ向かうリヒャルト君。
「ふふっ、そんなに急いでも、劇が始まる時間は変わりませんよ」
「開幕時間は変わりませんが、おやつを選ぶ時間に余裕は持てると思いますっ」
「まあ、フィールズ様ったら」
「おやつえらびはだいじです! 姉さまっ、はやくいきましょう!」
「ふふっ」
と、セディーとケイトさん。リヒャルト君とわたしの四人。そしてアホ共という組で分けた馬車に乗って劇場へ。
セディーのスポンサー権限と大人数ということで、二階のボックス席へ案内されました。
建国史を、軍記仕立てで劇にした内容。アクションが多めで、殺陣シーンのときには大きなどよめきが起こる。
ぎゅっと小さな拳を握り、主人公を応援するリヒャルト君。劇よりもそんなリヒャルト君を見て、慈愛の眼差しを注いでいるケイトさん。そして、二人へ優しい視線を送るセディー。
いい雰囲気ではあるんだよね。
「うわっ!」「すっげー!」「やるな!」「かっこいいですね!」「ふむ、この戦略は少々どうかと思うが……」「それは、さすがに無策、無謀と言えるのではないか?」「……お前達、もう少し静かに見られないのか」
なんて、ウルサい声がしなければ、なんだけどね?
そして、劇が終幕。
「たのしかったです!」
「本日はお誘いありがとうございました」
と、ケイトさんとリヒャルト君をセルビア家まで送って帰宅。
興奮冷めやらぬまま、「主人公がかっこよかった」「いや、悪役にも美学が……」「あのとき、お互いに手を組んでいれば歴史は変わっていましたね!」などなど、アホ共が話す。
「ふふっ、楽しんでもらえたならなによりだよ」
「はい」
「おにーさん、ありがとうございました!」
「うん。それじゃあ、今度はさっきの舞台の原作になった本を読んでみようか?」
にっこりとセディーが、テッドとレザンへ本を差し出した。
「へ?」
「うん?」
「好きなキャラを見付けて、その人を中心にして考えながら読んでみると、面白いよ」
と、二人にも読書をお勧め。どうやら、今日の観劇は二人に歴史へ興味を持たせる一環だったようだ。
それから、読書と勉強をして、合間に観劇へ。
軍記もの、ミステリーもの、恋愛もの、ホラーもの、オペラ。そして、観劇した劇中で使用されていた音楽のコンサートなどなど、短期間で結構な観劇をしたと思う。
ちなみに、ホラーやちょっと大人向けな劇のとき、夕方や夜の時間帯の観劇にはケイトさんとリヒャルト君は欠席です。
知識を増やして、リヒャルト君と過ごして――――
休暇の後半に入ると、セディーの作ったテストを受けた。何度か挑戦して合格をもらうと、領地経営の書類の読み方や書式を教わることに。
セディーとライアンさんに連れられて裁判所に見学しに行ったり、裁判の傍聴をしたりもした。
「本当は、こういうところとはあんまり縁が無い方がいいんだけどね? でも、知ってると将来役に立つと思うから」
と、苦笑しながらもガッツリ社会見学的。リールが静かに目を輝かせていたのが印象的だ。
そして、あっという間に休暇期間が終了。
勉強はかなりしたと思うけど、同じくらい楽しかったかも。
後期授業……最終学年最後の授業が始まる。
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読んでくださり、ありがとうございました。
王族と在学被ってたら、セディーが目を付けられないワケないよねー、的な? でも、めんどいとお断りしました。セディーは王族にもノーと言えるブラコン。(笑)
セディー「僕が王族の側近入りをお断した理由? 本音で? うん、いいよ」(・∀・)
「だってほら、王族の側近になったら、ずっとその人に侍らないといけないでしょ。騎士学校から年に数回帰って来るネイトと過ごせる貴重な時間を、なんで興味も無い人に使わないといけないの? って思って」(*´∇`*)
ネイサン「ええっ……それ、大丈夫なの?」( ̄□ ̄;)!!
セディー「ふふっ、全然大丈夫だよ」(◜◡◝)




