ハウウェルの忘れもん預かってるんですよ。
今年の長期休暇の予定は、まだ決めていない。
一応、ゆったりしたスケジュールになったセディーと過ごす時間を増やすつもりだけど――――
なんて、思ってたんだけどな?
「ネイト兄さまっ、ながいおやすみになったんですよね! おけいこおねがいします!」
と、ケイトさんと一緒にやって来たリヒャルト君に剣を教えることに。
のんびりと剣を教えていたら、
「ハウウェル君! あーそーぼっ!!」
と、またもや押し掛けて来やがったアホ共。
「恥ずかしいからそれいい加減やめろっ!!」
「え~? 楽しいからヤだ!」
「君らがそれやると、屋敷中で何日も笑われるんだからね!」
「……なんか、すまん」
「はっはっは、素敵じゃね? 笑顔溢れる屋敷! ってさ?」
「テッド君は相変わらずだねぇ」
「お邪魔します、セディック様」
「ふふっ、いらっしゃい」
「こんにちは、リヒャルト君」
「こんにちはっ、お兄さまたち!」
「おー、元気してたか? リヒャルト」
「はいっ!」
「っしゃ、また一緒に遊ぼーな?」
わしゃわしゃとリヒャルト君の頭を撫でるテッド。
「はいっ、テッドにーちゃん」
と、アホ共がうちに居座ることになった。
そして、うちの中に入ると――――
「あ、そうだ。おにーさん、おにーさん」
「ん? なに?」
「ネイトの忘……」
「?」
「おばあ様に? ちょっと待ってね? 多分、そろそろ休憩だと思うから」
と、なにやらセディーとこそこそ話すテッド。
「? どうかしたの?」
「はっはっは、滞在するからハウウェルのおばあ様に挨拶したいなーって」
「? そう・・・滞在、ね。また本格的に居座るつもりなんだ、君達」
「よろしくお願いしまーす」
ぞろぞろと応接間に行くと、
「あら、いらっしゃい。今年も遊びに来てくれたのね」
にこやかにアホ共を迎えるおばあ様。
「ふふっ、また門の前で騒いでいたのかしら?」
「ええ、毎度ながら、面白い子達ですよねぇ」
クスクス笑い合うおばあ様とセディー。
「姉さま、ただいまです!」
「お帰りなさい、リヒャルト。皆さんもお久し振りです」
「ぶ、部長! お久しぶりです!」
「ふふっ、卒業して何ヶ月も経っていますからね。わたしはもう部長ではありませんよ」
「あ、そうでしたね」
「セルビア嬢、と言うべきですか」
「そうですね。ケイトと名前で呼んでもいいですよ」
「部長……じゃなくて、け、ケイ」
「はい、ケイト様」
「くっ、フィールズめ!」
「ふぇ? 僕がなにか?」
「なんでもないわっ」
「そう言えば、テッド君がおばあ様に見せたい物があるそうですよ。ね、テッド君」
「あ、そうですそうです」
わちゃわちゃと挨拶を交わし、セディーに言われたテッドがニヤァとわたしの方へ……なんだか悪い笑みを向け、
「ジャッジャーン! ハウウェルの忘れ物のトロフィーを持って来ましたー!」
見覚えのあるトロフィーを取り出した。
「っ!? テッドっ!!」
「ネイト?」
「ネイサン様?」
「どうしたの? ネイト」
きょとんと、事情を知らない三人が声を荒げたわたしを見やる。
「ふっふっふっ、なんとこのトロフィーは」
「ハウウェル先輩が交流会で表彰されたときのトロフィーですね!」
「交流会で表彰・・・ハッ! もしかしてネイト、ダンスのっ?」
「まあっ、凄いわネイト。もう、どうしてそんな大事なこと教えてくれなかったの。みんなでお祝いしなきゃ」
「お、お祝いっ!?」
「当然でしょ? なんでそんなに驚くの?」
「あら、そのトロフィーは……」
「『フロアクイーン』賞のトロフィーです! 凄い迫力だったんですよ! ハウウェル先輩とレザン先輩のワルツ!」
暴露しやがったっ!?
「?」
「えっと……? ネイトと、レザン君のカップル?」
「はい!」
「ぷっ……あはははっ、ね、ネイトとレザン君のカップルっ!? 随分とまあ、思い切ったことをして来たのねあなた達!」
吹き出し、笑いが止まらないようでクスクスと笑い続けているおばあ様。
「っ!? ネイトのダンスっ……それも、フロアクイーンに選ばれるくらいに美しいダンスを見逃すなんてっ!? 僕があと四年遅く生まれていれば見逃さずに済んだものをっ……」
よくわからないことを呟いて、なんだか悔しそうに顔を歪めるセディー。
そして、あと四年遅く生まれてたらセディーはわたしの弟になってるよね?
「・・・もしかして、女子生徒避けでしょうか? ネイサン様」
考えるようにして口を開くケイトさん。
「女子生徒避け……? まあっ、ふふっ……男の子同士で踊っていたらっ、そりゃあ女の子達は近寄り難いでしょうねぇ……ふふっ」
まだ笑えるらしい。目許を拭うおばあ様。涙が出る程おかしいのか……
「? フロアクイーンってなんですか?」
純真な瞳がわたしを見上げる。
「そ、それは……」
「フロアクイーンというのは、ダンスフロアで一番輝いていた女性パート……女の子が踊るパートを踊っていた人に贈られる賞のことです!」
ふふんと胸を張って、リヒャルト君にわかり易く説明してくれやがるエリオット。
「やー、去年のフィールズはフロアクイーンに選ばれなかったのになー」
「え? エリオット君、去年女性パートを踊ったの? 交流会のフロアで?」
「はいっ、去年はメルン先輩と踊りました!」
「あらあら、ちゃんと前例があったのねぇ。ふふっ、よかったわねぇ? ぷふっ……」
「ネイト兄さまもエル兄さまも、おんなの子のパートをおどれるんですか?」
「はい、僕もハウウェル先輩も、男の子のパートも女の子のパートも両方完璧に踊れます!」
「すごいです!」
「去年は、部長……セルビア様にダンスを申し込もうとしたら、なぜかフィールズと踊る羽目になったんすよ」
「ふぅん……ケイトさんにダンスを申し込もうと、ね?」
読んでくださり、ありがとうございました。
セディー「ちなみに、どうして去年エリオット君は『フロアクイーン』に選ばれなかったの? エリオット君、女性パートも踊るの上手いよね?」(´・ω・`)?
エリオット「去年僕が『フロアクイーン』に選ばれなかったのは、メルン先輩があんまり上手くなかったからだって聞きました」(*>∀<*)
リール「……成る程、去年はテッドが足手まといだったということか」┐( ̄ヘ ̄)┌
テッド「ふっ……つまり俺のお陰で、ハウウェルが男子初の『フロアクイーン』になったっつーワケだな!」Ψ(`∀´)Ψケケケ
ネイサン「は?」( º言º)




