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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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セディックに、満足か? と、問うも・・・

 おとん視点。7


 誤字直しました。ありがとうございました。


 メラリアと二人で暮らしていて――――


 セディックから突然連絡があった。用事があるので時間を作ってほしい、と。


 そして、セディックはネイサンと二人でうちにやって来た。


 久々に見たネイサンは・・・嫌になるくらい、若い頃の母とそっくりだった。


 無論、男女の差は多少あるにせよ、雰囲気や意志の強さが……その顔と、薄黄緑の瞳とに(あらわ)れている。見たくなくて、目を逸らす。


 薄く笑うセディックが切り出したのは、思いも寄らぬ話だった。


 自分が侯爵位を継ぐには、お祖父様()おばあ様()に可愛がられているネイサンをこの家にいさせるワケにはいかない。なので、子爵家からのネイサンの除籍を願うとのこと。


 なんだ、やはりセディックもネイサンのことが目障りになったのか。この二人は大きくなるにつれ、仲が悪くなったのだろう。


 所詮、兄弟というのはこんなもの。自分より優れた容姿、能力を持つ者が自分よりも他者に好かれている様を見るのは、気分が悪くなって当然だからな。


 ああ、面白い! いい気味だ!


 そう思いながら、除籍届にサインをする。


 ネイサンがペンを取り、サインを終えた瞬間、縁が切れたと思わず笑いが込み上げた。


 縁が切れた。これでもう、親子じゃない!


 ネイサンがどこで野垂れ死のうが、もう僕には関係ない!


「ありがとうございました」


 と、微笑むセディック。


 ああ、中身はフィオレに似たと思っていたが、やはりセディックもこちら側……


 と、そう思ったのは一瞬。


 セディックは冷たく僕達を馬鹿にすると、僕に別の書類を差し出した。


 それは、信じられないもの。


 なぜ、僕の侯爵家からの除籍届がっ!?


 意味がわからない。だって、僕が侯爵家を継ぐんだっ!!


 優秀で、男じゃないことを惜しまれたフィオレじゃなくて、この僕がっ!!


 だというのにっ・・・侯爵位を継ぐのは、僕をすっ飛ばしてセディックだとっ!?


 セディックのような若造に、侯爵が継げるワケがない!


 正当な嫡男は僕だっ!?


 なのに、なのに、なのにっ・・・


 僕が使えない? そんなことはっ・・・


 メラリアがセディックに声を上げる。


 返るのは、セディックの蔑んだような冷たい視線と暴言。


 メラリアが泣き出し、僕へ縋る。


 それすらも茶番だと切って捨てるセディック。


 思わず激昂し、セディックを殴ろうとしたとき、目の前に突き付けられたのは鞘に入ったままの剣だった。


 冷ややかなペリドットの瞳が、真っ直ぐに僕を見る。母と同じ、呆れたという風な表情。


 やめろっ、そんな顔で僕を見るなっ!?


 セディックの護衛だと、僕が騎士学校へ入れたお陰で警護の真似事ができるのだと。僕へと暴力を振るうことも躊躇わないと、その瞳が語る。


 親に剣を向けるなど、許されることじゃ……


 なのに、除籍されたから他人だと?


 そして、セディックに『ネイサンへの殺人未遂容疑』を仄めかされ――――


 言い訳も、できなくなった。


 確かに、客観的に見ると、僕達の言動にはネイサンに対する悪意……いや、未必の故意の殺意が疑われても仕方ない言動ばかりで――――


 幾ら母と姉に似たネイサンが嫌いでも、貴族子息に対する『殺人未遂』だ。嫡男じゃないからと言い逃れは、できない。セディックが揃えたという資料だけじゃない。国が調査に乗り出す。


 訴えられて裁判になったら、僕達は負ける。


 そうすれば・・・僕とメラリアは、犯罪者となってしまう。


 慌ててネイサンにセディックを止めるよう言ったが、なぜ? と問い返された。普通なら、親が犯罪者にされるのを止めるだろうっ!


「誰がお前達を育ててやったと思っているっ!?」


 そう言った言葉は、育てられた覚えがない、親子だなんて思ったことはない、親らしいことをされたことが無い。単に血の繋がっただけの迷惑な他人、早く縁を切れ、と。そう返された。


 愕然として――――


 ああ……やはり、この二人は僕とメラリアのことを恨んでいるんだ。だから、こんな酷い仕打ちをするんだ、と。そう思った。


 僕は、セディックに言われるまま除籍届にサインした。屈辱感に塗れながら・・・


 除籍届を書かされるのだって屈辱だったのに――――


 本当の屈辱と絶望は、ネイサンを先に出て行かせてから始まった。


 ネイサンが見えなくなり、腹黒さを一切隠さなくなったセディックは・・・


 先程よりも冷え切った目で僕達を目障りだと言い、ネイサンの視界に入らないように実質上の幽閉か、平民に落とされた上で他国へ行くかを迫った。


 僕達をネイサンの視界に入れるくらいなら、この家で飼い殺しにする程度は許してやる、と。


 思わず怒鳴ると、銃を携帯していると脅す。


 これは、本当にセディックなのか?


 執事にセディックをなんとかしろと視線を送ったが、


「セディック様の仰る通りに」


 と、返された。


 それは、既に僕よりも、セディックの方が上位の命令者だということ。


 メラリアがセディックに縋るも、早く決めろと返される。心底から鬱陶しいという表情で。


 セディックに、満足か? と、問うも・・・


「いいえ? 僕としては、然程(さほど)満足とは言えませんが・・・一つ言うとしたら、ネイトと僕の婚約者に感謝することですね。彼らは、仮令(たとえ)自分達が理不尽な目に遭ったとしても、他人の不幸を願うようなことはしない。眩しいくらいに真っ直ぐだ。あなた達を目障りだと思っている僕と違って、ね」


 なにを言っている? ここまでしておいて……ネイサンに感謝? 意味がわからない。


「これはあなた達の自業自得なので、あまり変なこと(・・・・)は考えないように。ああ、そうだ。ついでだから僕達に弟妹ができなかった理由、教えてあげますね? あなた達を親に持つ子供が増えるのは可哀想だと思ったので、避妊薬を盛らせていました。もう十年以上になるので、多分これからも弟妹ができることはないと思います」


「なんだとっ!?」


「お祖父様達にも内緒で、僕の独断なんですけどね。あなた達の酷い言動を見て、お祖父様とおばあ様の負担を増やしたくないと言ったら、使用人達も喜んで協力してくれましたよ?」


 執事を見やるも、気まずそうなその顔が、事実であることを物語った。


「お、お前は狂ってるっ!?」


 そう言った瞬間、おかしそうに笑い出すセディック。


「ふふっ、あはははっ!」

「なにがおかしいっ!?」

「いやですねぇ。他ならぬあなたが、それを言いますか? あなた達みたいに性根の腐った馬鹿共と長らく暮らしていたこの僕が、まともに育つとでも? あなた達のその、愚かな言動を見て育ったのに? そんな筈、ないじゃないですか」


 いつからだ? いつからセディックが、こんな風に狂っていたんだっ!?


「もし、僕が多少はまともに見えるのだとしたら、それはネイトやお祖父様とおばあ様のお陰ですよ。今でも……後腐れなく処理(・・)したい気持ちはありますけど。僕はネイトや婚約者、その弟に顔向けできなくなるようなことは、あまりしたくないので」


 そう言ったときだけ、冷ややかだったセディックの表情がほんの少し緩む。ネイサンのことを語るときだけ。


「でも……必要に迫られたら、仕方ないですよね?」


 次の瞬間、ぞっとするような笑顔に変わった。紛れも無く、本気の表情。


 それは――――いつでも、僕達を殺すことができるという宣言に(ほか)ならない。


「では、さようなら。もう二度と会うことは……ああ、いえ。どちらかとは、あと一度だけ(・・・・)会うことになるかもしれませんねぇ」

「セディー? お母様に会いに来てくれるの?」


 セディックのこの言葉に、優しさを感じる? 今までの話を全く理解していないメラリア。


 頭が悪いにも程があるだろうっ!?


「埋葬くらいはしてあげますので。どちらかが亡くなったときに、片方が生きていれば顔を合わせることもあるでしょうね。二人一編に(二度と)死んでくれれば(顔を合わさない方が)手間は省けるんですけどね? では、失礼します。呉々も、ネイトの視界に入らないように。これからは、お祖父様と僕の手を煩わせるようなことはしないでくださいね?」


 たった一度、顔を合わせるのも手間だから、二人一編に死ね、と。そう、僕とメラリアに言ってセディックは出て行った。


「は、はは……」


 とんだ化け物に育ったものだ・・・


 ネイサンは無論のことだが、セディックの、ずっと僕達に隠していたあの苛烈な性格はきっと、母譲りで・・・


 ああ、結局は・・・セディックも、僕達とはまるで似ていなかったということか。


 二人共、向こう側の存在。


 継ぐ筈だった侯爵位も、ハウウェル家当主の座も、それらを継がせる筈だった息子に、全て奪われて・・・


 いや、全てが僕達の手から離れて行った。


 顔を覆って泣くメラリアを抱き寄せる。僕に残ったのは、メラリアとこの家だけだから・・・


 ネヴィラ・ハウウェルを母に持ち、フィオレ・ハウウェルの弟として生まれた僕は、やはり不幸だった。母のあの容姿と、内面の苛烈さをそれぞれ受け継いだ息子達二人に、陥れられた。


 だが――――あれだけの毒を綺麗に隠し切れるセディックなら、貴族として上手くやって行けるだろう。


 そう、思った。

 読んでくださり、ありがとうございました。


 エドガー(おとん)視点、これで終了。


 なんか、思ったより長くなっちゃいました。←いつも言ってるやつ。(´ε`;)ゞ


 コンプレックスを拗らせ捲ったおとんは紛れもなくクズなんですが……


 多分、高位貴族じゃなかったらそこそこ幸せになれた二人なんじゃないかな? と。子供作らないで、二人でずっとイチャイチャしてればなぁ……とか思ったり。(´-ω-`)


 でも、それを言ったら物語が始まってないんですけどね。(笑)


 一応、書いてる奴的にはエドガーはそんな酷いクズとは思ってないんですよね。


 他の方の作品のぶっ飛んだクズや外道、幼児虐待どころか拷問じゃん! ということを平気でする親や親族達に比べれば、大したことない小者かと。


 自分の子供を不当に嫌ってはいますが、幼少期のネイサンを怒鳴って殴ったのは一回だけ。あとは単に育児放棄(自分で見てない)してるだけだし。金は稼いで、使用人に面倒見させて、衣食住や教育はちゃんと与えていますし。


 多分、置き去りのやらかしが無かったら、エドガー(おとん)はしれっとネイサンを無視したまま、親子を続けていたと思います。メラリア(おかん)が毒母なのは変わりませんが……


 それにぶっちゃけ、子育てに全く参加しない日本のお父さんならこれくらい子供と接してない人、いると思うんですよね。


 ここまで酷いのはそうそういないにしても、何年もまともに家族と話したことがない、正面から家族の顔を見た覚えがない、なんて人が。


 日本人の父親が、家事育児に参加しないことは世界的にも有名ですからねー。(  ̄- ̄)


 日本の女性は、睡眠時間が世界一短いことも有名。男性が参加しない分の家事・育児の負担で、そんなことに……(-""-;)


 次回からネイサン視点に戻ります。

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