次期部長として見習わなければな。
誤字直しました。ありがとうございました。
とうとう三年生の自由登校が始まり、乗馬クラブへ顔を出す三年生が少なくなって来た今日この頃。
相変わらずケイトさんは、クラブに顔を出してくれています。ただ、以前に比べると乗馬をしている時間が減って、女子生徒達と話をしている時間が増えたように思います。
ちなみに、自由登校になってからは、ケイトさんと仲の悪い三年男子の姿は見ていない。
そのお陰か、女子生徒達や下級生達がのびのびしているように思う。
近頃は一、二年生の女子生徒達が競うようにケイトさんを取り囲んで、活動時間ギリギリになるまで惜しむようにケイトさんに話し掛けています。
そして、ケイトさんは彼女達一人一人に真摯に対応しているようです。次代の部長候補の、ミシェイラ・アンダーソン嬢へお手本を見せるようにして。彼女も、ケイトさんから学び取ろうと懸命な顔付きをしている。
「ぅわ~……部長、今日も女の子に囲まれてんなー。目の保養目の保養♪」
「うむ。セルビア部長は本当に慕われている。俺も、次期部長として見習わなければな」
「やー、レザンには無理じゃね? 絶対、部長みたいには女の子達に慕われねーって」
テッドがケラケラ笑いながら断言すると、
「・・・やはり、顔と体格だろうか?」
いつも無駄にキリっとしたレザンの眉尻が少し下がる。どうやら、気にしているようだ。
「まぁ、君デカくてゴツいもんね。それに、やっぱり顔や体格とかは関係無く、女性は女性同士の方が気安いでしょ」
「だなー。んでもって、お前堅いし」
「うん? 硬い? 筋肉のことか!」
と、なぜかちょっと嬉しそうなレザン。
「ちゃうわ! いや、お前のガチムチな筋肉は確かにそうだけど、俺が言ってんのは、態度の方だっての。なんつーの? 話し方とか? あと、無駄にデカくて威圧感もあるしさー」
「それはそれで逆にいいんじゃない? ほら? アホなことする輩は減りそうだし」
レザン自体は若干……いや、少しアホな脳筋だけど、基本的には公正を心掛けている。女性に対しても、見た目で敬遠されることはあっても、怖がらせるようなことはしない。脳筋で、偶にデリカシーが無かったりするけど。
むしろ、女性だからとケイトさんを貶めようとしたどこぞの馬鹿共のような輩は嫌いだろう。まぁ、嫌っているからと言って、そういう輩を冷遇するような奴でもない。
馬鹿共を冷遇はしないが、かと言って増長させることもしないだろう。単純に、乗馬技術に優れていることと、腕っ節が強いということもあるけど。レザンがいると、周りの気が引き締まる。そういう風な存在感がある奴だ。
そう考えると、嫌いな奴を嫌っているという態度が透けて見える性格の悪いわたしよりも、なるべくフラットな対応を心掛けるレザンの方がリーダーに向いていると思う。他人に指示を出すことにも慣れているし。
こういうさっぱりとした気質はわたしには無い部分で、尊敬できる。本人に言ってやるつもりは、全くないけど・・・
いい意味で、レザンはケイトさんの公正さと清廉さを引き継いで行けそうだ。足りない部分は、わたしや周りで補えばいいし。
「ぁ~……ま、それもそうか。んで、あれだろ? 女の子達はハウウェルか、新副部長ちゃんとこに行くんだ、ろ……この、裏切者めっ!?」
途中まで揶揄うようだった声が低くなり、キッと据わった目がわたしを睨む。テッドもテッドで相変わらずというか・・・面倒な奴だ。
「・・・そう言えば、平民の子達は優しくて気さくな先輩に懐くんじゃないかな? ほら、わたしとレザンって、初対面の人には結構身構えられちゃうから。そんなわたし達と一緒にいて、けれど気さくな先輩が近くにいたら、そっちに話し掛けるんじゃない? ま、でも今の誰かさんみたいな怖い顔してたら、気難しい人だと思われて避けられちゃうかもだけどね」
「っ!? ふっ、いやだなぁ。ハウウェル君。なにを言ってるんだい? 怖い顔なんて、僕はしていないさ」
やれやれ、とわざとらしく両腕を広げ、髪を掻き上げるテッド。
「え? なにそのキャラ。わざとらしくて胡散臭い。似合わないからやめた方がいいよ?」
「なんだとっ、この野郎っ! 自分がちょ~っと美女顔で、演技が上手くて口が達者だからって、調子乗ってんなよな! このっ、モテモテ腹黒美人さんめ!」
「うん? それは、ハウウェルの悪口なのか?」
「くっ・・・なんてことだっ、美人さんな顔に文句を言うことがこんなに難しいとはっ!? だがしかしっ、幾ら美女な顔をしていようが所詮ハウウェルは男だ! 女の子達は新しい副部長ちゃんのところへ行くに決まっている!」
まだ錯乱は続いているようだ。
「・・・言ってる意味わかんないんだけど? でも、なんかムカつくから殴っていい?」
「暴力反対ーっ!」
ケイトさんが学園にいられるのも、あと少し。
卒業式まで、あと――――
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読んでくださり、ありがとうございました。




