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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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ネイトは案外おバカさんなんだねぇ。

 そして、数週間後の入学の為の準備……という名で勉強の復習と予習を頑張りました。


 いやもう、ぶっちゃけわたし、騎士学校ではそこそこ成績優秀だったんだけどさ? 総合科は習うことが違い過ぎて大変なんだよね・・・


 さすがに高等部三年間で習う分の予習をすぐには無理なので、一年の前期分だけを大まかに予習することになった。一年の半分でも、覚えることが多いけど・・・


 まぁ、勉強が行き詰まったりすると、セディーが教えてくれて助かるんだけど。

 セディーは自分も忙しい筈なのに。その合間を縫ってちょくちょくわたしの勉強を見てくれて・・・しかも、その教え方も上手いし。


 かなり助かる。助かりはするんだけど、ね?


 それがなんか、ちょっと申し訳ない気分になる。ぼそぼそとセディーにそう言ったら、


「ネイトは案外おバカさんなんだねぇ」


 笑みを含んだ声がそう言って、にこにこと微笑むセディーに頭を撫でられた。


「ぅう・・・スラスラ解けなくてごめん」


 もっとスラスラ解けていれば、こんなにもセディーの手を煩わせることなかったのに……


「ああ、違う違う。そうじゃなくてさ、ネイト。僕はネイトに勉強を教えることができて嬉しいんだ。一緒に勉強したこと無かったし。こういうの、ちょっと憧れてたんだよねぇ。兄弟っぽくて・・・実はね、後輩に勉強を教えたりして、ネイトに教える為の練習をしたりもしたんだよ? お陰で、いい先輩だって評判が付いて来た」


 クスクスと楽しげに笑う声。


 確かにわたしは、セディーと一緒に勉強なんてしたことがなかった。いつも別々で・・・というか、そもそも同じ家で一緒に暮らしていた時間が短い。


「それにさ、僕には今から三年の猶予がある。けど、ネイトは入学まで、あと半月も無いでしょ。差し迫っているのはネイトの方なんだから、遠慮しないの。ね? ほら、手を動かそう」

「セディー……」


 と、優しく促されて手を動かした。


 そんな風にして、どうにかこうにかあれこれと詰め込みで勉強して――――


✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐


 とうとうやって来た、入学予定日……の、前日。


 もう、この数週間勉強しかしてない気がする。


 頑張ったわたし、偉い! そして、勉強を見てくれて励ましてくれたセディーありがとう!


 セディーは自分も忙しいというのに・・・


 うん? あれ? セディーは忙しい筈なのに、なんだかこの数週間、セディーといる時間がかなり多かったような気がする。


 暗記に飽きて来たり、問題に行き詰まったらセディーが現れて、アドバイスをくれたり、問題に正解したら頭を撫でて褒めてくれたり、気分転換がてらに雑談と見せかけた別教科の豆知識を話してくれたり、一緒にお茶したりして励ましてもらった。


 もしかしたら、一日六時間くらい(食事時間も含む)はセディーにあれこれと言い(くる)められて構われてたかも。

 ・・・ちょっと、あの、わたしも必死だったからあれなんだけど、六時間(食事時間も含む)とかはさすがに、ね? セディーってば、わたしのこと甘やかし過ぎじゃない?


 まぁ、わたしはめっちゃ助かってるけど。


 そんなことを考えながら、寮へ持って行く荷物の整理をしているときだった。


「ネイト、いる?」


 と、わたしの部屋へ入って来るセディー。


「セディー、どうしたの?」

「明日からまたネイトと離れ離れだから、一緒にいたいなって。ダメ?」

「それは・・・いいけど。いいの?」


 セディーの予定なんかは。


「もちろん♪」

「セディーは・・・」

「僕がなぁに? ネイト」

「少し、わたしに甘過ぎじゃないかな?」

「可愛い弟を甘やかすのは、兄の特権だからね。それに、これからは誰に(はばか)ることなくネイトと仲良くできることだし・・・」


 ()に憚ることなく、か・・・


 もう、わたしとセディーが仲良くしても、誰に咎められることも、文句を言われることも無い。


 それは確かに、嬉しいことだ。


「しかも、時間制限付きと来たらもう、時間の限り甘やかすべきでしょ」


 にっこりと胸を張るセディー。


「いや、甘やかすべきって、セディー……?」

「それともネイトは、僕に構われるのは嫌だった?」


 しゅんと悲しげに伏せられるブラウンの瞳。


「そんなことはないけど」


 セディーに構われるのは、昔から好きだ。


「それはよかった。それじゃあ、ネイトは僕に目一杯構われてね?」


 しょんぼり顔だったのが一変、セディーはパッと笑顔を見せる。


「・・・セディー?」

「なぁに? ネイト」


 にこにこと楽しげにわたしを見詰めるブラウン。


 なんかこう、このにこにことした笑顔に転がされている気がする。


「なんか、セディーがわたしのこと好きなのがよ~くわかった気がする」

「そうだね。僕はネイトのことが大好きだよ?」

「……っ」


 全く照れもせず、ド直球に返すとはっ!? むしろ、わたしの方が照れるし。


「ふふっ、ネイトは可愛いね」


 上機嫌に細められるブラウンの瞳。


 あぁ……そう言えばわたし、セディーに口で勝てたこと無いんだった。


 セディーがわたしの三つ上というのもあるんだろうけど、いつも簡単に言い(くる)められたり、ころころ転がされてたわ。

 ボードゲームやカードゲームで負けたわたしが不機嫌になっても、にこにこと笑顔のセディーに上手く宥められて機嫌を取られていた。小さい頃からずっと、こんな感じだった。


 今も多分、セディーに負けているんだろう。なんかもう、勝てる気がしないなぁ。


 まぁ、セディーに構われて嬉しいのは確かだし。

 読んでくださり、ありがとうございました。


 ネイサンを構いたくて仕方ないブラコンなセディーでした。(笑)


 ネイサンが勉強で苦労しているのは、学び直しを何度もさせられているからです。

 ネイサンがアホの子だから……というワケではないですよ?


 そして、次回からセディー視点の話になります。何話くらいになるかは未定です。

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