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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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・・・リヒャルト、楽しかったですか?

 誤字直しました。ありがとうございました。


 とりどりの緑と、その合間にちらほら見える花とが溢れ、爽やかな匂い広がる温室。


「ここは、ハーブ園ですわ。自分で摘んだハーブを、ドライフラワーやポプリ、ハーブティーに加工して、うちまで届けてくれるそうですわ」

「ここは……レイラ嬢が?」

「いえ、リヒャルト君の希望です」

「はいっ、ケイトねえさまとおかあさまが、ハーブのおちゃをよくのんでいるので、ねえさまたちのおちゃをつくりたいです!」

「成る程」

「ケイト様とお母様がよく飲んでいるハーブはわかりますか?」


 レイラ嬢の質問にリヒャルト君の眉がう~んと寄り、


「……しおしおのはっぱですっ」


 自信満々に返った答えは、種類の特定には難しい。まぁ、ドライのハーブティーを飲んでいるというのはわかったかな。


「しおしおの葉っぱですか……お花の匂いはしますか?」

「ん~と……あまいにおいで、しろいおはなさんがはいってました?」


 こてんと傾げられる頭。よくわかっていないらしい。


「甘い匂いと白い花……なら、カモミールでしょうか?」

「えっと、あかくてすっぱいおちゃもありました。おくちがきゅ~ってなりますけど、はちみつをいれるとおいしいです」

「赤くて酸っぱい……ローズヒップかハイビスカスかしら? まあ、あれね。とりあえず、葉っぱを種類ごとに摘んでお茶にしてもらえばいいのよ。というワケで、葉っぱを摘みますわよ、リヒャルト君!」


 と、ハーブティーの特定をあっさり諦め、ハーブを摘みに向かうレイラ嬢。


「カモミールやミントは繁殖力が高い……は、まだわからないでしょうか? えっと、たくさん摘んでもすぐにいっぱい生えて来るので、ガンガン摘んでも構わないそうですわ。さあ、籠いっぱいに摘みましょう!」

「はいっ、レイラねえさま!」


 小さな手がカモミールの葉っぱや花をぷちぷちと摘んで行く。


 ハーブに夢中になる二人の安全を確認しながら、わたしもお土産用にハーブを籠に詰めることにした。


「いっぱいつめましたっ♪」

「ふふっ、わたくしもたくさん採りましてよ!」


 ふふんと籠いっぱいに詰めたハーブを自慢し合う二人。


「では、これをどうするのか決めましょう」

「どうする、ですか?」

「全部お茶にしてしまってもいいとは思いますけど、ポプリやドライフラワーにもしてくれるそうですからね。お茶は消え物なので残りませんけど、ポプリにすれば数ヶ月は楽しめますもの。きっとケイト様も喜んでくれますわ」

「ぼく、ポプリしますっ」


 と、レイラ嬢の勧めでリヒャルト君もポプリを作ってもらうことに決めたようだ。


 お茶にするハーブやポプリを入れる袋の柄を決めたり、中身を決めたりと二人でああでもないこうでもないと相談して、最後に家へ送る手配。


「ケイト様とお母様が喜んでくれるといいですわね」

「はいっ、レイラねえさま。いっしょにえらんでくれて、ありがとうございました」

「ふふっ、どう致しまして」

「では、そろそろ約束の時間なのでレストランへ向かいましょうか?」

「あら、もうそんな時間ですの?」

「ふふっ、お二人共夢中でしたからね。お腹は空いていませんか?」

「ハッ、ねえさまとおやくそくのおひるごはん!」

「ええ、そうですね。リヒャルト君」

「はいっ」


 と、リヒャルト君を抱き上げて移動。


「・・・あんまり怒られないといいのですが」


 小さく零れた呟きに、思わず頷いてしまう。


 まぁ、あれだ。


「怒られるときはわたしも一緒ですから」

「? ネイトにいさまとレイラねえさま、おこられちゃうんですか?」

「そうですわね・・・ちょっと強引だったことは否めませんからね」

「そうですねぇ・・・怒られたら、一緒に謝りましょう」

「ええ」


 と、頷き合いながらレストランへ。


 約束したレストランの前まで来ると、


「リヒャルトっ!?」


 わたし達を見付けたケイトさんが慌てて駆けて来る。


「ねえさま~!」


 そして、ぎゅ~っとリヒャルト君をハグ。もぞもぞとわたしの腕からケイトさんの腕の中へ移動するリヒャルト君。


 感動の再会、ですね。なんというか、今更ながらに罪悪感が湧いて・・・


「ネイト!」


 と思ったら、わたしの方もセディーにハグをされた。


「もう、子供と女の子だけでいきなりいなくなって心配したんだからね!」

「そうですよ。ネイサン様とレイラ様は、ご自分が見目麗しいということを、(しっか)り自覚してください」


 と、お説教を食らいました。


「あの、わたし男で……」

「その、わたくし、小さい子供では……」


 という反論は、


「二人が良家の子女であることに変わりはありません。とっても心配したんだからね」


 と返されました。


「はい、すみませんでした」

「申し訳ありませんでした」


 小さくなって、おかんむりなセディーとケイトさんへ謝る。


「えっと、ぼくもごめんなさい……?」

「ああ、リヒャルト君は謝らなくていいんですよ。わたしが無理矢理連れて行ったようなものですから。ケイトさん、本当にすみませんでした」

「・・・リヒャルト、楽しかったですか?」

「はいっ」

「フィールズ様から聞きました。リヒャルトが行きたいと言っていた箇所には、虫の観察のできるエリアがあるのだと。そして、多くの女性は虫を好まないので、ネイサン様がわたしへ気を遣ったのではないかと」

「ケイトねえさま、むしさんはきらいですか?」

「ええ、リヒャルト。残念ながら、姉様は虫が苦手です。なので、ネイサン様とレイラ様がリヒャルトに虫の観察をさせてくれたことは感謝しています。ですが、せめてどこへ行くかというのは教えてほしかったです」

「申し訳ありませんでした、ケイト様」

「今度からは、確りと行先を告げてから行動してください」


「「はい」」


「ふふっ、皆さん仲良しさんですね~」

「セディック兄様は心配性ですわね」


 クスクスと笑う声。


「エリオット」

「ルリア」

「いっぱい歩いてお腹空いてませんか?」

「ルリはお花の料理を楽しみにしていたのです。レストランに入りませんか? お兄様、お姉様」

「ぼくもおなかすきましたっ」


 と、年下の子達のフォローで昼食をすることに。


 後でエリオットとルリア嬢にはお礼を言っておこう。


 読んでくださり、ありがとうございました。

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