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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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・・・これ、後で怒られないかな?


 翌日。


 植物園に現地集合。


「皆様、御機嫌よう。この植物園は、エリアごとに異なる趣向が凝らされているみたいで、老若男女問わず楽しめるようになっているそうですわ」


 にこにことマップを見ながら話すフィールズ嬢。


「それでわたくし、ハウウェル様にちょっとご相談があるのですが。宜しいでしょうか?」

「どうしたの? レイラちゃん」

「エリーには言ってないの。エリーは、ルリアが行きたいところを聞いて来なさい。さあ、早く!」

「ふぁい!」


 と、キツめな口調でエリオットをルリア嬢の方へ向かわせ、わたしへ向き直るフィールズ嬢。


「あ、セディック様はご遠慮を」


 ナチュラルにわたしに付いて来ようとしたセディーに笑顔を向け、少し離れた場所にわたしを呼んだ。


「なんでしょうか? フィールズ嬢」

「ああ、レイラでいいですわ。フィールズだと、ルリアと紛らわしいですもの」

「それなら、わたしもネイサンでいいですよ」

「では、セディック様とご一緒のときには、わたくしもネイサン様と呼ばせて頂きます。それで、本題に入りますが・・・」


 ひそひそと声が潜められる。


「実はわたくし、今日はルリアとは別行動をしようと思っていますの。エリオットとルリアは婚約者になってから、二人だけで過ごす時間があんまり取れていないので」

「そうですか」

「それで、ですね。ケイト様とセディック様も婚約者同士でしょう? 今日は、お二人にも・・・と思いまして、ネイサン様にご協力頂けないかとご相談したという次第です。リヒャルト君は、ネイサン様に懐いているみたいですし。わたくしとネイサン様と二人でなら、ケイト様もリヒャルト君を預けてくれると思うのです」


 ・・・う~ん、それはどうなんだろう?


「少し、難しいかもしれません」


 あの、筋金入りのリヒャルト君ラブなブラコンのケイトさんが、大事な大事なリヒャルト君を他人に預けて、のんびりと植物園を見て回るとは全然思えないんだけど・・・


「では、こういうのはどうでしょう?」


 と、作戦をひそひそ。


「やるだけやってみましょう!」


 やる気満々なフィールズ……レイラ嬢との相談が終わると、


「なんの相談だったの?」


 怪訝そうな顔のセディー。


「どういう順序なら効率的に回れるかという相談ですわ!」


 ふふんと応えるレイラ嬢。


「ふふっ、レイラ姉様は昨日からとっても張り切っていましたからね」


 成る程。昨日から、二人切りにしよう作戦を練っていたワケですか。


「あ、だからレイラちゃんはハウウェル先輩に相談したんだね」

「? どういうこと? ネイト」

「ああ、わたし、地図を読むのは得意なんだよ」

「そうなの?」

「そうですっ! ハウウェル先輩は、地図や地形を読むのがすっごく上手だって、いつも誉められてましたからね!」


 こちらも、なぜかふふんとセディーに応えるエリオット。


「そうなんだ。ネイトは凄いねぇ」

「では、どのような順序で回った方がいいのでしょうか?」

「それは・・・やっぱり、どこを見たいかによりますね。リヒャルト君は、どこを見てみたいですか?」


 と、パンフレットを広げてリヒャルト君に見せる。


「めいろ……? おはなさんの、おんしつ……おはなのおりょうりのでる、れすとらん」


 たどたどしく、けれどパンフレットの文字を読み上げる高い声。


「リヒャルト君、もう字が読めるんですか?」

「ケイトねえさまにならいました!」

「すごいですねぇ」

「ふふっ、リヒャルトは賢いですからね」


 と、嬉しそうに笑うケイトさん。


「はっぱ、ぼく、みずのおはなさんのはっぱにのってみたいです!」

「水のお花さんって、なんですか?」


 きょとんと首を傾げるエリオット。


「ああ、温室で栽培されている、葉っぱが大きい種類の蓮のことだね。葉が一メートルくらいの大きさで、五十キロくらいの体重の人なら、問題無く葉の上に乗れるみたい」


 水に浮く蓮の葉に乗る体験ができるようだ。


「ふぇ~……なんかすごそうですね~」

「リヒャルト君、他にも行きたいところがありまして?」


 レイラ嬢の質問に、


「こっちと、こっち、こっちにもいきたいですっ」


 パンフレットをあちこち指す小さな手。


「う~ん……距離が離れているので、今日中に全部回るのは少し難しいかもしれませんね」


 リヒャルト君の希望に、思案するように眉を寄せるケイトさん。そこへ、


「では、ネイサン様がリヒャルト君を抱えて回るのはどうですか?」


 レイラ嬢がにっこりと言う。


「え?」

「だっこしてくれるんですかっ? ネイトにいさま」

「ええ、いいですよ」


 と、答えてリヒャルト君を抱き上げる。


「ネイサン様、リヒャルトは重たいので」


 きゃっきゃと喜ぶリヒャルト君に、困ったような顔をするケイトさん。


「大丈夫です。では、そうですね・・・お昼の一時に、こちらの花の料理を出すレストランで待ち合わせということでどうですか?」

「え?」

「はい、どうぞ」


 と、パンフレットをケイトさんへ。


「そうですわね! エリーとルリアは、好きなところを見てらっしゃい。わたくしも、リヒャルト君が見て回りたいところに興味があるので、ネイサン様達にご一緒しますわ。皆さんそれぞれ別行動ということで。さ、行きましょうネイサン様、リヒャルト君! 急がないと、今日一日で回り切ることはできませんわ!」


 早口のレイラ嬢に促されて速足で歩き出すと、


「リヒャルトっ!?」

「ネイトっ!?」


 後ろから悲鳴にも似た驚きの声が・・・


「ケイトねえさま~♪あとでごはんいっしょにたべましょうね~」


 にこにこと笑顔で手を振るリヒャルト君。


「・・・これ、後で怒られないかな?」


 小さくぼやくと、


「大丈夫です、さあ行きましょう!」


 カツカツと速足で応える声。


「ヒール、大丈夫ですか?」


 わたしはまだ走ってはいないけど、レイラ嬢は小走りの状態になっている。


「こんなこともあろうかと、今日は走り易いブーツで来たので大丈夫です!」

「そうですか。体力の方は?」

「セディック様よりは、自信がありましてよ。わたくし、クイックステップが得意なので」


 クイックステップは、細かいステップに跳んだり跳ねたりと大きな動きを組み合わせた運動量の多いダンス。体力には、それなりの自信があるということだろう。


「わかりました。では、キツいと思ったら遠慮無く言ってくださいね?」

「ええ」


 と、若干誘拐? 気味に連れ出したリヒャルト君と、小走りのレイラ嬢と一緒に植物園の中を巡ることになった。


 大丈夫かな?


。.:*・゜✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・✽


 読んでくださり、ありがとうございました。

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