問われたのは、覚悟。
誤字直しました。ありがとうございました。
翌日、セディーと一緒にお祖父様とおばあ様へと話をした。
父を、引き摺り下ろす為の話を――――
問われたのは、覚悟。
父を追い落として侯爵位に就いたという汚名を、一生被り続ける覚悟。
領主として、領民達の生活を背負う覚悟。
碌な経験も浅いうちから、海千山千の老獪な貴族達と渡り合う覚悟。
高位貴族としての責務を全うする覚悟。
国の為に尽くす覚悟。
そして――――
エドガー・ハウウェルとその妻メラリアが、両親がハウウェル侯爵家の恥だと噂される覚悟。
祖父母がいなくなっても、やって行かなくてはならないという覚悟。
セディーには、それら全てをひっくるめた覚悟を。
ネイトには、それら全てをセディーに背負わせるという覚悟を。
決めなさい、と。
「その覚悟ができないのであれば、あと十年程はわたしがどうにか侯爵として踏ん張る」
と、お祖父様は言った。
そう・・・言って、くれた。
エドガー(父)がああなってしまったのは、自分達が育て方を間違ったから。エドガーが強く望んだから子爵令嬢だったメラリア(母)との婚姻を許したのに、嫁のあまりの残念さに教育を諦めてしまった。だから、孫のお前達にはとても苦労させることになってしまった。それを申し訳なく思っている、と。
お祖父様とおばあ様が、セディーとわたしに頭を下げて謝ってくれた。
父がアレなのは、育て方というよりかは……育ち方、の方なのだとわたしは思いますが。
あと、母のことも、お祖父様とおばあ様がそんなに責任を感じる必要は無いと、わたしは思います。
かなりの迷惑を被ったであろうセディーが両親達のことをどう思っているかは、知らないけど。
わたしは――――
どんなに育ちや環境がよくて恵まれていたとしても、歪んでしまうような人はいる。
特になんのきっかけも無くても、歪んでしまう素養がある人は理由が無くても歪むものだし。
またそれとは反対に、育ちや環境が劣悪だったとしても、驚く程に真っ直ぐで優しい人だっている。
そういう人達だって、ちゃんといる。
それを、知っている。わかっている。
だから、要は歪んでしまうかは……いや、仮令歪んでしまったとしても、真っ当になるかどうか……真っ当になろうと努力するかは、本人の心掛け次第なのだと、わたしは思う。
そう、思っている。
わたしの卒業したあの騎士学校は、軍閥の子息が多く通う学校ではあるけど、やらかした貴族子息達の更生を担う側面を持つ場でもある。
わたしは、その場所に三年間いた。
わたしはその間に、いろんな奴を見て来た。
まぁ、比較する場所が少々極端なのかもしれないが……でも、本当にいろんな奴がいたんだよね。
マジで……普通に、わたしよりも酷い家庭環境の奴も何人かいたし。その全員が歪んでいて性格が悪いかというと、そうでもなかった。
両親に愛されていて、とても恵まれた環境に育ったというのに、クズみたいな性格の奴もいたし。
わたしに絡んで来た馬鹿共の中には、三年の間に愚か者から脱却した奴だっていた。
まぁ、良くなる奴もいれば、どんどん悪くなる奴だっていたんだけど……
だから、父と母がああなったのは、本人の責任が多分に含まれていると思うんですよね。
自業自得というか・・・
自分達で言うのもなんだけど、わたしとセディーもなかなかの環境だったと思うし。
それでも、酷くは歪んでいないと、そう思っている。腹黒だと言われるのは、まぁ……ご愛嬌というやつだろう。それはもう、しょうがない。
そして、両親以外の人達に恵まれたことは、わたし達にとっては本当に幸運なことなのでしょう。
お陰で、愚か者にはなっていないと思う。
なのでわたしは、お祖父様とおばあ様を筆頭に、周囲の人達に深く感謝をしています。
両親がアレだったお陰で、わたしはクロシェン家に預けられて・・・スピカとも出逢えましたし。おばあ様に感謝ですよね。
クロシェン家に預けられてなかったら、ものすっご~く捻くれている自分しか想像できない。
だから、お祖父様とおばあ様に謝られると、なんだか困ってしまうんですよねぇ……
セディーも、ちょっと困ったような顔してるし。
そんな風にして、お祖父様とおばあ様と、これからを決める話し合いをして――――
これから三年を目途に、父を子爵位から下ろす予定となった。
一応は、あくまでも予定、だ。
わたしが高等部を卒業するまでに、セディーが今現在父のこなしている実務を不備なくこなせるようになったら、お祖父様が実際に父を子爵位から下ろして、セディーを後継として発表するのだとか。
三年以内という期限は、少しセディーには厳しいかもしれないとのことだけど、これがお祖父様の妥協点なのだとか。
三年を目途にとは言え、それ以上に時間が掛かってもお祖父様は構わなさそうだ。
むしろ、もっと時間が掛かることを期待しているようにも感じる。
お祖父様的には、父を引き摺り下ろすまでの期間が延びることは、それだけセディーやわたしに対する負担が先延ばしになると思っているみたいだし。
セディーはやる気満々。
おばあ様は、セディーを応援してくれるようだ。
わたしは・・・とりあえずは、高等部を卒業するのが先だろうなぁ。
なるべく、いい成績を取りたい。
読んでくださり、ありがとうございました。
十代で爵位を継ぐのは、なかなか大変なことだと思うワケです。




