「ありがとう、ネイト」って笑ってくれたっけ。
そして、セディーが持って来たという荷物の確認と点検。外でフィールズ家の使用人とあれこれ話していたライアンさんに、セディーが倒れて寝ていることを報告。なんでも、あまり休憩を取らない強行軍でここに来たらしい。
食料は、道中のスピードが落ちるからと、ここより少し前の町で買い集めたのだとか。そして、ずっとイライラしていたセディーが、その町で食事をした後には落ち着きを取り戻した様子になったそうだ。なんでも、「ネイトのお友達がいてね、ネイトが元気だって聞いたんだ」とのこと。
この近辺でわたしの友人というと、多分キアンのことだろう。
セディー。会ったんだ。あれと・・・と、思わないでもないけど、それでわたしの無事を直接聞いてセディーが安心したというのなら、ちょっとキアンに感謝してもいい。ちょっとだけ、ね。
消化にいい食べ物と医者の手配をお願いして、部屋を移動する為に荷物の片付け。
寝苦しそうなセディーを見て、思う。もしかしたら、体調を崩すかもしれないなぁ……と。
そして案の定、熱発した。
ということをエリオットに伝えると・・・
「だ、大丈夫なんですかっ!?」
「そんな具合悪いのか?」
「ふむ……病院へ運ぶか?」
心配そうな顔をわたしへ向ける面々。
「ああ、大丈夫だよ。あんまり休憩を取らない強行軍で来たから、多分……」
「多分、なんですか?」
「全身筋肉痛での熱発だと思う」
「へ? 筋肉痛?」
「うん。セディー、普段あんまり運動しないから。なのに、急いでこっち来たみたいで。慣れない長距離移動で、全身筋肉痛かな? って。テッドもリールも、こっち着いてから少し具合悪そうにしてたでしょ? あれと似たような感じだよ」
ただ、二人よりもセディーが体力なかっただけで。
「成る程」
「あれ、結構つらいんですよね……大丈夫でしょうか?」
「まぁ、ちょっと迷惑掛けるかも。ごめんね?」
「いえ、ハウウェル先輩もセディック様も悪くないですから、謝らないでください。強いて言えば、お天気のタイミングが悪かっただけですから。全然気にしないでくださいねっ?」
「……ハウウェルは、大丈夫か?」
「うん。ありがと。それじゃ、わたしは部屋に戻るから」
そう言って部屋へ戻ると、少しくたびれた感じのライアンさんが心配そうな顔でドアの前に立っていた。
「ネイサン様、セディック様は」
「ああ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。多分、慣れない長距離移動での全身筋肉痛だと思いますから。数日も休めば動けるようになります。それより、ライアンさんも休んでください。ここに来るまで、ずっと休んでいないでしょう? セディーが動けるようになるまで、お休みにしてください」
「セディック様の看病はどうするおつもりですか?」
「わたしがするので大丈夫です」
「そうですか……わたしが付いていながら、申し訳ありませんでした」
「いえいえ、今回は自分の体力を考えなかったセディーが悪いんですよ」
「それでも、わたしがセディック様をお諫めすべきでした」
ああ、ライアンさんは本当にセディーのことをよく考えてくれているんだなぁ。と、少し嬉しくなってしまった。
「では、また今回みたいに無茶したときにはセディーを諫められるようになってくださいね?」
「精進します」
「なら、ライアンさんもゆっくり休んでくださいね? セディーに続いてライアンさんにまで体調を崩されては困ります」
「わかりました。では、失礼します。ネイサン様も、あまりご無理はしないでくださいね」
「わかっていますよ」
と、ライアンさんを見送って室内へ。
セディーの荷物を勝手に漁って着替えさせていると、
「? あれ、ネイト?」
ぼんやりしたブラウンがとろんと開く。
「うん。セディー、起きられる? 水飲もうか?」
「みず?」
「うん。喉渇いてなくても水分は摂った方がいいからね。それとも、水じゃなくてなにか甘いものとかミルクの方がいい?」
「みず」
「ちょっと待ってね?」
と、コップへ水を注いでセディーへ飲ませる。
もっと飲むかと聞くと、ううんと首を振ってまた寝てしまった。
濡らして絞ったタオルをおでこに乗せたり、汗を拭いたりとセディーの世話をしていると、小さい頃のことを思い出した。
昔は、セディーが体調を崩すことが多くて、夜中に遊びに行ってもセディーが苦しそうにしているのを見て、なにかできることはないかと下手くそな看病をしたっけ?
ぐしぐしと乱暴に汗を拭ったり、シャツのボタンを留めたら全部ズレてたり、ぽたぽたと水の垂れる濡れタオルをおでこに乗せたりして・・・
それでも、セディーは嬉しそうに、「ありがとう、ネイト」って笑ってくれたっけ。
あれって、今考えるとセディーは勿論だけど、侍女達にもかなり迷惑だっただろうなぁ・・・って、なんか今更ながらにめっちゃ恥ずかしくなって来たっ!!
昔のことを思い出して羞恥に襲われつつ、セディーの様子を見ていると、コンコンとノックの音。
医者を呼んだので通していいかという確認。
OKして、セディーの診察。
わたしの見立て通り、長距離を強行軍で移動したことによる疲労と身体への負荷。発熱は二、三日続くだろうとのこと。解熱剤と胃薬を貰って、五日以上熱が下がらなかったり、他にも異常があるならまた呼びなさいと言って、帰って行った。
エリオット達に報告して、今日は部屋に食事を運んでもらうように頼んだ。
「セディー」
ぽんぽんとセディーの肩を叩いて呼ぶ。
「・・・んん? ネイト?」
「ごはん食べられる?」
「ごはん?」
「そう、ごはん。ごはんが食べられないなら、果物は? なにか食べないと、薬飲めないから。リンゴ剥こうか? それとも、擦り下ろした方がいい?」
「ごはん、なぁに?」
「リゾット」
「食べる」
のそのそと起きて、ちびちびとリゾットを食べ、薬を飲んで、
「ネイト、ありがとう」
ふにゃっと笑ってまた眠った。
「うん、おやすみ。セディー」
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
読んでくださり、ありがとうございました。
ネイサン「しぇでぃー、うごいちゃメッなの! ボタンとめらえないでしょっ」( ・`д・´)
セディー「ああもうっ、僕の弟が可愛過ぎる!」(///∇///)
ネイサン「あいっ、できた!」( ≧∀≦)ノ
セディー「ふふっ、ありがとうネイト」(*´∇`*)




