今十七だよな? 丸っきり行動が子供なんだけど?
ネイサン視点に戻ります。
病み上がりだというのに、今から一人で森へ入るというキアンが若干心配なので、わたしも着替えと準備をして外へ。
レザンは、森の見回りだそうでわたし達とは別行動。そして、今日はテッドとリールが筋肉痛とのことで、エリオットは二人に付き合ってお留守番。
二人で森に来たのはいい。でも・・・
「なにしてんの? 君は」
キアンがいそいそと土を掘って根ごと籠へ入れているのは、とある有名な草。
「それ、毒草だよね?」
わたしの見間違いでなければ、野営などをするときには、毒があるから気を付けろと真っ先に注意されるような草だ。わざわざ土を掘り返して、なぜかそれを根ごと採取して油紙に包んで籠へ入れている。
「ふっ、知らぬか? これは、適切に処理すれば薬ともなることを」
「それは前に、君から聞いた覚えがある。けど、あれでしょ? 君、その適切な処理の仕方を知らないんだよね? 『俺は処理の仕方を知らぬがな』って、そのとき言ってたよね?」
それなら、普通に毒だと思う。
「麗しき同志よ、俺も進化しているのだ」
「それは、薬の作り方を覚えたってこと?」
「今日は色々と補充する予定でな。あまり詳しくは聞かぬ方がいいだろう」
「そう・・・ま、いいけど」
今日は、キアンが自分で使用するものの補充目的、ね。昨日は、テッドとリールがいたから配慮して、あからさまな毒物の採集はしなかったということだろう。
なにに使うかなど、聞くだけ野暮というもの。知らん振りをしろということだ。
でも、進化ってなに? と若干釈然としないものの、毒っぽいものの採集には目を瞑ることにした。
それから、歩きながら……穴を見付けるや否や、ずぼっと穴の中に手を突っ込み、
「ふむ……狸か穴熊だと思ったのだがな? それらの巣穴を乗っ取ったようだな。狐は食えんこともないが、臭いからな。この大きさでは、大して毛皮も取れん」
泥だらけになりながら引っ張り出した子狐を不満顔でポイっと放ると、キアンに放られた子狐は怯えたようにぷるぷると震えながらサッと巣穴へと戻って行った。
「鳥も、量を捕まえねば食いでがない。やはり、兎や穴熊などが手頃だな」
そんな感じで草を採ったり、生き物の巣穴に手を突っ込んだりと、好奇心旺盛な子供ばりに素早く、そしてあちこちと忙しなく動き回るキアンに付き合っていたら・・・
昔、ロイと遊んだときのことを思い出した。
ロイも、怪しい穴を見付けるとよく手ぇ突っ込んだりしていたよなぁ、と。中に動物が住んでいたら、噛まれたり引っ掻かれたりしてあちこち傷を作っていたし。だから外へ遊びに行くときは、消毒液やハンカチが欠かせなかった。
そして、それを見ていたスピカがロイの真似しようとしたのを、かなり必死に止めたんだよね。思えば、スピカも好奇心旺盛な子だった。
キアンは厚手の手袋をしているから、一応怪我は無さそうだけど・・・
でもコイツ、今十七だよな? 丸っきり行動が子供なんだけど?
なんて思いながら、付いて歩いていたら――――
「っ……疲れたっ……」
「麗しき同志よ。在学中に比べ、体力が落ちたのではないか?」
息を乱すわたしを、泥だらけの呆れ顔が見下ろす。籠には、毒草っぽい草やハーブ、多分薬草などが山盛り。そして、その肩やら腰には仕留めた小動物が下げられている。一部の獲物は、わたしも持っているけど。
おそらく、昨日はテッドやリールが付いて来れるよう、本当にのんびり歩いていたのだろう。
今日は本格的な採集の為、本来の速度で移動したのか。普段から毎日徒歩で移動しているキアンの体力を、舐めていた。付いて歩くのがやっとだ。
「そのような有様では、有事の際に危険だぞ?」
……レザンのようなことを言われてしまった。でも、キアンの日常は、有事だらけのサバイバル。その彼には、あまり言い返せない。
「まあ、いい。では、同志もへばっていることだし、そろそろ帰るとするか」
と、別荘へ戻ることにした。
それから、今日も今日とて、戻っても中には入らず井戸場へ直行。
解体作業……をする前に、キアンは泥を落とすと色々なものが詰まっている籠を部屋へ置いて来ると言って、戻って行った。
まぁ、出しっぱなしにしてたら普通に処分されるだろうし、捨てないでほしいと言えば、きっと用途を聞かれる。そういう危険物は、さっさと仕舞うに限る。
キアンが席を外している間にレザンが戻って来て、そのまま手伝い。そして、キアンがエリオットを呼んで来て、またわいわいと作業。
ちなみに、「俺を一人にするなよなっ!?」とテッドが煩かったとのことで、今日はリールは解体には不参加だそうだ。
それから軽食を食べて解体作業をしているうちに、気付けば暗くなっていて、夕食の時間。
「フハハハハハっ、今日は肉祭りだっ!! 存分に食らうがいい!」
「昨日のお肉ですっ♪」
テンションの高いキアンとエリオットが言うと、昨日処理した肉がテーブルにところ狭しと並ぶ。
ステーキ、煮込み、串焼き、蒸し料理、肉包みパイ、ラビオリ、揚げ物、そしてスパイシーな香り漂う辛そうな肉料理などなど。
「うおおっ!? マジで肉だらけっ!」
読んでくださり、ありがとうございました。




