箱入り中の箱入りなガチお嬢様だったっ!?
誤字直しました。ありがとうございました。
「エリー……エリオットは大丈夫ですが、そちらの先輩は?」
「! あまり、構わないでもらえるとありがたい、です……」
視線を向けられたリールが、パッとフィールズ嬢から顔を背ける。
「ああ、グレイ先輩は僕とはまた違った感じに女の人が苦手なんだって。だから、そっとしてあげて」
「まあ、それはお見苦しいものを見せてしまい、失礼しました。それじゃあ、わたくしはエリオットと踊ったら離れますので、エリオットを宜しくお願いします」
「え? レイラちゃん?」
「いやっ、その、俺に構わないでもらえたら、それでいいので。どうかお気になさらず。公爵令嬢の、過ごしたいようにお過ごしください」
謝罪して離れようとするフィールズ嬢に、慌てて首を振るリール。
「そうですそうです。コイツのことなんか気にしないでください。女の子苦手なのは単なるシャイ野郎ってだけのことですから!」
うんうんと頷き、テッドもフィールズ嬢を引き留める。一応、リールがシャイなのは、然程間違ってはいないかな?
「え?」
「そうですね……パートナーが離れると、これ幸いと近付いて来るような人もいますから。もしレイラ様がお嫌でなければ、フィールズ様と一緒にいた方がいいかもしれません」
まぁ、わたし達には最初の態度がちょっとアレだったけど、フィールズ嬢は公爵令嬢。それも、今はエリオットとの婚約を解消したばかりでフリーと来た。
この学園は男女交際に付いてかなり厳しい校風とは言え、交流会で羽目を外したりだとか、公爵令嬢である彼女に下心を持って近付く輩がいないとも限らないし。過激派密告者の人達が目を光らせてはいても、不快な思いをする女子生徒もいるだろう。
「そうだよ、レイラちゃんは可愛い女の子なんだからね。パーティーで可愛い女の子が一人になるのは危ないって、姉様達が言ってたんだから。気を付けないといけないんだよ?」
「え? なにこれ? フィールズがお嬢さん口説いてんの?」
ぽかんとした顔でエリオットを見やるテッド。
「ふぇ? なんでそうなるんですか?」
「え? だって、お嬢さんのこと可愛いって」
「? レイラちゃんは可愛いですよね?」
きょとんと首を傾げ、なぜかわたしに聞くエリオット。
「まぁ、そうですね。フィールズ嬢の容姿は整っていますから。気を付けた方がいいですよ。それに、エリオットの虫除けになるのでしょう? 離れては意味がありませんよ」
「・・・ハウウェル様に容姿が整っていると言われると、なんだか微妙な気分になりますが・・・わかりましたわ。それじゃあ、踊りに行くわよエリー」
「え? あ、待ってレイラちゃん」
と、フィールズ嬢は納得がいかないという顔をしながら、エリオットを引っ張って踊りに行った。
「・・・なにが微妙な気分になるんだろ?」
「まぁ、レイラ様のお気持ちはわからなくもありませんけどね」
「?」
小さく呟かれた声に首を傾げると、にこりと微笑むだけでケイトさんは答えてくれず、
「メルンさん」
テッドを呼んだ。
「あ、はい。なんでしょうか? 部長」
「フィールズ様の『可愛い』は、別に女性を口説いての言葉ではなくて、そうですね……親戚の子を『可愛い』と言うのと似たようなニュアンスではないでしょうか?」
「あ、そっか。あの二人、元々親戚でしたっけ」
「一応、顔の系統は似てると思うんだけど」
「え? マジで?」
「浮かべる表情の違いで、印象がかなり違っている風に見えるのかもね」
フィールズ嬢は、客観的に見て美少女だと思う。エリオットが垂れ目気味なのに対し、フィールズ嬢は吊り目気味ではあるけど、顔の系統的には似ていて、どちらも可愛い系だろう。
「笑った顔は、二人共結構似ているよ」
「え? あのお嬢さん笑うのっ? 俺、ツンツンしたとこしか見た気がしないんだけど?」
「ま、普通は、大して親しくもない人相手には作り笑いか愛想笑いしかしないでしょ」
「や、そういう問題じゃねーじゃん」
「メルンさん。レイラ様に失礼ですよ」
「あ、すみません」
「まぁ、フィールズ嬢は公爵令嬢だからね。わたし達とはエリオットの親族という縁で関わりができただけで、学年も違うし。普通に学園で過ごす中では、お近付きになる機会なんかそうそう無い相手なんだよ。君、そこのところちゃんと理解してる?」
親族でもなく、婚約者でもない、性別も、爵位も身分も、学年も、部活も違う。そんな相手と知り合いになるのは、かなり難しいと思う。
「ハッ! 言われてみれば、公爵家のお嬢様って、箱入り中の箱入りなガチお嬢様だったっ!?」
「レイラ様はかなり気さくな方ですが、箱入り……と言えば、箱入りになるのかもしれませんね」
「え? 気さくなんですかっ?」
「ええ。かなりシャイな方だと、よく知らない方とは自分では直接お話せず、侍女やお友達などに代わりに話してもらうというお嬢さんもいますから」
「あ、なんか、そっちのが深窓のお嬢様のイメージっぽいですね!」
「ふふっ、そういう方も、この学園にいないこともありませんからね。けど、そういう方だとネイサン様の仰る通り、お知り合いになること自体が難しいでしょうね」
「は~……ああ、そういう意味で、気さくなお嬢様ですか」
読んでくださり、ありがとうございました。
最近は天然さが露呈していますが、レイラちゃんはいいところのお嬢さん。(笑)




