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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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ルリアなら、きっと大丈夫ですわっ。

「レイラちゃんが仲良し?」

「うん? わかるか? ハウウェル」

「う~ん……」


 どういう意味なんだろ?


「では、もう一度ホールドの姿勢をしてみましょう。レイラ様、お願いします」

「わかりました」

「クロフト様、フィールズ様。手を貸してください」

「うむ」

「はいっ」


 と、二組でペアを組んでホールドの姿勢。そしてまた、相手を変えてホールドの姿勢。踊るのではなくて、ホールドするだけで判ることは・・・


「ああ、意味がわかりました」

「わかりましたか? ネイサン様」

「ええ。立ち姿の違いですね。ケイトさんがリード側へあまり身を預けずに立っているのと、フィールズ嬢がリード側へ身を預けている姿勢の違い。それが、リヒャルト君には仲良しに見えた、ということでしょうか?」

「ええ、その通りです」


 にこりと微笑むケイトさん。


「? ダンスで、リードをしてくれる方へ身を預けるのは当然のことでは?」


 不思議そうな顔をするフィールズ嬢。


「そうですね。一般的には」

「一般的には、ですか?」

「ええ。ある程度のダンスが踊れればいいというのでしたら、それでいいのです」

「ある程度、というのはどういう意味でしょうか? ケイト様」


 ケイトさんの言葉に、ムッとしたような声を返すフィールズ嬢。


「お気を悪くしたのなら、すみません。ですが、ルリアさんに必要なのは一般的な令嬢のダンスではないのです。まず、レイラ様はその辺りを理解してください」

「ルリアに必要なのは、一般的なダンスではない?」

「ええ。ルリアさんは今、公爵家の当主となるべく、学んでいます。当主候補となるのでしたら、仮令(たとえ)ダンスであっても、その令嬢はお相手の殿方に凭れ掛かってはいけません。あまり好ましいとは言えない相手と踊らないといけないこともあるでしょう。よからぬ輩が寄って来ることもあります。なので、勘違いさせるようなことは、最初からしてはいけません。隙を見せてはいけません。舐められないよう、毅然とした態度で。殿方へ寄り掛からず、自分で(しっか)りと立っていることを示すのです」

「・・・理解しました」


 どうやら、貴族当主を目指す令嬢は、ただダンスが踊れればいいというワケではないみたいです。ダンス一つを取っても、男に凭れ掛からないようにする。毅然とした姿勢を崩してはいけない、と。その辺りが、リヒャルト君曰くの『なかよしさん』に見せないようにする理由。


 言葉を変えると、身を任せている姿が『親密そうに見える』、ということだ。フィールズ嬢とレザンには、交流が殆ど無いにもかかわらず、だ。


 たった一度踊っただけの相手と、『親密そうに見える』というのは確かに、誰かに利用されたりするかもしれない。貴族当主が(くみ)し易そう、簡単に操れる、そんな風な印象を持たれることは、絶対によくない。


「大会に出られるような腕になりなさい、とまでは言いません。けれど、殿方へ身を預け過ぎないようにならなくてはいけません。いいですか? 『自分に身を任せて踊ればいい』、などと言う殿方を信用してはいけません。振り回されてはいけません。主導権を渡してはいけません。付け入る隙を見せてはいけないのです」


 ケイトさんがいつでもキリっとして凛とした態度を崩さないでいるのは、セルビア伯爵家を背負う為に、そういう教育を受けて来たから。そうやって自分を、セルビア伯爵家を守って来たから。


「ルリアなら、きっと大丈夫ですわっ」


 ふふんと胸を張って断言するフィールズ嬢。


「え? レイラ姉様?」

「ルリアはとっても賢い子だもの。エリーにできて、ルリアにできないことなんかないわ。レイラ姉様が保証する」


 驚きに目を丸くするルリア嬢に、フィールズ嬢はにっこりと笑う。


「それに、もし万が一、ルリア一人では難しいことでも、エリーが……エリオットがルリアの隣にいれば安心よ。こう見えても、エリーってば結構頼りになるんだから。ね、エリー」

「ふぇ?」

「ふふっ……レイラ姉様には敵いませんね」

「当然じゃない。なんたってわたくしは、ルリアのお姉様ですからねっ」


 クスクスと笑い合う姉妹。


「ああ、エリー。ルリアのことを泣かせたら、わたくしがあなたを泣かせるから覚悟なさい」

「ひぅっ!?」


 そして、打って変わった低い声とギロリと鋭い視線に睨まれ、息を飲むエリオット。


「ま、エリーにルリアを泣かせる度胸があるとはこれっぽっちも思ってないけど……でも、約束だからね? 絶対に忘れないでね、エリオット」

「ふぁいっ!?」


 フィールズ嬢は、妹思いのいいお姉さんのようだ。


 まぁ、ルリア嬢の言う通り……ちょっと残念さは漂っていて、少し視野が狭い感じで、エリオットとの力関係も透けて見えるけど。


 でも……なんだかんだフィールズ嬢もエリオットのことを認めているみたいだし。


 と、いい感じの雰囲気ではあるけど・・・ケイトさんが言ったのは、男に頼るなってことの筈なんだけどな?


 まぁ、対外的にはルリア嬢がフィールズ公爵家当主候補という話は出ていないから、もしかしたら予定通りにエリオットが公爵を継ぐのかもしれないけど。


 ああでも・・・やっぱり、エリオットが公爵というのは想像が付かないな? ルリア嬢が公爵になった方がいいと思う。


「では、以上のことを踏まえまして、ダンスレッスンを再開致しましょうか」


 読んでくださり、ありがとうございました。


 ルリアちゃんはレイラちゃんの自慢の妹。

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