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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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あ、ハウウェル先輩がちょっぴり本気で怒ってる。

「ぁ、その……はい。その節は、申し訳ありませんでした」


 笑顔で柔らかい口調なのに、なにやら滲んでいるセディーの黒さと怒りが、絶妙に伝わっている模様。フィールズ嬢の顔が白くなる。


 う~ん……やっぱり、セディーはフィールズ嬢に少し怒っていたらしい。でも、年下の女の子を威圧するのは、ちょっと大人げないと思う。


「まぁ、あのことはお互い水に流しましょう。いいよね? レザン」


 そう言いつつ、セディーを伺う。にこっと笑ってくれたので、わたしがいいのなら、セディーもそれでいいということなのだろう。


「うむ。俺も気にしていませんので」

「?? けんかですか?」


 少しピリ付いた雰囲気を感じたのか、きょとんとフィールズ嬢とわたし達とを見上げるリヒャルト君。


「いいえ、リヒャルト君。喧嘩ではありませんよ。前に、レイラ姉様がお兄様達にちょっと失礼なことをしてしまったので、それに対してのごめんなさいをしたのです。そして、お兄様達が許してくれたのですよ」

「そうですか。よかったですね、ルリアねえさまのおねえさま」

「はい」

「申し遅れました。わたくし、セディック・ハウウェル様の婚約者のケイト・セルビアです。そしてこちらがわたくしの弟のリヒャルト・セルビア。リヒャルトはルリア様と一緒に、貴族当主のいろはを学ばさせて頂いています」


 フィールズ嬢が頷くと、ケイトさんが口を開く。


「そうでしたか……その、いつもルリアがお世話になっています」


 ぺこりとお互いに弟妹がお世話になっていますという挨拶をする姉同士。


「では、挨拶も済みましたし、そろそろダンスレッスンを始めませんか?」


 にこりと促すルリア嬢。


「そうですね。では、基本のダンスを踊ってみようと思いますので、手を貸して頂けます?」


 と、セディーへ向けて手を差し出すケイトさん。


「あ、僕はピアノを弾きますので。お相手はネイトにお願いします」

「・・・あのね、セディー? セディーが運動苦手なのはわかるけど、せめて最初の一回は、セディーがケイトさんと踊るべきでしょうが?」


 じとっとセディーを睨む。


 (「あ、ハウウェル先輩) (がちょっぴり) (本気で) (怒ってる」)

 (「ふむ……) (ハウウェルでも) (セディック様) (に怒る) (のだな」)


「セディーにいさまは、ケイトねえさまとおどるの、いやですか?」


 悲しそうな顔でセディーを見上げるリヒャルト君。


「ぅ……いえ、リヒャルト君。それは違います。その、僕はあまり踊るのが得意ではないので、いいお手本にはならないと思って……すみません、ケイトさん」

「ふふっ、およそそんなところだろうと思っていました。在学時代、セディック様が踊っているところは見たことがありませんでしたし。ですが、大丈夫ですよ? 今日は完璧に踊らなくても」

「え? いいんですか?」

「ええ。今日は、楽しく踊ることが課題です。楽しくないとレッスンが続かないでしょう? レイラ様、ピアノをお願いしても?」

「はい、任せてください」

「曲は、そうですね。少しテンポの速いワルツで」


 クスクスと笑いながらセディーの手を取り、少し離れた位置でホールドの体勢へ。


 タン、と軽快に始まった曲で最初のステップが踏み出される。


「!」

「ふふっ」


 驚きの表情を浮かべるセディー。そして、くるくると滑らかに回る二人を見て……


「? セディックお兄様、ちゃんと踊れてますよ?」

「ですよね? ルリアねえさま」


 きょとんと首を傾げる小さな二人。


 まぁ、セディーとケイトさんの二人は、一見綺麗に踊れているように見える。けど、あれは完璧にケイトさんのリードだ。多分、ケイトさんが相手じゃなかったら、セディーのダンスはもう少し残念な感じに見えることだろう。それに・・・


「っ……す、すみません」

「ふふっ、そろそろ交代しましょうか?」

「はい」


 セディーのステップが若干怪しくなって来た辺りで足を止めるケイトさん。


「でも、そうですね。せめて二回分は踊れる程の体力を付けてもらわないと困ります」

「・・・精進します」


 二回以上同じ人と踊るのは、その相手が婚約者か夫婦などのパートナーだと周囲へ知らしめる行為だ。つまり、婚約者なのだからちゃんと踊れるようにしておきなさいというお達し。


「では、レイラ様と交代してください」

「はい」


 しょんぼりと……というよりは、疲れたような足取りでピアノへ向かうセディー。


 まぁ、ダンスって美しく踊ろうと思ったら結構体力消耗するからなぁ。


 アップテンポなワルツは、スタンダードやスローテンポのワルツに比べると、あまり下手には見えないダンス。お兄様と慕ってくれる子達の前で下手に見えないようにと、ケイトさんに気を遣われています。


 でも、もう少し体力付けようか、セディー。


「レイラ様は、どのダンスがお好きでしょうか?」

「そうですね……クイックステップは好きですわ」

「フィールズ様、クロフト様、ネイサン様は踊れますでしょうか?」

「あ、僕クイックステップ得意ですっ」

「では、クイックステップとスタンダードなワルツはフィールズ様とレイラ様にお手本をお願いしましょうか。宜しいでしょうか? ルリアさん」


 エリオットの婚約者であるルリア嬢への確認。


「はい。エル兄様、レイラ姉様をお願いしますね?」

「いいの? エリー」

「うん。一緒に踊るのは久し振りだね、レイラちゃん」

「そうね。足踏まないでよねっ」

「レイラちゃんの方こそね」


 ルリア嬢の快諾とフィールズ嬢の確認に頷くエリオット。


「では、ネイサン様にはスローワルツのお相手をお願いしても?」

「はい。スローワルツは少し難しいですが、見苦しくない程度には踊れますので」

「クロフト様は、タンゴは踊れますか?」

「うむ。ダンスは然程(さほど)得意ではありませんが、一通りは踊れます」

「では、タンゴをわたしとお願いします」

「はい」


 と、誰がどのダンスを踊るのかとペアが決まった。


 読んでくださり、ありがとうございました。


 セディーはもやしっ子。(笑)


 ちなみに、書いてる奴は社交ダンスなんて踊ったことない全くの素人なので、どこかおかしかったりするかもです。

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