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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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201/429

あの頃に比べると、結構丸くなったかも。

 明けましておめでとうございます。

「ぁ~、ねーちゃん達が原因かー……」

「はい。あそこ、学校側に申請すれば家族の面会は認められているんですけど、若い女性の面会はなるべく控えるようにって保護者に通達があるんですよ」

「うむ。万が一の事態があってはいけないからな」

「へぇ、それは知らなかったな」

「え? 知らなかったんですか?」

「うん。まぁ……」


 わたしをあそこに入れた両親とは、まともに話したこと無いし。


「な、な、ハウウェルとはどうやって知り合ったん? さっき、弟子だとか言ってなかったか?」

「弟子じゃないんだってば」

「それはですね、騎士学校に入学当初、僕が同級生に女の子は出て行けって言われていじめられてて……コイツらの顔と名前を憶えて、お父様とお祖父様に報告してやるって思ってたときに」


 (「……あれ?)  (フィールズ) (ってなんか、) (結構腹黒い) (?」)


 話し始めたエリオットの言葉に、ちょっと引いた顔で零れる戸惑ったような呟き。


 だから、さっきから言ってるのに。エリオットは、公爵令孫で、伯爵令息。そして嫡男で、育ちが(・・・)いい(・・)って。言動は落ち着きが無くてすぐ泣くし、きゃんきゃんとウルサいけど、歴とした当主としての教育を受けている貴族子息だ。


 聞いての通り、権力でぶん殴ることを躊躇(ためら)う奴じゃない。こういうところは、ちょっとだけセディーに似ている。まぁ、エリオットは全然、これっぽっちもセディーの足元に及ばないけど。


 だから、言動の残念さなどでエリオットを舐めて掛かると、かなり痛い目を見ることになる。公爵令孫に手を出して、『知らなかった』では済まされない。


「ハウウェル先輩が通り掛かって、目障りだから失せろ、っていじめっ子達に言ってくれて」

「あれ? ハウウェルもなんか印象違くね?」

「ぁ~、あの頃はわたし、尖ってたからなぁ……」


 うん。あの頃は本当に、わたしを舐める奴は潰す! って感じで、今よりも随分キレっ早かったと思う。以前は今みたいに口だけじゃなくて、普通に手も足も出してたし、ぶん投げたりもよくしていた。


 もうマジで絡んで来る輩が多過ぎて……一年から二年に掛けては、心がめっちゃ荒んでいた時期だ。


 片っ端から売られた喧嘩を買って行って、馬鹿共をボコってボコって……そうやって何度も実力を示したからか、二年の途中からは、段々と馬鹿共に絡まれることも減ったんだよね。


 わたし・・・あの頃に比べると、結構丸くなったかも。手は、向こうの方から出して来たカツアゲ先輩共のときにしか出してないし。


 この学園の生徒は品行方正な人が多くて、絡んで来る人も少なくて、騎士学校に比べると楽だ。


「それで、僕に絡んでいた連中がハウウェル先輩にまで絡み始めて、そしたらハウウェル先輩が奴らを腹パン一発で沈めて黙らせて、舐められたくなかったら実力を示した方がいいよ、って僕に言ったんです。僕がぽかんとしてたら、お礼を言う前にどこか行っちゃって……もう、ホンっトすっごくかっこよかったんですよ!」

「そんなことあったっけ?」


 正直、騎士学校時代は絡まれ捲ったから、かなり印象に残っている輩以外はあまり記憶に無い。


「あったんですよ! もうっ」


 不満げに口を尖らせるエリオット。


「……ハウウェルは、喧嘩っ早いと思っていた今よりも、更に血の気が多かったのか」

「うむ。この学園では、絡んで来る輩が大分少ないからか、ハウウェルはあの頃の荒んだ雰囲気をしていないな。穏やかな顔付きになったと思うぞ」

「え? マジで? 売られた喧嘩を買い捲って、副部長……じゃなくて、部長に売られた喧嘩も代わりに買って、その相手をイイ笑顔でことごとく叩き潰してるハウウェルが? これで穏やかになっただとっ!?」

「なにそれ? その言い方だと、なんだかわたしが危険人物みたいじゃないか」

「わー! さすがハウウェル先輩ですねっ!!」


 テッドの言葉に、きらきらとした目をわたしへ向けるエリオット。なにがさすがなんだ?


「は? ハウウェルって、普通に取り扱い注意な奴じゃん、レザンに散々言われてんのに。なに言ってんの今更?」

「え?」

「……自覚が無いのか」


 前(一番荒んでいた頃)よりも穏やかになったと言われただけで、こんなにも驚かれるとは・・・


 解せない。


「この学園でのハウウェル先輩の活躍、知りたいです! 教えてください!」

「お、そうか。それじゃあ話してやるかなー」

「別に活躍なんかしてないから」

「……あれが活躍でないワケがないだろ」

「だよなー? クソ迷惑な先輩をレザンと二人で退学に追い込んだりとかさ」

「も、もっと詳しくお願いします!」

「別に話さなくても……ふゎ……」


 お腹が一杯になったからか、欠伸が・・・


「眠いなら、もう戻った方がいいのではないか? ハウウェル」

「ハウウェルは今日お疲れだもんなー」

「……ゆっくり休め」

「ぁ~、うん。そうする」

「おやすみなさい、ハウウェル先輩」

「ん、おやすみ」

「はいっ♪」


 ぽんぽんとエリオットの頭を撫でて部屋に戻ると・・・


 一気に眠気が押し寄せて、ベッドに沈み込んだ。


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 読んでくださり、ありがとうございました。


 ネイサンはエリオットにちょっと厳しいですが、偶に無意識で優しくしてます。


 スピカの影響で年下の子の面倒見が良くなっているので、自覚無しに世話を焼いてますね。ハンカチ渡したりとか、庇ってあげたりなど。


 でも、無意識でやってることなので、なんで自分がエリオットに懐かれるのかはわかっていなかったり。(笑)




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