アホの子じゃ、なかったのかっ……
「あ、ハウウェル先輩あとで夕ごはん一緒に食べましょうね!」
にこにこと手を振るエリオットにひらりと手を振って部屋へ戻る。それから、汗を流しがてらストレッチをして・・・脇腹には青あざができていた。道理で痛いワケだよ。エリオットのアホめ、後で絶対文句言ってやる。
とりあえず、脇腹と背中には湿布貼っとこ。
そして、待ちに待ったごはんだっ!!
食堂へ向かうと、
「あ、ハウウェル先輩こっちですこっち!」
レザン、テッド、リールといういつもの面子に囲まれて手を振るエリオット。
「おおーっ!! なんか、めっちゃ美人度が増してんなハウウェル!」
「は?」
「髪下ろしてっと、いつもよりぐっと美女っぽさが増してるぜ」
ニヤリと親指を立てるテッド。
「ぁ~……殴るよ?」
髪を乾かすまで我慢できなくて、濡れたままで来たのがいけなかったらしい。
「いやん、そんなに怒っちゃ、イ・ヤ♡」
ふざけた返しにイラッとしたところに、
「それで、脇腹と背中の具合はどうだ?」
レザンの質問。
「ああ、エリオット?」
「はい、なんですか? ハウウェル先輩」
「お前のせいでバッチリ青あざになってるから」
「ご、ごめんなさいハウウェル先輩っ」
「で、お詫びになにしてくれるのかな?」
にこりと笑顔で催促。
「あの、僕も蹴られた胸がちょっと痛かったり」
「わたしは、脇腹と背中が痛いんだけどな?」
エリオットの言葉を遮り、笑顔で見詰め続ける。
「……な、なにか食べたいものがあったら言ってくださいっ! お詫びにご馳走しますっ」
「それじゃあ遠慮なく」
と、デザートをあれこれ注文して食べた。そして、レザンとテッドにも進呈。ついでにリールにも分ける。人の奢りの食べ物って、美味しいよねぇ。
「……あれだけ運動した後で、よくそんなに食えるな」
ぼそりと呟く声に顔を上げると、バッと思い切り顔を逸らされた。なにやら、また人見知りモードになったらしい。まぁ、いいけど。
「まぁ、食べないと保たないから。というか、むしろ食欲無いからって食べない方が具合悪くなるし」
「そういうもん?」
「うむ」
ふと会話が途切れて、
「……あの。すっごく今更なんですけど」
意を決したように口を開き、
「おう、なんだフィールズ」
「先輩達のお名前を聞いてもいいですか?」
と、テッドとリールへ視線を向けるエリオット。あ、リールが目ぇ逸らした。わたしの顔同様、エリオットの顔を直視するのが苦手のようだ。
「ぁ~、そう言やまだ自己紹介してなかったっけ?」
「はい、まだ聞いてません」
「俺はテッド・メルン。で、そっちの優等生なメガネがリール・グレイ。俺らは、ハウウェルとレザンの同級生で二年な」
「メルン先輩とグレイ先輩ですね」
「おう、ちなみ俺らは普通クラスだけど、リールは上位クラスな」
「ええっ? ハウウェル先輩もレザン先輩も上位クラスじゃないんですかっ!? ここのテスト、そんなに難しいんですか?」
「うむ。俺は、そんなに頭が良くないからな。ギリギリで普通クラスだ」
「ま、まさかハウウェル先輩も……?」
「や、わたしは別にギリギリじゃないから」
うん。一応、普通クラスの中では三分の一よりは上だし。成績は悪くない。
「そう言うフィールズは?」
「あ、はい。僕は上位クラスです。入学試験、結構簡単だったので」
「はあっ!? マジでっ!?」
しれっと、学力の高いこの学園の入学試験を簡単だと言い切ったエリオットに、大声を上げるテッド。
「嘘、だろ……アホの子じゃ、なかったのかっ……」
零れるのは、ショックを受けたような呟き。
「え? 僕、アホだと思われていたんですか? 失礼ですよ? ね、ハウウェル先輩」
「まぁ、ほら? 言動のアホさと学力が比例しないこともあるからね。それにコイツ、本当に育ちはいいんだよ。一応こんなんでも嫡男だし、家で質のいい教育を受けて来た結果じゃない?」
「ですよねっ。ちなみにですが、一体僕のどこを見てアホだと思ったんです?」
「ぁ~、まさに今?」
「??」
残念なものを見るようなテッドの視線に、きょとんと首を傾げるエリオット。相変わらず、わかっていない感じだ。
「ま、それはおいといて。めっちゃ気になることがあるんだが、聞いてもいいか? フィールズ」
「あ、はい。なんですか?」
「なんでそんな育ちのいい坊ちゃんが、話聞くだけでもやべぇのがわかる騎士学校通ってたん?」
「そ、それはっ・・・」
「それは?」
「その……姉様達が、絶対に入れない場所だからです。寮制で、なるべく遠くの学校を探してたら、女性の全くいない学校の話を聞いて、すぐ入学を決めました。お父様には最初、かなり渋られたんですけど、姉様達におもちゃ扱いされるのが耐えられないって直談判したら、わかってくれました」
「ぁ~、ねーちゃん達が原因かー……」
読んでくださり、ありがとうございました。




