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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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ネイトにいさま!

 ネイサン視点に戻ります。

 セルビア嬢からセディーへの伝言を頼まれて・・・


 あれよあれよという間に、セディーとセルビア嬢との婚約の話が出て――――


 お祖父様とおばあ様は喜んだそうです。


 それから、セルビア嬢のことをあれこれ聞かれて、どういう人なのかを話して・・・最終的にはセディーが、


「母とは正反対の女性です」


 と言ったとかで、


「そういうお嬢さんなら安心ね」


 とおばあ様が満面の笑顔になったとのことで、お祖父様がセルビア嬢への婚約申し込みをセディーに許可したそうです。


 確かに。セルビア嬢は見る限りに母とは正反対ですねぇ。キツいことや嫌なことを言われても、取り乱したりしない。いい意味で、泣いたりしない。冷静な態度を崩さない、凛とした女性です。


 まぁ、リヒャルト君のことが絡まなければ、と言ったところですけど。リヒャルト君のことを語るセルビア嬢は、パッションが溢れていましたからねぇ・・・


 そういう意味で言えば、セディーとセルビア嬢は似た者同士かもしれない。


 なんだかあまり実感が湧かないけど、この縁談がまとまれば、セルビア嬢がわたしの義理のお姉さんになるらしい。


 今まで縁談がまとまらず、浮いた話どころか、女性の話をしているのも見たことが無かった。そんなセディーの口から、セルビア嬢に婚約を申し込みに行くとの言葉。


 そんなセディーがセルビア嬢を選んだというのなら、是非とも応援したいと思う!


 個人的にも、セルビア嬢は(しっか)りしていて好ましい方だと思いますし。セディーのお嫁さんになる方として、申し分のない方です。


 ということで、わたしは・・・


「ネイトにいさま! こっちです、はやくはやく!」


 リヒャルト君に手を引かれて、セルビア家の庭を案内されています。


 こうして小さい子に手を引っ張られていると、なんだか懐かしい気分になる。クロシェン家にいた頃、よくこうしてスピカやロイに引っ張られてあちこち行ったことを思い出すなぁ。


 けど、『にいさま』なんて呼ばれると、ちょっとくすぐったいような気がする。


「転ばないよう気を付けてくださいね」

「だいじょうぶです! あっちのきに、とりさんのすがあるんですよ」


 セルビア嬢は、セディー同様弟さんがとっても大好きで、リヒャルト君ラブな人。

 わたしがリヒャルト君と仲良くできるかどうかに、セディーとの婚約が成立するかが掛かっているというのも、あながち冗談ではないと思う。だから、是非ともリヒャルト君と仲良くなっておきたい。


「それは楽しみですね」

「はいっ、さいきん。ぴぃぴぃって、なきごえがするんです!」

「巣から鳴き声……もしかしたら、その巣には雛鳥がいるのかもしれませんね」

「? ひなどりって、なんですか?」


 きょとんと首を傾げてわたしを見上げるリヒャルト君。うん、可愛い。


「雛というのは、鳥の赤ちゃんのことですね」

「あかちゃんの、とりさん? みたいです! はやくいきましょう!」


 と、ぐいぐい引っ張られてやって来た木の前。


 リヒャルト君の言った通り、ピィピィと高い鳴き声がしている。何羽かいるようだ。


「あっち、あっちにとりさんのすがあるんですよ!」


 小さな指が示した枝に、鳥の巣が掛かっているのが見える。


「ネイトにいさま! あかちゃんのとりさんみえますかっ?」

「う~ん……残念ながら、見えませんね」


 レザンくらい高ければ見えるかもしれないけど、わたしはあんまり背が高い方じゃないからなぁ。一応、わたしは別にちびというワケではない。

 レザンと一緒にいるから小さいと言われることも、なくはない。けど、それは奴の身長が高いだけで、わたしが殊更(ことさら)低いというワケじゃない。それに、わたしは成長期。身長は、これからも伸びる筈だ!


「そうですか……にわしのじいにだっこしてもらっても、とりさんみえないんです。はしごはあぶないから、だめっていわれました」


 リヒャルト君がしょんぼりした顔になる。


 鳥の巣が掛かっているのは、大体二メートルくらいの高さがあるかな?


 幹に手を付いて木を見上げていると、


「あ、きにのぼったら、みえますかっ?」


 しょんぼり顔から一転、きらきらした期待するような顔が見上げて来る。


「う~ん……」


 この木は広葉樹で、(しっか)りした枝が多く、登ろうと思えば簡単に登れるだろう。でも、ここは余所のお宅。しかも、雛鳥を見たいのは、わたしじゃなくてリヒャルト君だ。


 わたしが木登りして、ピィピィ鳴いている雛を見たって、意味がない。リヒャルト君を抱えて登るのも、危ないので却下。


 かと言って、このきらきらと期待に満ちた顔を曇らせるのも忍びない。


 後ろで簡単に(くく)った髪を解いて、三つ編みにして結び直し、左側に流す。


「肩車をすれば、見えるかもしれませんね」

「かたぐるま?」

「はい。わたしの肩に乗りますか?」

「いいんですか?」


 目はきらきらとさせて、けれど遠慮がちに尋ねるリヒャルト君。


「ええ、いいですよ。でも、約束してください」


 しゃがみ込んで、リヒャルト君と視線を合わせる。


「おやくそく、ですか?」


 読んでくださり、ありがとうございました。


 セディーとケイトさんが話している最中のことです。二人でほのぼの。

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