なにを言い出すかと思えば……アホか。
「お祖父様にお話があるんですけど」
と、切り出した。
「え~? お祖父様にお話なの?」
不満そうに言うセディーに、
「ふっ、ネイトはわたしに用があって帰って来たのだ。どうだ、羨ましかろう?」
ニヤリと勝ち誇った顔で笑うお祖父様。
大人げないですね……
「っ、お祖父様……ネイト、僕には話せない話なの?」
一瞬悔しそうな顔をして、わたしの方に顔を向けたときには悲しげな顔をするセディー。
「話せないっていうか……」
セディーにも、話した方がいいのか・・・
一応、わたしの今一番の懸念が、両親なんだよね。わたし、まだ未成年だし。勝手に軍の入隊許可証を書かれでもしたら堪らない。
両親なら、そういうことをやりかねないのがなんとも言えないよねぇ。わたしを勝手に騎士学校に入れたという前科もあることですし。
「実は・・・軍の諜報部にスカウトされちゃって」
「は? ネイト? ・・・ちょっとそれどういうことっ!?」
ガっとわたしの両肩を掴んで詰め寄るセディー。
「落ち着きなさい、セディー」
お祖父様の低い声。
「それで、どういうことだ? ネイト」
「まぁ、なんというか・・・わたしの顔と、経歴に目を付けられたみたいです」
多分、顔だけならアルレ嬢に目を付けられることもなかったと思う。
「騎士学校か・・・」
お祖父様の顔が、嫌そうに顰められました。
「・・・お祖父様」
低い声でセディーがお祖父様へ顔を向け、
「今すぐ僕に爵位を譲ってくれませんか?」
にっこりと微笑んで言った。
「軍の方に、ちょっと抗議をしに行こうと思いますので」
「は? ちょっ、なに言ってるのセディーっ!?」
「? ほら、爵位があった方が抗議が通り易いと思うから」
「やめてよねっ!?」
「全く、なにを言い出すかと思えば……アホか。少しは落ち着きなさい、セディー。ちなみに、爵位はまだやらん。ネイトが嫌だと言えば、それで済む話だろう」
溜め息を吐いたお祖父様は、残念な子を見るような視線をセディーに向ける。
まぁ、うん・・・ちょっと錯乱気味だよね。
「っ!? ね、ネイトはどうしたいのっ!?」
「ああ、わたしは」
「諜報活動なんてそんな危ないことしないよねっ!?」
泣きそうな顔でわたしを見詰めるセディー。
「もう、落ち着きなさいってさっきから言われてるでしょ。あなたがそんな風だから、ネイトが話し難いのよ」
ぺしっと、おばあ様が扇子でセディーの頭を軽く叩いた。
「! おばあ様」
「それで、ネイトはどうしたいのかしら?」
不満そうなセディーには構わず、わたしへと話を促すおばあ様。
「わたしも、軍に入るつもりは無いです」
「ホントっ!?」
「うん」
頷くと、凄くほっとした顔をされた。
「それで、一体どういった経緯で諜報部にスカウトをされることになったのだ?」
「経緯、ですか・・・」
高等部三年の卒業が近くなって、情報収集やら難アリ貴族子女達を唆したりする人員の後釜を探していたアルレ嬢の目に留まったから……なんて、正直には言えないよね。
ある程度ぼかせば大丈夫かな?
「ざっくり言うと、学生の中に軍属の方がいて、その方が今年で卒業とのことで、後釜としてスカウトされてしまったという感じですね」
「ふむ・・・成る程」
「そっか。それじゃあ、ネイト。転校しよっか」
にっこりと微笑みながら言うセディー。
「うん。そうしよう。そしたら、そんな危険人物と接触することもないでしょ」
「へ? セディー? それはちょっと話が飛躍し過ぎじゃない?」
「もう、セディーってば全然落ち着いてないわねぇ。それに、折角入ったのに半年ちょっとで行くのをやめるなんて勿体無いわ。第一、ネイトがどうしたいかを聞いてないじゃない」
「そう、ですね。わかりました。それじゃあ、休学にしようか? その、ネイトをスカウトしたっていう人は、もう今年度で卒業するんでしょ? それで、その人がいなくなった来年度から、また通えばいいんじゃない?」
「いや、なに言ってんのセディー? わたしにもう一度一年生をしろと?」
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