なんでそういうことわたしに聞かせるんですかっ!?
「そこまでにして頂けますか」
そこへ、低い声が響いた。
「げっ、クロフトの三男……」
「ハウウェルを放して頂けませんか」
ちらりとレザンを見たアルレ嬢は、
「ネイサン・ハウウェル様! 諜報員見習いとして、わたくしの後釜になりませんか? この学園の貴族子女達の情報を集めましょう♪」
わたしの腕を放さず、そしてレザンにも構わずに一息に言い切った。
「お断りしますっ!?」
すかさず断る。
「え~、クロフトの三男様とつるんでいるんだから、ハウウェル様も軍人になるつもりじゃないんですか~? 楽しいですよ~? 諜報活動♪」
「絶っっ対に嫌ですっ!!!!」
「そんな~、ハウウェル様は絶対諜報部向いてますって~。ほら~? そんな綺麗なお顔しているのに大して女性に興味も無さそうで、可愛い女の子にもドライでなかなか辛辣ですし、ハニートラップに引っ掛かりそうもないですし、徒歩での逃げ足もそこそこ速いし、馬にも乗れて、腕っ節もそんなに弱くないですし、一対多数戦が得意で、帰国子女。更にオマケに、長男じゃないと来た! 少~し詰めが甘くて短気っぽいのが玉に瑕ですけど、ハウウェル様はすっごくすっごく条件がいいんですよ~? この学園に通っている貴族子女達の情報をちょ~っと集めて、ちょちょいとレポートにして報告するだけで、お金がたくさん貰えるんですよ~? ほら~、簡単に稼げる楽なお仕事ですよ~」
諜報部所属(見習いという話ですが)というだけあって、わたしのことが割と調べられてるっ!?
「さっきから嫌だと言っています! 大体、諜報活動が楽で楽しいワケないじゃないですか! そうやって甘言で騙して、軍の暗部に人を引き摺り込もうとするのはやめてくださいっ!?!?」
「うむ。本人にやる気が無いと言っているのに、無理矢理勧誘するのは如何なものです」
「チッ……駄目か」
口を挟んだレザンに舌打ちをし、未練たっぷりという顔でわたしの腕を渋々放したアルレ嬢が、
「この学園って、優秀な成績で卒業したら、国の中枢に行くような人が出るじゃないですか~? それでわたくし、難の有りそうな人に声を掛けて、学生のうちに問題を起こしてもらう為にちょ~っと唆してるんですよ~。成人してからお家騒動や、内乱にまで発展しちゃったら大変ですからね~? ハニートラップの練習込みで」
にこにこと言い募る。
「なっ!? なんでそういうことわたしに聞かせるんですかっ!? あなた、わざとですかっ! わざとですよねっ!?」
しかも、任務的な内容がエグいっ!? 将来的な火種の芽を摘む為に、少々難有りの貴族子女達の未来を潰すとは・・・
まぁ、アルレ嬢は唆していると言いましたが、きっと出すのは口だけなんでしょうね。諜報部関係なら、証拠が残るようなことはしないと思いますし・・・
アルレ嬢の口車に簡単に乗って問題を起こし、未来を潰されたとして、それは問題を起こすような人の自業自得だとも言えますけど。
でも、やり口は相当えげつない。
しかもこれ、『内乱の憂慮』を仄めかしてますけど・・・かなり高い視点からの見方ですよね?
まぁ、つつくと雁字搦めに重りを付けられて、泥沼に引き摺り込まれて、普通の生活が送れなくなりそうなので、そんな質問は絶対にしませんけど。
アルレ嬢の任務は情報収集よりも、こっちの方がメインっぽいですね。この人、ちょいちょい性格の悪さが滲み出ているんですが・・・
「え~、ハウウェル様が興味を持ってくれると嬉しいな~? って思いまして~。そのお顔なら、男も女も簡単に誑かせますって~」
「・・・だからっ、さっきから嫌だっていってんだろうがっ!?」
「あ、怒っちゃいました~?」
と、わたしを窺うように見上げてスッと腕を放すアルレ嬢。
わざとか、わざとなんだろうなきっと!
「ハウウェル、落ち着け」
と、レザンの宥める声。
「う~ん、やっぱり短気なところは少しネックなんですよね~。短気は損気ですよ~?」
眉根を寄せるアルレ嬢。
「っ……だったら、他の方を当たったら如何ですか?」
思わず、刺のある口調になってしまう。
「それは~、勿論わたくしとしましても、他の候補の方も何人かは見繕っていますよ~? けど~、どの方もハウウェル様程にはパッとしないんですよね~」
「あなたの事情は兎も角、無理矢理の勧誘はおやめください。本人が嫌がっています」
「クロフトの三男様に言われてしまいましたら、仕方ありませんね~。では、ハウウェル様。気が変わりましたら、いつでも仰ってくださいね~。期待してお待ちしていますので~。では失礼しま~す」
と、アルレ嬢は手を振って去って行った。
「大丈夫か? ハウウェル」
読んでくださり、ありがとうございました。
キアラ・アルレは性格悪いです。(笑)




