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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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レザンってば、すっげーバカなんだぜー。


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


「・・・?」


 ぼんやりと目を覚ますと、自分の部屋じゃない・・・と一瞬思って、寮の部屋だったと思い出す。


 ちょっと早目に学園寮に入ったけど、後期の授業が開始されるのは明後日から。


 もう少し寝ていたいなぁ……とも思うけど、休みの間に狂った生活リズムを、学園のリズムに合わせる為にも、そろそろ起きた方がいいとも思う。


「・・・ふゎ~」


 眠い目を擦り、欠伸(あくび)をしながら身繕いをして食堂に向かう。と、なにやらデカくて目付きの悪い、薄汚れた感じの奴が、一心不乱に肉を食べていた。朝っぱらから、山盛りの肉を。


 見てるだけでお腹一杯になりそう。


「よー、ハウウェル。聞けよ、レザンってば、すっげーバカなんだぜー」


 ハハハと笑いながら声を掛けて来たのはテッド。


「うん? ハウウェルか、久し振りだな」

「……ん。おはよ」

「おー、相変わらず寝起き悪いのなー。ま、いいけどさ。そんなことより、コイツマジでバカだぜ? 家から学校まで、歩いて来たんだってよ。しかも、野宿しながらとかやべぇよなー」

「うむ。野営の訓練がてらにな」

「……道理で。なんか薄汚れているワケだ」

「え?? なにハウウェル、リアクションそんだけ? それとも、まだ寝ぼけてんの?」


 ぱちぱちと驚いたように瞬くテッド。


「起きてるよ。まぁ、この辺りは人里だからね。それなりに楽だったんじゃない?」


 ど田舎の、獣がうろついているような山中でもないし、道もちゃんと綺麗に舗装されている。すぐそこに人家があって、人がいる。食べ物の調達も楽だろう。


「うむ。色々と楽ではあったが、狩りには向かんな。本来なら、食料調達までしたかったのだが、さすがに肉の採れる獲物がいないからな。ここ三日程は、釣りや野草で我慢した」

「ぁ~、それはまた、ご愁傷様」


 それで、食べられなかった分、朝っぱらから肉を山盛りでがっついている、と。


「やだっ、ハウウェルが普通にレザンとサバイバルな話してるっ!?」

「? 野営訓練は、わたしも受けたよ?」

「相変わらず、お綺麗な顔に似合わないことを・・・ってっ! なにすんだよ! 暴力反対ー」


 なんかムカついたので、テッドの頭を軽くぺしっと叩いておく。


「ふゎ……それで、野営って言ってたけど、教科書とか課題は持って来たの? あれ、結構重かったと思うけど」


 抗議を欠伸で黙殺してそう言った瞬間、


「っ!?」


 カッとレザンの目が開かれる。


「・・・まさかとは思うけど、忘れて来たの?」


 信じられないと思いつつ聞いたら、


「・・・う、うむ」


 だらだらと汗を垂らして頷くレザン。


「っぷはははっ!? ばっ、バカがいる~~っ!?!?」


 ぎゃははとレザンを指差して爆笑するテッド。


「授業が始まるのは、明後日からだし。今から手紙を出しても間に合わないと思う。荷物が後で届くならいいけど、そうじゃないなら、どうするの?」

「・・・とりあえず、食ってから考えよう!」


 あ、思考投げたなコイツ。


 それから、レザンが食事を終えるのを、わたしも朝食を食べながら待ち――――


「とりあえず、寮宛になにか荷物が届いてないか確認してみたら?」


 レザンが何日も掛けて移動していたなら、宅配便の方が先に寮に届いている可能性もある。


 うちなら、わたしが忘れ物をしたら届けてくれると思うし・・・セディーなら、学園まで直に届けてくれそうな気もする。


「今すぐとんぼ返りして、もし行き違いになってもあれだしさ?」

「ハハハっ……はぁ~、笑ったぁ……そうだな。行ってみようぜ!」

「うむ。わかった」


 と、寮のラウンジに移動。レザン・クロフト宛の荷物が来ていないか確認したところ・・・


「あったっ!?」


 なにやらずっしりと重い小包が届いていたようだ。


 レザンがそれを慌てて開封すると、教科書一式と出されていた課題が出て来た。


「おー、よかったなレザン」

「うむ。焦った・・・危うく、学園の馬を借りて、潰す勢いで往復しなくてはいけないかと思ったぞ」


 珍しく、レザンの安堵したような深い溜め息。


「んなことにしたら馬かわいそーじゃん」

「というか、授業再開で来てるのに、教科書一式を忘れることの方が信じられないよ」


 うんうんと頷き、レザンを見やるとそっと視線を逸らされた。一応、やらかしたという自覚はあるらしい。その手には、『おバカさん』とだけ書かれた手紙が握られている。まぁ、その通りだよねぇ。


「そう言やぁさ、宿題難しくなかったか? 俺、幾つか空白んとこあるんだけどさ。ハウウェルは宿題全部やったん?」

「ああ、うん。わたしは、わからないところはセディーが教えてくれたから大丈夫」

「おー、あのブラコンのおにーさんなー? 確か、すっげー頭いいんだっけ?」

「うん」

「よし、うらやましいから見せろ」

「は?」

「っつーワケで、今からリールも呼んで、みんなで宿題の答え合わせしようぜ!」


 と、リールの部屋に押し掛けて嫌がるリールを無理矢理引っ張り出し、課題の答え合わせをすることになった。


「……全く、なんで俺が……」


 迷惑そうにぶつぶつと呟くリールに、


「ふっ、答え合わせは休み明けの恒例だろ?」


 なぜか胸を張り、


「できない奴ができる奴に迷惑を掛けるのは!」


 堂々とアホなことをのたまった。


「・・・威張って、言うことかこのアホがっ!?」


 さすがにリールも怒ったのか、声を荒らげた。 


「まあまあ、そう怒んなって。一応、この答え合わせは、多分リールにも得はあるんだって」

「俺になんの得があると?」

「リールも、ハウウェルのおにーさんが頭良いのは知ってるよな? ライアン先輩に勉強教えてたっていうし、教え方のお手本にしたって本人も言ってただろ?」

「……ぁ、ああ」


 チラッとわたしへ視線を寄越し、顔を赤らめるリール。まだ慣れてないのか・・・


「その、ハウウェルのおにーさんが、ハウウェルに教えた宿題が見られる!」

「・・・」


 無言のリールに、


「聞いて驚け! ハウウェルのおにーさんはな、ノートをろくすっぽ取らなかったクセして、在学中は常に上位クラスで好成績をキープしていた、すっごい人なんだぞ!」


 ふふんと威張るテッド。なんで君が威張るのか・・・まぁ、セディーが誉められて、悪い気はしないんだけどね。


「……よし、いいだろう」

「・・・あのさ、わたしの許可は?」

「あ? オッケーすんだろ? ハウウェルはさ」

「君ってば、かなりちゃっかりしてるよね? 全く」

「おう、誉め言葉として受け取っておくぜ」


 にかっと笑うテッド。


 そして、課題の答え合わせをすることになった。


「いやー、助かるぜー」

「うむ。感謝する」

「……言っておくが、丸写しは駄目だからな?」

「わかってるわかってる」

「うむ」

「・・・わたし暇じゃん」

「ふっ、暇なら俺達に教えてくれてもいいんだぜ?」

「偉そうに言うな」


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 読んでくださり、ありがとうございました。


 宿題あるあるでした。(笑)

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