セルビア嬢はお綺麗だと思いますよ?
誤字直しました。ありがとうございました。
「先生ー、なんかあっちで男子生徒が騒いでるみたいですよー! 見に行った方がいいんじゃないですかー!」
「……あ、あっちです!」
と、教師を誘導するような声が響いた。
「クソっ……覚えていろよっ!?」
さすがに教職員の前でまで騒ぎ続ける度胸はないのか、顔を歪めた自己陶酔男が速足で離れて行った。
そして、
「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。ハウウェル様、クロフト様」
申し訳なさそうな顔をしてわたし達へと謝るセルビア嬢。
「いえ、お気になさらず」
「うむ。セルビア副部長が謝る必要はありません」
「ですが、身内の不始末なので……」
顔を曇らせるセルビア嬢に、
「いやー、どこの家にも迷惑な輩の一人や二人はいるもんですって。あんなのは全っ然、副部長のせいじゃありませんよ」
軽い声が掛けられる。
「メルンさん……先程の教員を呼ぶ声はメルンさんですよね? ありがとうございます。助かりました」
「うっし!」
セルビア嬢にお礼を言われたテッドは小さくガッツポーズをして、
「あんなの朝飯前のことなので、お気になさらず」
キリっとした顔を作って言った。まぁ、若干デレデレというか、にやけるのを堪えようとしているのが全く隠せてないんだけど。
「ふふっ」
セルビア嬢が笑ってくれたのでよしとしよう。
「な、リール! あ、俺呼んだのコイツなんで」
と、テッドは後ろに隠れようとしていたリールの腕を引っ張る。
「ぅ、ぁ……そ、そのっ、大丈夫、なのでしょうか? セルビア様、は……」
「ええ。わたしは大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます。グレイさん」
にこりと微笑むセルビア嬢に、顔を真っ赤にするリール。途中から見ないなと思ったら、どうやらテッドを呼びに行っていたらしい。
「では、わたしはこれで失礼しますね。今回の彼の愚行は、父へと確りと報告して、なんらかの処罰を求めます。それと、お詫びは後日になりますが、きちんとさせて頂きますね。ハウウェル様、エスコートをありがとうございました」
と、会場を去ろうとしたセルビア嬢に、
「ちょっと待ってください!」
待ったを掛けるテッド。
「あんな奴のせいで副部長が交流会途中で出てくなんて勿体無いですよ。あ、もちろん。なんか他に用事があるってんなら、ハウウェルなんか放っぽってそっちの方優先させてくれて構いませんけど。な、ハウウェル!」
うん。テッドってば、いいこと言うね。
「ええ。あんな馬鹿のせいで、セルビア嬢が遠慮することはありません。存分に楽しんでください。そして、セルビア嬢さえ宜しければ、もう少しわたし達と過ごして頂けませんか?」
「・・・ご迷惑、ではないでしょうか?」
「迷惑だなんてとんでもないです。その、ここだけの話なんですが……実は、女子生徒達のギラギラした視線がちょっと怖いので、セルビア嬢がいてくれると嬉しいです。……ダメ、でしょうか?」
あと、なぜか知らないけど・・・若干名だと思うけど、なにやら熱い眼差しが注がれている気がします。『ケイト様を見守る会』会員らしき男子生徒から、わたしがっ!?
女子生徒よりもそっちの方がなんかちょっと怖い気がするし、彼らはセルビア嬢の前に堂々と姿を現す気はなさそうなので、まだ一緒にいてくれると助かります!
「っ……わ、わかりました。では、もう少しだけご一緒しても宜しいでしょうか?」
「勿論です。ありがとうございます」
安堵しながらお礼を言うと、
口元を押さえ、パッと俯くセルビア嬢。なにか呟いていたような?
「? なにか言いましたか?」
「っ、いえ、なんでもありません」
「? そうですか? ところで、副部長」
「はい、なんでしょうか? メルンさん」
「お詫びとかそういうのは全く要らないんで、よければ俺と踊ってください!」
「え? あの、メルンさん?」
「副部長はクール系の美人さんなんで、一緒に踊れたら一生自慢できます!」
「ふふっ、お世辞でも嬉しいですね。ですが、エスコートのパートナーより先にダンスに誘うのはマナー違反ですよ? メルンさん」
クスリと笑うセルビア嬢。
「えー、お世辞じゃないですって! 副部長は絶対美人さんだって、な?」
お世辞だとさらっと流されたテッドが、わたし達へと同意を求める。
「ええ。セルビア嬢はお綺麗だと思いますよ?」
「?」
さっと頬を染めるセルビア嬢。もしかして、あまり誉められ慣れていないのでしょうか?
「うむ。セルビア副部長は美人です」
「……き、綺麗、です……」
「というワケで、ハウウェル。俺が副部長と踊りたいから、副部長と踊って来てくれ!」
と、ガシっとテッドに両肩を掴まれた。
「あのね、勝手に決めないの。こういうのは、セルビア嬢の承諾が先でしょ。全くもう・・・セルビア嬢。このアホの言葉は無視して構いませんので。ですが、もし宜しければ、わたしと踊って頂けますか?」
ぺいっとテッドの手を外し、セルビア嬢へと手を差し出す。まぁ、『先程の馬鹿のことは気にしてません』そして、『わたし達は悪くないので』というアピールにもなると思いますし。
あれだよね。気にしないで楽しむことが、ある意味あの馬鹿には意趣返しになると思う。
「ふふっ、皆さんは仲が良いのですね。ええ」
クスクスと笑いながら、差し出した手にセルビア嬢の手が重ねられる。
「では、ハウウェル様と踊った後で宜しければ、ご一緒して頂けますか? メルンさん」
「よっしゃー! もちろんです!」
「では、行きましょうか」
と、飲食コーナーからダンスフロアの方へ移動。
「……実はわたし、あまり殿方と踊ったことはないのですけど……」
「ああ、わたしもです。あまり同年代の女性と踊ったことはないですね。なので、リードが下手でもご容赦ください」
「わたしの方こそ、足を踏んでしまったらごめんなさいね?」
おばあ様とダンスの練習をするくらいですかねぇ。靴擦れに気付かない鈍感男はヒールで足を踏んでやりたくなると言われてからは、確りと女性に気を配ろうと肝に銘じています。
今日のセルビア嬢の靴は踵が高くはないし、歩き方にも特に異常は見られません。足を踏まれても大丈夫そうですね。と、若干緊張しながら一曲が終了。
「ありがとうございました。楽しかったです」
「いえ、こちらこそ」
「次は俺の番ですね!」
と、張り切っているテッドだけど・・・
「ところで、テッド」
「おう、なんだハウウェル」
「君、踊れるの?」
「ふっ、気合は十分だ!」
「気合って・・・セルビア嬢、フォローをお願いします」
まぁ、テッドがダメダメでも、きっとセルビア嬢がリードしてくれることでしょう。多分、踊っているようには見えると思う。セルビア嬢は、男性とあまり踊ったことがないと言っていましたが、お上手でしたし。
「ふふっ、ではメルンさん。楽しみましょうか?」
「はいっ!」
と、テッドと交代。
それから飲食コーナーに戻ると、レザンが乗馬クラブ所属の男子生徒の面々に囲まれていた。それで若干、クラブに所属していないリールの居心地が悪そうだった。
けど、そこにセルビア嬢とテッドが戻ると、乗馬クラブの女子生徒達もちらほらと集まって来て、和気藹々と過ごしているうちに交流会が終了。
明日から長期休暇です!
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読んでくださり、ありがとうございました。




