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虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い  作者: 月白ヤトヒコ


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俺、休暇には旅行に行くんだ。遠くに・・・


✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐


 学園に入学して、早数ヶ月が経とうとしている。


 そろそろ、長期休暇をどう過ごすか? という話題が生徒の口に上がるようになって来た。


 しかし、長期休暇の前にはどうしても避けては通れないモノがあり――――


「俺、休暇には旅行に行くんだ。遠くに・・・」

「なーんか、夢見てっとこ悪いけど、お前あんまり成績良くなかったんじゃね?」

「そーそー、追試や補講回避してから言えよ」

「現実を見せるな~っ!?」


 なんて会話が聞こえて来た。


 まぁ、あれだ。


 長期休暇の前に立ち塞がる大いなる試練――――


 期末テストが、迫って来ている!!


「で、ぶっちゃけどうよ?」


 深刻な顔で、テッドがなにかを訊いて来た。


「どう、とはなにがだ?」

「成績だよ! テストだよ! どんな感じなんだよ!」

「テスト、か・・・俺は、留年さえしなければ追試も補講も構わんっ!」


 ふっ、と遠くを見詰めてやたら男らしく言い切ったレザンに、


「……いや、それは構うだろ」


 ぼそりとつっこむリール。


「兄貴達のノートが使えない時点で俺は諦めている」

「無駄に潔いなっ!? つか、兄貴達のノートって? レザンのにーちゃん達、ここの卒業生? 授業内容が変わったりしてんの?」

「いや、兄貴達は以前通っていた騎士学校の卒業生だ。あちらの高等部に持ち上がっていれば、そのまま兄貴達のノートが使えたのだがな・・・」

「……レザンは、あまり成績が良くないのか?」

「うむ。俺はあまり頭が良くないからな」


 レザンが頷くと、


「・・・にーちゃんのノートと言えば、ハウウェルのおにーさんのノートなんてどうだっ!?」


 バッ! と縋るような必死な顔のテッドが、わたしに振り向いた。


「あ、それ無理」

「なぜだっ!? ハウウェルのおにーさんは上位クラス卒業生だろっ!! しかも去年のっ!? 授業内容やテスト範囲の大幅な変更でもあったというのかっ!? それとも貴様、自分一人でおにーさんのノートを独り占めする気かこの裏切者~!」


 無理という言葉に、わたし掴にみかからんばかりのテッド。


「落ち着け、テッド。ハウウェルには、そんなつもりはないんだ」


 それを重々しく窘めるレザン。


「じゃあどういうつもりなんだっ!?」


 う~ん、取り乱してるなぁ。テッドって、そんなに成績ギリギリなのかな?


「いや、中間テストのときもレザンに言ったんだけどさ? セディーは、わたしとは頭のできが違うんだよね」

「だったら尚更、その頭のできの良いおにーさんのノートをっ!?」

「うん。頭のできが違うから、そもそもノートを取る必要が無かったみたいなんだよね。一度授業を聞けば十分なんだって。セディーは」

「へ?」

「だから、セディーのノートは(ほとん)ど無い。無いものは使えない。よって、テストは自力で頑張るしかないワケ。OK? テッド」


 まぁ、わたしは一応、帰省したときにセディーに直に勉強を教わってるけど。


「マジでっ!?!?」

「そ。マジで」

「なんてこったっ!!」

「……いや、どれだけ他力本願なんだ?」


 ぼそりとしたツッコミに、ギギギと音がしそうな動作でリールの方へと顔を向けるテッド。


「! な、なんだ……」

「……ぁあ、そうだったな? なにも、卒業したハウウェルのおにーさんを頼るまでもなかったよな? そう、ここには上位クラスの野郎がいた。そうだよ。最初からリールのノートを見せてもらえばよかったんだ……」


 ぼそぼそと低い呟きが落ち、


「というワケで、ノートを見せてくれ」


 これまでの取り乱しようから一転、にっこりと胡散臭さ全開の笑顔をリールへ向ける。


「……な、なんだその胡散臭い笑顔は」

「失礼な。どこが胡散臭いんだ? これは、顧客の警戒を解く営業スマイルだぞ?」

「……むしろ、益々警戒するぞ」


 胡散臭い笑顔で(にじ)り寄るテッドに、険しい顔をするリール。


「ね、ちょっと疑問なんだけど、テッドってそんな慌てるくらい成績良くないの?」

「あ? ぁ~、一応普通くらいだと思うが? 多分」

「? 普通くらいの成績なら、そんな必死になって慌てる必要ないと思うんだけど? レザンなんか、ギリギリ普通クラスの点数だって言ってたし」

「うむ。俺は下位クラスに落ちても、留年や退学にさえならなければ特に構わんからな!」

「……そこは構えよ」


 胸を張るレザンに、ぼそりとしたツッコミ。


「や~、それは、あれだ。下位クラスに落ちたくねーっつうか・・・下位クラスに落ちるんだったら、別の学校でも構わないだろって親父に言われるからな。ほらここ、学費高めじゃん」

「……成る程」

「ふむ」


 そういう事情があるなら、あの取り乱しようもちょっとはわかるかな?

 テッドは下位クラスに落ちると、保護者に転校を仄めかされる、というワケか。


 この学園、学力が高めで卒業すると箔が付くって評判だし。男女交際に対してかなりお堅い校風も、保護者達にはかなり好評。

 まぁ、それなりの学費も取るらしいけど。


 そういうことなら・・・


「一応、勉強を教えてもらえる当てが、なくもないけど……」


 読んでくださり、ありがとうございました。

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